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洗濯船ハイパー日誌  作者: 田子作
第4章 本物のお宝
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遅れて来たカウボーイ!

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http://ideanomi.jp/index.php?%E9%81%85%E3%82%8C%E3%81%A6%E6%9D%A5%E3%81%9F%E3%82%AB%E3%82%A6%E3%83%9C%E3%83%BC%E3%82%A4%EF%BC%81

ひょいっと空中を舞うハンドボール程の白い球。


「よし来た!!」


両手を拳骨に握りしめ、器用にその拳骨のまま白いピザ生地を受け止めるハリウッドパーティーの店長『原田くん』。

コブシの上に玉を乗せたかと思う間もなく遠心力を使って、あれよあれよと平たい円盤に広げて行く。


「ほいよ!」


十分な大きさに広がった頃合いを見て、フワッと、回転する生地を右手人差し指で今度はテーブルの所定の位置に飛ばす。

まるでカウボーイの投げ輪を見ているような正確さ。

片や生地の出来上がるのを待っていたイケメンスタッフ君達は、レーシングカーのピットインよろしく、あっという間に具材やソースを盛るとローラー式両面焼きグリルの網の上に丁寧に乗せてゆく。


ここはダイブンシティーで一番美味しいと言う噂の宅配ピザ『ハリウッド・パーティー』の厨房内。


ひっきりなしに入る注文の電話を次々とこなしてゆくスタッフと店長の連携もやはり『荒野のガンマン』を彷彿させる。


その時、配達員専用の勝手口から髭面の船長が入って来た。


「やあ、お疲れ!!」


船長はここのピザとお好み焼きが大好物らしく3日と開けずに注文している常連客だった。

ピザ屋と言えども両面焼きオーブンはお好み焼きにもそのまま使えるのでメニューに載せてあるのだが、実はこちらも絶品で注文が殺到しているらしかった。


「あ~、船長、こんにちわ!」

忙しなく生地玉を受けては回転させながら、店長の原田氏は笑顔で船長を迎える。


「忙しそうだねぇ!」

船長はクンクンとピザが焼ける匂いに鼻を鳴らす。


「いやぁ、昨夜のドカーンって奴で今日はダメだろうと思ってたら皆テレビに齧りついてるみたいで宅配の注文が凄いことになってるんですよ!」


思わぬ特需がこんなところに・・・

やはり景気は複雑怪奇だと再認識する船長である。


「で、いつものミックス?それともマルガリータ?」


気の良い店長が船長の顔を覗き込んだ時、いつもと違う雰囲気に気が付く。


「どうしました?」


何か言いたげな船長を見て、生地を回す手を止めて改めて尋ねる。


「実はこれを回して欲しいんだけど、できるかなぁ?」


そういうと船長は黒いブヨブヨした玉を取り出して見せる。


「何ですか、これ?」


不思議そうに店長は指で玉を突っつく。

触感はピザ生地とソックリだったが見た目は真っ黒である。


「実は昨夜のドカーンって奴と関係があるんだけど、今、時間あるかい?」


言い難そうな船長の様子に奥の部屋を用意する店長の原田氏。


「実は・・・」


そこから先は店長には衝撃的な内容だったが、地球存亡の危機が懸っている以上、自分だけ逃げ回るようなことが出来る男でもなかった。


「・・・しかし、もし捕まったらどうすればいいんですか?」


一通り船長の話を聞いた原田氏はスタッフの事を心配したのか、万が一の事態の対処法を聞く。


「その時は大人しく連行されて欲しいんだよ、そのビルに。そんで・・・」


詳細な打ち合わせが続いた後、ようやく店長はこう結んだ。


「ここから先は有志のみ、と言うことで良いですか?彼らにも逃げる権利があるんで。」


どこまでもスタッフ思いの店長であった。


------------------------------------


「ちなみに、僕にはここから逃げるという選択肢は無いんですか?」


あべ君は博士の説明で、概ねの状況は理解できたが、『NO,1』の居る同じビル内にいつまでも留まる事の方が危険に思われて仕方が無かったのだった。


「今なら外に出ることも可能だが、それがバレればもう『NO,1』は歯止めなく町中を攻撃対象にするでしょう。今はまだ、奴は君の『隠れた価値』が何なのか知りたくて堪らないので情報収集に時間が必要なんですよ。それにこの部屋は完全に外部とは別のシステムで動いてるんで、一番安全なんです。」

暗倉博士はそう言うと巨大なドーム状の中央にある機器類の塊に歩み寄る。


「さあ、こちらへ!ご紹介したい人が居るんです。」

手招きしてモニター画面の前にあべ君を誘う。


モニターがパッと明るくなるとそこにはどこかで見たことがある老女が写っている。


「・・・あっ!!あの夢で見た人だ!!」

彼女が鏡台で嬉しそうに化粧して健太の入学式へ出かける映像を、何度となく見ていたのでそれが『お末』だとすぐに分かったのだった。


「あんたには迷惑かけたねぇ。ごめんよぉ。」

夢で見た『母ちゃん』そのまんまの口調で話す『お末』に目を白黒させるあべ君。


「こ、この人って生きてるんですか?」

指さす手が震えている。


「肉体的にはNOですが、魂は健在と言った感じですかな?」

博士も簡単に説明するのは難しいと判断したようだった。


「ふぇ~~~・・・科学はここまで来てたんだぁ~~~!!」

あべ君は自分の職業の存亡が心配になって来たのであった。

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