船長の兵法?!
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閑静な田舎の住宅街。
中古車販売の『スパーク』のちょっとしたメンテナンス用の空き地は黒いシートで覆われていた。
特殊な黒いシートは防音と防観用として重宝しているようであった。
『宇宙ごみ袋』と洗濯船では呼ばれているが、地球上に存在するあらゆる物をもってしても傷一つ付けることが出来ない強さを持っていた。
エーコだけは面白いように自由自在に加工できるらしいが、それは子供時分にエーコの星の学校の宿題としてこの袋を使った提出物で訓練していたおかげだとか・・・
「しかし、本当にこんなんで良いのかなぁ?」
加工用マスクを外すと額の汗をぬぐいながら古澤は一服する。
ループ上につながったレール、その中にこれから収められるであろう『アレ』。
「でもアレって市長に貸し出し権限とかあるのかなあ。まあ、船長のことだから何とかするんだろうけど・・・」
自動車整備士2級の腕前が思わぬところで地球存亡の危機と関わることになろうとは、当の古澤本人も想像すら出来なかったであろう。
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船長は別の友人の住友自動車社長の伊東をオペラトマト農家のタク君と尋ねていた。
「へぇ~、ジムニーの在庫が本当に豊富なんですねぇ~!」
家電に続いて車にも詳しいらしくボンネットを開けて覗いてみたり、車の下に潜り込んで何やらブツブツ言っている。
「ところで伊東さん、全部で何台貸せる?」
船長は髭を撫でながら社長の伊東氏に尋ねる。
「う~ん、国が無くなったら商売どころじゃないから何台でも良いんですけどねぇ。ただ、壊れたらお買い上げでお願いできるとなぁ・・・」
さすが商売人同士、シビアな交渉が続く。
「もしこの国が残っていたら、出世払いで・・・」
しぶとく支払の長期化を狙う船長とソレをさせまいとする伊東社長の戦いはまだまだ続くようだった。
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ここはダイブンシティーの極悪囚人用の監獄。
「お頭ぁ~、まだなんすかねえ?」
いつぞやの洗濯船を襲撃した海賊一味。
小さく狭い個室に一人ずつ横並びに収監されているようである。
「あのお人が『一暴れしてもらう時が来たら分かるように合図を送るから、その時は浅慮なくやってくれ。』って言ったんだ。二言は無ぇよ。」
お頭は両腕を頭の後ろで組み、壁にもたれ天井を眺めるでもなくぼんやり見つめている。
そして逮捕された時のことを思い出している。
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「お前さんたちも元は普通に暮らしてたんだろ?」
船長はテーブルの向こうの大きな背もたれの黒皮の椅子にドッカリと座っている。
「それがどうした?世直し屋気取りか?」
お頭は面白くも無いと言わんばかりに吐き捨てる。
「逮捕されれば一生出てこれなくなるそうだ。な?先生。」
部屋の隅で様子を見ていた『町の法律家』小野先生が一歩照明の下に歩み出てくる。
「はい、今までの余罪も追及されるでしょうし、何よりも計画的犯行の上に重火器武装ですから、ほぼ一生を監獄で過ごすことになると思われますね。」
小野先生は優しい口調では有るが厳しい表情で答える。
「けっ!それがどうしたい?これでただ飯が一生食えるぜ!」
悪態を付くお頭。それに連られた子分たちもニヤニヤする。
「それは生きてれば・・・の話だな。」
徐に立ち上がると船長はドアの横に立っている人の形の人形の前に歩み寄る。
「な、なんだ?脅しか?お前こそ殺しをすると・・・」
異様な雰囲気の船長の演技にすっかりビビリ始めるお頭と子分たち。
船長は小さな機械のような物をその精巧に作られた人形の口に押し込む。
そして人形を見つめたまま2歩ほど後退する。
「よ~く見とけよ。俺を怒らせるとどうなるか。」
そう言うと左ポケットからリモコンのスイッチのような物を取り出す。
固唾を呑む海賊一味。
プチッ!
小さなプッシュ音がしたが、何も起こらなかった。
「ふはっ・・・わははは、どうしたい?お前を怒らせると屁でも出るのか?がははは」
子分たちも一斉に馬鹿笑いし始める。
その時、先ほどの人形がガタガタガタッと激しく振動を始めた。
海賊一味は何が起こるのか分からず人形から必死に遠ざかろうとするが全員一本のロープに連なっているので思う通りには動けない。
ブシャッ!!
物凄い音が一瞬巻き起こったが次の瞬間には跡形も無く人形は消えていた。
これには流石に海賊一味も生唾を飲み込んだ。
「な、何をしたんだ?!」
お頭は慌てた。
「安心しろ。同じ物を今お前らにも食わせてやるから!」
不気味に微笑む船長に、初めて船長の恐ろしさを思い知った海賊たちであった。
海賊一味は抵抗することすら出来ないまま、小さな機械を飲み込まされたのだった。
「心配しなくても殺しは俺の趣味じゃない。お前さんたちには『時が来たら』一暴れして貰いたいだけさ。」
意外な展開にお頭は態度を改めた。
本当の意味でリーダーとなる者は自分の器を客観的に見れなければ誰も付いては来ない。
ましてや命がけの稼業になればなるほど皆の命がかかっているのだから当たり前だった。
そしてお頭は今、船長に冠を預ける判断を下したのだった。
「あんた、只者じゃないだろ?いいさ、どうせ監獄行きだ。生きてまたシャバに出るチャンスがあるならそれだけマシだ。。あんたの話に乗るよ。詳しく聞かせてくれ。」
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あれから数ヶ月。
その間、何度も吐き出そうとしたり排便に混ざってないか確認したが未だにあの小さな機械らしきものは見られていなかった。
お頭は腹を摩りながら呟く。
「本当に俺たちが必要な時が来るのか?」
小さな窓の鉄格子からは小さな空に1羽の鳥が飛んでゆくのが見えるだけだった。




