全面戦争カウントダウン!
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無人の工場を忙しなく多種多様な機械が動き回る。
それでも衝突するようなことは無く、完璧に制御されていた。
ラインにはAIロボットが並び、次々とパーツが組み込まれて行く。
完成した者は、自らラインを降り、『在庫置場』に歩んでゆく。
そこでは隊列を組み、微動だにせずに待機している。
『NO,1』が出した結論は、『敵の船には強力な武器を持つ軍隊がいる』だった。
武力にはそれを超える武力で対する。
ましてや人類の知恵などNO,1から見れば『無』に等しいのだから当然と言えば当然の成り行きかもしれなかった。
次々と生み出されるAIアーミーは優に1万を超えているのだった。
まだ人間らしいスキンは与えられていないだけに、もしここに人間が居たら『お化け屋敷』と勘違いしてもおかしくないほど不気味な状態である。
もちろん彼らには人格も与えられてはいない。
戦闘時に邪魔になるからだ。
唯一、人格を人間からコピーしたのは『プロトタイプ』のみであった。
実際に『その最適解』がどれくらい人類に普及するかを測定するためには『コミュニケーション能力』もコピーする必要があったからである。
プロトタイプ奪還に向かわせた他の5体は単に顔スキンだけがあべ君のものであったのだ。
しかしどれ一つとして帰還しない。
このことでNO,1は、『あべ君の顔や人格』は人類にとって何らかの理由で重要なのだと判断したのだ。
だからこそ人類は『強力な武器を持つ軍隊』で彼らを捕獲したに違いないのだ、と。
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「いやぁ~助かったよ!」
久しぶりに機嫌の良い船長は、中古車販売会社『スパークス』を営む友人『通称 メカニック古澤』を訪ねていた。
「まあ車検てのは法律で決められてるから僕らも仕事になってるだけなんで、出来るだけお金を懸けなくて済むならその方が良いですからね!」
人の良さそうな笑顔で答える彼は、船長の車のボンネットを開けてエンジン回りを見ている。
「あ~、これは4番の線が痛んでるだけですね。うちの中古部品があるからそれを差し上げますよ。」
確かにその部品を一つ交換しただけですこぶるエンジンの調子が良くなった。
「さすがだなぁ。」
感心する船長。
「その代り車の購入の際にはよろしくお願いしますね!」
額にキラリとさわやかな汗を煌めかせる『メカニック古澤』。
「しかし車音痴な人間が知らない所で車検を受けようとすると、何でもかんでも新品の部品と交換しといて高い金額請求してくるからなあ。お前と友達で良かったよぉ!!」
思わず握手を求める船長。
「あ、実はもう一つ頼みがあるんだけど・・・」
含みを持たせた話し方になる船長に、『メカニック古澤』は『どうせ断れないんでしょ?』と言いたげに微笑した。
「実は・・・」
船長のお願いはとんでもない内容だった。
「え~っ!!ほ、本気ですか!?」
驚くメカニックに今までの経緯を詳しく話す船長。
「・・・まあ、そんな事情なら何とか考えてはみますけど・・・動力部がまず問題だとは思いますが、それよりハンドリングをどうするかの方がもっと大変じゃないですかね?」
腕組みしながら知恵を絞ろうと懸命なメカニック。
「実は動力部は何とかなるんだけどな。問題はハンドルだよなぁ。何とか知恵を貸してくれよ!頼む!」
拝み倒し作戦の船長に諦めの溜息ひとつ。
「分かりました。とにかく早急に考えてみます!」
古い友人のため、一肌脱いでくれる頼もしいメカニックだった。
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「あの~、聞こえてるんですよね? このままじゃあ僕、カブレちゃうんですけどぉ?」
股間が濡れてムズ痒くなってきている『本物』のあべ君。
「くそぉ~、何で僕がこんな目に会わなきゃいけないんだ!真面目に生きてきただけじゃないかぁ!!」
どうしようもない憤りが込み上げて来るが、ガッシリとした金属のロックは上半身と両足を拘束し、微動だにすることは無かった。
「出せぇ~~~~っ!!ここから早く出せぇ~~~っ!!」
ついに爽やかで品行方正だったあべ君も切れてしまったようだ。
その時右側斜め後ろでドアが開く音がした。
『人間の足音だ!』
必死に振り向こうとするが椅子に阻まれ見えない。
徐々に足音が近づいて来る。
「やあ、お待たせしましたね、あべさん。」
白髪丸メガネの初老の男が顔を覗かせた。
「この野郎!!僕をどうするつもりだ!早くここから出せ!!」
目上の人間に対してこんな暴言を吐くような男ではないはずのあべ君だが、我慢の限界は当の昔に超えていたのだった。
「大変失礼いたしました。暴れないで私の話を冷静に聞くとお約束頂けるなら今すぐにでもその椅子から解放いたしますが?」
怒りに震えながらも現状を変えるには冷静さが必要なことをあべ君は知っている。
複式呼吸で心を鎮めるよう努めることにした。
やがて呼吸も整い、静かに正視してくるあべ君を見て博士は続けた。
「まず、謝罪しておきます。あなたの誘拐はこの国を救うために仕方がなかったのです。方法は少々手荒でしたがそれも事情があってのこと、心よりお詫び申し上げます。」
意外な切り口に、いつもの冷静さを取り戻したあべ君は、もう少し話を聞いてみようと考えたのだった。




