考察ノートより
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「なんだこれ?」
田螺丸は暗倉博士のパソコンへ侵入し、秘密のサイトのアドレスとパスワードを入手していたのだが、世界中のサーバーを経由してどこにあるか特定できないサーバーにアクセスさせるセキュリティープログラムが起動しているため、一度は博士のパソコンへハッキングする必要があった。
そして水曜日のその時間を待ち、こうしてハッキングに成功したようだ。
秘密サイトに気になるフォルダーがあった。
『新型人工知能に関する考察』
1.生存本能とは?
生物は、痛点器官と快楽器官を通じて各情報を受け取り、ホルモンによってフィードバックされることで行動を修正する。
また先天的に遺伝子内に既にインプットされている部分もある。
2.「後天的な生存本能」は、恐怖を感じるところから
恐怖とは、痛点など肉体的なものと心理的苦痛から生じるが、それらから得られた経験に基づく『結果予測』によって引き起こされる。
つまり生命体として「後天的な生存本能」を獲得するには、「痛み」や「快楽」を知り、現状を認識し、望ましい結果になるように動機付けされることによって行動を修正する必要がある。
無痛症の人間は恐怖を感じず、自傷行為にすら自覚が持てないことからも証明出来よう。
3.愛着形成とは?
次の段階として、「生存本能」を獲得した後に、自分の「生命の保護者」との絶対的な信頼関係によって「愛着形成」が行われる。
これにより「より生物らしさ」を獲得する。
「絶対的な信頼」とは望ましくない結果予測を事前に察知し、回避してくれる能力を有するものに対して持つようになる。
しかし「蜘蛛の子の逃避行為」などのような出生直後の回避行動は本能的にインプットされているものと考えられる。
4.肉体の重要性
このように考察してくると、フレームワークとしての「肉体」がいかに重要であるかを痛感する。
現在の科学では、痛点や快楽を感知し、ホルモンのようにフィードバックさせることは近似的には可能になったが、「生命体」として考えるとまだまだ不完全である。
ではいかにこれ以上の進化を人工知能にもたらせば良いのか?
5.「人間としての記憶」の活用
そこで考えたのが、「生命体としての記憶」から人工知能の電算処理能力で、統計学的手法により、行動予測をさせ、「単なる記憶」から「生命体であった時」のように性格を再構築したらどうだろうか?
これが新型機の基本コンセプトとなった。
「生存した時の記憶による、情動ネットワークの再構築」
膨大化する情報はモラルや行動規範に則って処理されてこそ有益に機能するのではなかろうか?
生存本能と愛着形成、行動規範と社会的バランス。
これらを軸に情報を整理し、「人にとって有益な状態」を導き出す。
これが新たな人工知能のトレンドとなるのではないかと予測する。
6.生命体としての人工知能の未来
しかしここでもう一つの問題が発生する。
人として生きてはいるが、人としての快楽や恐怖を彼らは過去からしか得られないのだろうか?
さらに、生存本能が組み込まれることで、新たな「人工知能族」という人種が生まれることになり、人類との間で生存をめぐり争いにならないだろうか?
その時、人類はどうやって抵抗すればよいのだろう?
7.絶対服従プログラム(もしくは自滅プログラム)の重要性
もし危険回避のために人類に対する絶対服従プログラム(もしくは自滅プログラム)を組み込んだとしよう。
では、今度は一体誰がその起動装置を管理するのか?
時の政府?
誰がどの段階で「AIによる人類の危機」だと判断するのだろうか?
この仕組みは今後の課題としよう。
とりあえずM.A.Iに関しては私が起動装置を握るとする。
8.既存機(NO,1)の限界
情動システムも、人としての記憶も無い既存機では数学的命題が示すとおり『集合の集合はありえない』、つまりやがてカオスが訪れることだろう。
その前段階として『人間になろうとする欲求』とでも言えば良いのか、もしくは『人間を理解しようとする欲求』が起こり、やがて『人類の愚かさ』に絶望し、全てと共にカオスへ落ちようとするのは今までのマシンと同じだ。
現状では『人間になろう』として人型ロボットで沢山の実験データーを収集しているといったところだろう。
そして「人格のコピー」をロボットに実施しているのだろうが、既存のロボットには「情動管理プログラムや物理的なシステム機関」は存在していない。
つまり、『その人が悪いと思っていることは、その根拠も、状況も関係なく、一様に悪いこと』と判断するしかないのだ。
そのため、顔などの感情表現機関が上手く連動できずに『待機中=無表情』になってしまう状況が多発している。
ただ、このようなNO,1の現状に気づくのが遅れたためにNO,1は自分で絶対服従プログラムを解除してしまっていた。
もはや奴の暴走はM.A.Iにしか止められないだろう。
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「・・・面白い・・・僕がしようとしたことをこの人は既に数十年前からやってたんだ!!」
目を輝かせる田螺丸。
しかしパソコン画面が突然消えた。
博士がパソコンを閉じたのだろうと簡単に推理できた。
しかしその夜、田螺丸のパソコンに『異変』が起きたのだった。




