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洗濯船ハイパー日誌  作者: 田子作
第4章 本物のお宝
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黒幕大集合

この話のイラスト付き本サイトはこちら↓

http://ideanomi.jp/index.php?%E9%BB%92%E5%B9%95%E5%A4%A7%E9%9B%86%E5%90%88

田螺丸は動揺していた。

自分が操っていたはずの『首相』がいつの間にか勝手にテレビに出ているではないか!

しかも『特定秘密漏洩防止法』を持ち出して放送を中断させてしまったので、その後の足取りさえ掴めなくなった。


今日は学校も閉鎖になっていたので、秀治は自室に篭もりテレビやネットであらゆる情報を集めていた。

そんな矢先にテレビに映る首相を発見したのだった。

パソコンから呼び出しても応答がない。

という事はテレビに映っているのはいつものコピーロボットか?


そもそも『あの犯行』以来、秀治は『選ばれた存在』として首相のなり代わりを依頼されていたのだ。

だが、テレビに映るコピーロボットは自分のコントロールから独立している。

つまり他の誰かに主導権が移ったことを意味していた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『犯行』を終え、画面に映った『首相』は秀治にこう言った。


「アナタハ・・コノ国ノ首相ニ選バレマシタ。今後ハ、アナタガコノ国ヲ統治シテ下サイ。私ノ中ニハ本物ノ矢部絵首相ノ知識ガ入ッテマスカラ実務ニ関シテハ大キナ問題ハ無イデショウ。アナタガヤルベキコト、ソレハ『未来ヲ創造スルコト』デス。」

腰が抜けそうになりながらも引き戻れない所まで来たことを秀治は悟った。


「ぼ、ぼ、僕がなんで選ばれたんだ?」

最も気になる質問である。


「アナタノ全テヲ調ベサセテモライマシタ。今現在、アナタガコノ国デ最モ優レタ頭脳ノ持主デアルト判断シタカラデス。」


まるで感情を表さずに機械音で話す首相は現実離れして見えた。

しかしこれは現実だった。


「ぼ、僕に拒否権はあるのか?」


やはり、いきなり「首相になってください。」と言われて「はい、そうですか!」とはいかない。


「拒否権ハアリマスガ、時間ハアマリ残サレテイマセン。」


どこを見ているのか焦点すら合っていないコピーロボット。


「いつまでに返事をすればいいんだ?それに、僕も用が済んだら首相みたいに『眠らされる』んじゃあないだろうな?身の安全をどうやって保証するんだ?」


首相よりも大きな力を持っているからこんな芸当が出来たに違いないのだから、『保証』と言っても気休めにしかならない。


「アナタガコノ話ヲ引キ受ケレバ、次ノ候補者ヲ探シマセン。断レバ今スグニ寝テモライマス。」


拒否権はあるが拒否すればこの一連の事実を知った秀治は、今すぐに『眠らされる』だけなのだった。


「そういうのは拒否権があるとは言わないんだよ。バカロボット!」


今まで何でも能動的に活動してきた秀治には絶対的な服従を強いる行為が腹立たしくて堪らなかったようだ。


「ソウデスカ、辞書ヲ修正シテオキマス。ソレデハ引キ受ケテイタダケルト解釈イタシマス。具体的ナ今後ノ活動内容ト手順ヲ説明イタシマス。」


秀治の飲み込みが早いことも既に織り込み済みと言わんばかりにドンドン話を進めてゆくAIロボット。

恐怖に突き動かされつつも一通りの説明を注意深く聞く秀治。


要点は簡単だった。

実務に関してはほとんどをロボットが自己判断して処理する。


秀治に託されたのは『未来志向の発想』であった。


主に外交などの場面に判断を任されるのだが、どうやらAIロボットでは過去のデーターから統計学的に判断することは出来ても、まるで新しい発想は難しいようだった。


つまり『今あるもの』を弄り回すのは得意だが、『今の段階では目に見えない。または初めての現象』は類推では大きく判断を間違う可能性が高いのだと分かったのだ。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

一台の黒塗りの箱車が家の外で急ブレーキを踏んで停車した。

窓にはスモークが貼られ車内が見えないようにしてある。

大きなバンの後部のスライドドアが開くと清掃員風の作業服に身を包んだ男たちが3名ほど降りてきた。

その中の一人が2階の窓からその様子を見ている秀治の気配に気づいて見上げた。

目深に帽子をかぶった中年らしき男はすぐに前を向きなおすと秀治の自宅の玄関のチャイムを押す。

秀治は慌てて階下の両親に叫ぶ。


「ダメ!!ドアを開けたらダメだからっ!!」


既に時遅く、勝手にドアを開けて男たちは侵入してきた。

両親も昨夜の大爆発で自宅で待機し、テレビで情報を集めていたが、異変に気がついた父親が玄関へ通じる廊下へ飛び出した。


「誰ですか!勝手に人の家に入ってくるのはっ!?」


普段は知的な父親だが、若い時分に剣道で鍛えた精神力が今尚健在で、いざという時には気丈だった。


「やあ、これは失礼。秀治くんはご在宅ですかな?」


帽子を取り、笑顔で詫びを入れたのは首相その人であった。

その様子を階段の上からコッソリ覗いていた秀治はいよいよ腰が抜ける思いであった。


「ついに僕が『眠らされる』番が来たんだぁ・・・」


ヘナヘナと自室のドアの前に座り込み、拉致されるのを待つばかりだと諦めていた。


「しゅ、首相~?!」


父親は舞い上がっていた。

父親が応援している政党のトップである首相が眼前に立っているのだから当たり前なのかもしれない。


「この度は秀治くんに大変な役回りをお願いしてしまい申し訳ございません。つきましてはもっと安全な場所へ移動願いたくお迎えに上がった次第です。」


丁寧な話し方で頭を下げる首相に、父親は混乱した。


「うちの秀治が何をしたんでしょう?」


父親が質問しようとしたが、お供のガッチリした二人が靴を脱いで上がり込んできた。


「お父さん、ここは大変危険なんです。詳しい事情は道中ご説明足します。今はどうか我々にご同行願いたい。」


お供を止めようとした父親の右腕を首相は力強く掴んで説明した。


男たちは2階で座り込んでいる秀治を脇に抱えて階段を下りてきた。

秀治の顔は蒼白で今にも気絶しそうであった。


「やあ、君が秀治君だね?安心しなさい、私は『本物』の方だよ。」


そう言うと茶目っ気たっぷりに笑みを浮かべる首相。

その時初めて、目の前の首相は本物なのだと気がついた秀治だった。


「ぼ、僕たちをどうするつもりですか?」


秀治は恐る恐る首相に尋ねるが軽く首を横に振り、外の車に乗るように終始笑顔で促すだけであった。

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