団結の時!?
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カウンターバー『竹子』は大盛況だった。
が、なぜか活気は今一つ。
浮かない顔の常連客に竹子ママも少々困り顔。
「大変なことになってたのねぇ。ちょっと来ないと思ったら。」
いつにも増して綺麗な竹子ママに思わず見とれている僕。
「本当ですね。今までこんなことって無かったんですが・・・」
重たい口を開いたのは小野先生だった。
いつになく苦悩する大人の雰囲気を醸し出して、「俺のこと見て見て見て」オーラを放出中。
「今回の件、あべ君の救出の事なんですが、家族に話したんです。」
なべさんもなぜか苦悩する大人の雰囲気を引き継いで語る。
「何て言ってました?」
聞いて欲しそうなので質問する僕。
「『それは船長が考えることでお前には店があるんじゃないか?お前が守らなきゃいけないのはこの店じゃないのか?』ってオヤジに言われちゃいました。」
俯き加減で言い難そうに切り出すなべさん。
そりゃそうだと僕は思った。
海賊の襲撃でも信じられなかったが、まだあれはこの船のニナール理論制御装置があったし、笹川さんが手馴れていたから今では何でもないことに思えていた。
しかし今度は勝手が違うんだ。
「我々のルール」=「奴らのルール」の土俵で戦わねばならないんだから。
「いくら船長でも今度ばかりは一体どれくらい居るか分からないAIロボット軍団相手に戦いようも無いんじゃないですかね・・・」
僕も渋い大人の魅力全開のつもりで影多めの表情で語る。
「ん?じゃあ友澤くんは助けに行かないのあべ君?」
ストローで美味しそうにマンゴーカクテルをチュ~っと啜っていた笹川さんが僕の方を覗き込む。
「い、いや、僕はそうは言ってないですよ!べ、別に怖いわけじゃないしぃ・・!?」
流石に竹子ママの前では『助けに行かない』とは言えない。
「ふ~ん、僕は怖いけどね。」
小野先生どうした!?
ここでカミングアウトして正々堂々と『敵前逃亡か?!』
逃げ遅れそうな雰囲気になって来た僕は少し焦る。
「で、どうするの?友澤君、逃げるの?戦うの?」
いきなり核心に迫る『猛毒羽田さん』。
「いやいや、逃げるとか逃げないとかじゃなくって・・・」
苦しい言い訳中。
「僕は逃げないよ。だって違法行為が許されるような国に明日は来ないからね。」
決まったぁ~~~っ!!
見事にフェイント喰らった気分だった。
ここで竹子ママにウインクかぁ~~~~っ!!
いつの間に腕を上げたんだ小野先生!?
竹子ママもウットリしているぅ~~~~~っ!!
いかん!このままでは逃亡も出来ない上に男も下げてしまう!!
「馬鹿だなぁ!僕が仲間を見捨てるような男に見えますか?ははは。」
キラーンと犬歯を光らせて恰好を付けたが、竹子ママは小野先生と見つめ合っていた!!
2頭を追う者、1頭も得ず・・・
「なんだよぉ~~っ!!負けたじゃねぇかぁ!!」
猛毒羽田さんがポケットから皺くちゃのお札を一枚取り出す。
他の連中もがっかりした様子で同様にお札をテーブルに置く。
「笹川さんの独り勝ちね!」
竹子ママは、唖然とする僕にウインクするとテーブルのお札を集め、笹川さんに渡す。
「友澤君、ゴチソウサマ!」
笹川さんまで僕にウインクする。
どうやら僕は知らない所で『出走』させられていたようだ。
つまり『僕の逃亡か闘争か』が賭けの対象になっていたのだと気付いた。
しかも笹川さん以外は全員『逃亡』に賭けていたとは・・・
「な、なんですか、これ?僕を試したんですか?」
見くびられたものだ・・・
笹川さん以外、僕が逃亡すると思っていたなんて・・・って、さっきまではそのつもりだったが。
しかし、なんで笹川さんは?
「友澤さんねぇ、ササピィーちゃんはね、あなたが突然『卒業』した時ね、すごく落ち込んでたのよ。」
優しく語り掛けてくれる竹子ママによる新事実。
「彼はね、『友澤君が本当に心の底から望むことをすべきだ。僕の後継者かなって?一瞬夢見ちゃいましたけど。うん、さすが船長。彼は彼の道をきっと見つけますよ!』って言ってね、あなたのことを信じてたのよ。」
じわ~っと涙腺が緩むのがわかった。
笹川さんは僕のことをそこまで信じてくれてたなんて・・・!
それなのに僕は・・・素直に『すみませんでした!』の一言すら言えてない・・・
今度は自分が情けなくて目頭が熱くなって来た。
「だって、彼は竹子ママの前で恰好悪い真似が出来ないだけの単細胞ですからぁ!あはは~!」
気分爽快と言わんばかりに平然と言ってのける笹川さん。
急激に頭から血の気が引く。
「た、単細胞ぉ~~~~っ!?」
感動が殺意に代わる瞬間を味わう人間はそう多くはないと思うが、確実に僕はその一人だった。
「まあまあ、素直じゃないだけよぉ~。あは、あは、あは・・・」
苦笑いの竹子ママが割って入る。
「そっか~!友澤君は自分の命よりも女を追うほど単細胞なのかぁ~!そこまでは読めなかった!!」
猛毒羽田さんにも一服盛ってやろうと心に決めた僕だった。




