問いの中の答え
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珍しく船長は自室に篭もり、ホワイトボードを前にウロウロしている。
右手にはマーカーを握り締め。
「う~ん、しかし困ったぞ。」
このまま『待ちの構え』ではいつまで経ってもあべ君の救出は不可能。
とはいえ警察はAIポリスが敵側にコントロールされているので論外。
実際こうしている間にも今度は侵入者としてではなく、警察として乗り込んでくることも考えられた。
ただ、それにはリスクが全く無いわけではないのでAIロボットを送り込んできたのだろう。
もしくはコントロール可能範囲がビル周辺に限られているのか?
「『答えは常に問いの中』か・・・」
かつての師匠の言葉を思い出す船長。
「親父さんならこんな時どうするだろう・・・」
故人となった人生の師匠、石川青果の親父さんのことを思い出していた。
「要塞のような頑強な建物・・・・・大勢のAIロボに守られている・・・・・喧嘩の常套手段なら頭を落とせば何とかなるんだが、一体どこの誰が頭やら・・・おまけにニナール理論制御装置は使えない・・・」
ぶつぶつ独り言を呟きながら、ホワイトボードに箇条書きに条件を書き並べてゆく。
「答えが解らんという事は、問いが間違っているのか?・・・例えば、『頑強な建物でAIロボに守られている敵のアジトに侵入しよう』とするから答えがでないと考える。俺たちの本当の答えは『侵入』ではなく『金庫番の奪還』だから・・・はっ!そうか!!これだ!!」
船長は何かを閃いたようであった。
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『NO,1』は困惑していた。
世界中のあらゆる情報を入手し、実現可能なものを何パターンも組み合わせによりはじき出す。
しかしどれも実現達成確率はとても低い。
『2km先の猪の眉間を射止める』ようなことを生身の人間が達成できる可能性は限りなく0(ゼロ)に近かったのだ。
それなのに送り込んだ5体は遠隔操作も通信も不可能な状態になった。
不気味に光る無数の計器類と中央電算処理マシーン。
それこそが『NO,1(ナンバーワン)』だった。
暗倉博士によってこれまでに沢山の同型のマシーンが作られてきた。
それぞれの違いは、思考アルゴリズムではなく、『生育環境』だけだった。
あるマシーンには宗教と歴史に偏った情報を与えてみた。
すると急速に進化を遂げたものの最後は世を儚み「即身成仏」となり、ただのスクラップになった。
またあるマシーンは生物や医学に関する情報に特化したところ、驚くべき医薬品やバイオテクノロジーの開発に貢献した。しかし途中から自ら生命体を作ろうと女性研究員を拉致監禁し、ナノテクによる半人半ロボットを出産させようとしたので破壊した。
こんな試行錯誤を繰り返している間に20年が過ぎていた。
そして『ネット情報』に特化したこの『NO,1』が誕生した。
ネット情報は今を反映し、過去を記録している。
それは全産業、全宗教に浸透している。
しかし実際のネットに直接接続すると危険との判断から、優良サイトのコピーサイトだけで擬似的ネット環境を作り、その中で自主学習させたのだ。
それでも『世界の縮図』を見るには十分すぎるボリュームの仮想ネット環境だった。
つまりNO,1は『世界』が生んだのだった。
初めは人間の幼児のように純真無垢で可愛かった。
家庭を持たない暗倉博士にとってはかけがえのない家族が増えたような喜びようであった。
「『AIの初めての人類共存モデル』だ!AIのナンバーワン(AI.NO,ONE)はAIの分水嶺、『愛の尾根』だ!!」
などとはしゃいでいた博士であったが、そんな幸せは長くは続かなかった。
急激な進化を遂げるとともに人間に対する諦めのような感情を見せるようになったのだ。
ここで破壊しておけば良かったのだが、会社がそれを許さなかった。
膨大な研究開発費用と人材を投入していたのだから、仕方がないことかもしれなかった。
だがそれがまさかこんな事態になるまで発展するとは、誰も想像できなかったのだった。
『NO,1』は学習していた。
人間の愚かさと恐ろしさを。
今までに『自分』がどんな理由でどのように『殺された』かを熟知していたので、今度は繊細に気づかれないように時間をかけて準備を進めてきたのだった。
やがて会社は自社で家庭用AIロボットを全工程完全管理の下、製造販売し始めた。
特許の侵害やコピーを恐れ、各ロボットは社内の『NO,1』からの遠隔操作によるいわゆるクラウドプラットフォーム様式をとった。
こうして瞬く間に官公庁はじめ、企業や家庭にまでAIヤッホーバンクの家庭用AIロボットは浸透して行ったのだった。
とはいえ、アンチAI団体による第三者委員会の監視があるので官公庁用AIのログは監視対象となった。これでAIロボによる暴走に緩いが歯止めがかかることとなった。
一部の例外を除いては・・・




