宣戦布告
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「ここでいいですか、首藤さん?」
船長は椅子に腰掛け、カメラの前で位置調整中である。
「ん~、いいんじゃないですかねぇ。」
相変わらずマイペースなキャメラ首藤。
「あれ?首藤さんだ!お久しぶりです!」
僕は船長に頼まれた水の入ったコップをテーブルの上に置く。
「それじゃあ本番行きま~す!3・2・1」
最後のカウントは無言のまま手で合図するディレクター気取りのエーコ。
「こほん。え~、この度のダイブンシティー沖合へのレーザー砲攻撃の犯人に告ぐ!」
モニター画面は少しずつ船長のアップになってゆく。
「お前らの狙いはこれだろ?証拠隠滅にしちゃあ滅茶苦茶しやがって!『証拠物件』を返して欲しけりゃあ取りに来い!関アジ関サバ釣って待ってるぞ!!」
船長の背後にはあべ君の仮面を剥がされた金属面がむき出しのAIロボットたちが特殊な黒いひも状のもので拘束されている。
どうやら例の『宇宙ゴミ袋』を加工したもののようだ。
カメラは船長の顔をドアップで捉えている。
「はい、オッケーでーす!」
エーコがメガフォンで合図する。
「相手に居場所教えて良かったんですかね?」
あまり表情は多くないキャメラ首藤さんも流石に少し心配そうにしている。
「大丈夫ですよ。『獅子身中のあべ君作戦』第一弾『ネットで宣戦布告』ですから!しかし便利な世の中になったもんだ。」
少年のように目を輝かせている船長を見ていると不安もどこかへ行ってしまうから不思議だと感じる首藤であった。
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その夜。
「ねえ先輩!先輩ってば!」
『後輩』は冬だというのに額の汗を拭いながら話しかける。
「なんだよ?櫓を漕ぐだけでも疲れてんだから余計なこと話しかけんなよぉ!」
『先輩』の方も上着を脱ぎ、ワイシャツの袖をめくり、全身から湯気を立ち上らせつつボートの櫓を漕いでいる。
「何で真夜中に佐賀関沖合に手漕ぎボートで行かなきゃならないんですかね?うちの会社は今度は漁業も始めるんですかね?」
いつも疑問だらけの後輩に辟易しながらも一緒に行動させられる先輩。
「知らねぇよ!とにかくそのポインター銃で洗濯船とか言うフザけた船の位置座標を本社に送ればいいんだよ!!手を休めんなよな!!」
先輩に叱られ慌ててまた漕ぎ出す後輩。
「うん?何かあそこ明かりが見えないっすか?」
後輩が目ざとく夜の波間に見える船の灯りを見つけた。
「おっ!ゴールは近いぞ!静かに漕げよ!気づかれたら面倒だからな!」
先輩は声を潜めつつ後輩に注意する。
二人は音を立て無いように櫓を漕ぐ手に神経をやる。
静かに二人の乗ったボートが目的の船に近づいてゆく。
先輩が手を止め、レーザーポインター銃を構え、船に照射しようとしたその時、強烈な光がボートを取り囲んだ。
「うわっ!眩しい~っ!!」
堪らず目を腕で覆う先輩と後輩。
「お前らかぁ!!俺らの海を無茶苦茶にしたのんは!!」
どうやら地元の漁師たちの漁船によって取り囲まれたらしい。
「何?なんのことぉ~~~?」
怯えて抱き合う二人であった。
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ようやく解放されたあべ君は手術用の白衣に着替え博士の説明に耳を傾ける。
「この部屋は今はM.A.Iの管理下にありますが、あまり長い時間だと『NO,1』に気づかれてしまいます。なので彼を身代わりにして我々はこの部屋を出ます。」
博士が指さしたのは先ほどの椅子に横たわるあべ君そっくりのAIロボットだった。
「彼は知ってるんですか?」
あべ君は他人事ではない気がして尋ねる。
「いえ、彼は新型機であなたの人格もコピーされてますから、あなたを見れば混乱するだけです。」
博士はそう言うと先に立って部屋を出ようと動き出した。
「2分もすれば『彼』が目を覚まします。早くここから出ましょう!」
初老とは思えない軽い身のこなしに少し驚きながらも遅れをとらないように後に続くあべ君だった。




