地球滅亡序曲
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地上ではある種の開き直りが蔓延していた。
どこへ逃げても宇宙空間から照射される核兵器並みの破壊力を持ったレーザー砲の脅威を躱すに十分な場所など一般庶民には無かったのだから仕方がないことであった。
大抵の人類が出来る選択肢と言えば、ただテレビやパソコンの前に座って次に入ってくる情報を待つことのみだった。
この間、各国政府は事の重大さを認識し、それまでその存在すら不問に付されていた『キラー衛星』を使った総攻撃を協議していた。
だが、それも各国の国益を巡って虚しく空転するばかりであった。
そうしてる間にも、スペースデブリの軌道を上手く利用したAI衛星による各国衛星への攻撃は激しさを増し、協議が決議される頃には既に対抗しうる衛星など一つも残っては居なかったのだった。
残された選択肢は、たとえ成功したとしても大きな禍根を残すであろう各国からの核弾頭の一斉攻撃のみに人類の運命は委ねられていた。
かくして人類滅亡の序曲は奏でられてゆくのであった。
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「とりあえず金庫番の救出作戦は大方段取り出来たが・・・もう、それどころじゃない所まで行っちまった感あり・・・か。」
ハリウッド・パーティーを後にした船長は愛車のマニュアル仕様の軽自動車を疾駆し洗濯船へ帰船する途中であった。
街中はいつにも増してガランとしていた。
冬枯れの銀杏の街路樹が立ち並ぶ市内幹線道路を猛スピードで飛ばしていたが、船長は直感的に急ブレーキを踏んだ。
ほんの一瞬だが、流れる風景の中に何か異様な物を見た気がしたからだった。
車はスピンし道路中央で止まった。
往来する車は全く無いので問題は無いのだが、船長は車のエンジンを吹かしたまま街路樹の根隠しの背の低いツツジの植え込みを見つめる。
「確かにさっき・・・」
小さく呟き、何者かを挑発するかのごとく更にエンジンを吹かす。
3度目のアイドリング音を合図にツツジの植え込みから複数の人影が飛び出してきた!
「やっぱりかぁ!!」
アクセルを踏み、エンジンの回転数を最大に引き上げ、一気にスタートする船長の愛車『プレコ』。
軽自動車とは言え、『プレコ』のエンジンは特注品だった。
先の大戦で大活躍した国産戦闘機のエンジンを作った翁が、戦後になって自動車会社を起こしその技術を改良した物だったのだ。
まるで戦闘機のような操作性としっかりと地面に食いつく足回り。
有象無象の輩は次々と植え込みの中から現れ、雨のように車の前に降って来た!
そして彼らの顔はどれもあべ君のそれであった!
「ここで捕まっちゃあ元も子もないんだよっ!!」
必死に右に左にハンドルを切り、立ちはだかる『あべ君』の群れを避ける船長。
しかし彼らの運動能力は人間の域をはるかに超える物だった。
バックミラーに映るコピーロボット達との距離は開くどころか縮まる一方である。
その数はどう少なく見積もっても既に30体は有ろうかと思われた。
「ちくしょう~~~っ、負けるかぁ~~っ!!」
逃げきれないと判断した船長は、一転、攻撃に転じることにした。
猛スピードから一気にサードへギアを落とすと同時に左手でハンドブレーキを力一杯引上げ、更に右手でハンドルを目一杯右に切る。
車のすぐ後ろに追いつきつつある4、5体は車が急回転して止まったために避け切れず車の側面に弾き飛ばされた。
「まずは一丁上がりぃ~っ!!」
後続の者たちはそれを見て咄嗟に立ち止った。
若い頃の無謀な『遊び』がまさかの局面で役立ったのだった。
「さあて、お次はどの手で行こうかぁ?」
友人の国際レーサー直伝の運転テクニックはまだまだあるのだが、残念なことに燃料切れではどうすることも出来ない。
ようやくその事実に気が付いた船長は、目の前に歩み寄るあべ君の群れを見て愕然とした。
「こんな事ならもう少し金庫番苛めとけば良かった・・・」
車は完全に包囲され、今にも窓ガラスを割って侵入しようとするロボットを前に覚悟を決めた船長は、コンソールボックスになっているアームレストの蓋を静かに開け、中から非常時のために用意しておいた手榴弾を取り出した。
以前、海賊が侵入した際に没収していたものがこんな形で使われることになろうとは・・・
「さあ、どうせなら大花火と行こうぜ!どんどん寄って来やがれ!!」
安全ピンに指をかけ、引き抜くタイミングを待つ船長。
「あ~~あ、あとは頼んだぞ。エーコ・・・」
フロントガラスが割られ、無数のロボットたちの腕に体ごと引きずり出された船長は、胴上げよろしくロボット達の腕の上を泳がされるのであった。




