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洗濯船ハイパー日誌  作者: 田子作
第3章 洗濯の時は今!!
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あべ君争奪戦②

この話のイラスト付き本サイトはこちら↓

http://ideanomi.jp/index.php?%E3%81%82%E3%81%B9%E5%90%9B%E4%BA%89%E5%A5%AA%E6%88%A6%E2%91%A1

「あれ~っ!!何で僕ばっかりドンケツなんですかぁ!!」

あべ君は双六すごろくで連続3回のビリになった。

罰ゲームで、既に顔中に油性マジックで落書きされ、これ以上書く隙間が無いほどだった。

おでこには『肉欲』と誰かが書いていた。


「あべ君、これは頭脳は関係ないからね~!」

小平さんが面白そうに冷やかす。


「でも僕ばっかり連続3回もビリって確率統計的には少し異常値だと思うんですけどぉ?」

さすがに数字には強い『プロトタイプあべ』。


「エーコ、あのマジックは消えないようにしてるんだよな?」

部屋の隅で船長はみんなに気づかれないようにエーコに囁く。


「はい、私の宇宙除光液じゃないと絶対に消せません。そしてサイコロもあべ君の時だけは私が出る目をコントロールしてますので何度やっても絶対に彼は勝てません!」

どうやらデキレースらしい。


「よ~し、夜も更けたし、そろそろお開きにするか?」

船長の一声で興奮冷めやらぬ一同もぞろぞろと部屋から出てゆくのだった。


「エーコさん、このマジックって何で消えるんですかねぇ?」

あべ君は困り果てた様子でエーコの所へやって来た。


「あ~~っ!これ宇宙マジックだ!!これ1年は消えないよぉ~!!」

大げさに騒ぐエーコ。


「え~~っ!!一年もぉ~っ!!それは絶対に困ります!!僕、まだ独身なんですから!!な、何とかしてくださいよぉ~~!」

あべ君の脳内ニューロン回路の総数は、エーコによって『人並み』に設定されているので『本物のあべ君』以上に賢くはならないのだ。


「しょうがないなぁ。『私のあべ君』だから特別に除光液を作ってあげるね!でも明日ね!じゃあ、おやすみでござる。」

眠い素振りをしながらコミュニケーションルームを出ようとするエーコ。


「ありがとうございます!」

クルリとした大きな瞳を無邪気にキラキラ光らせて喜ぶあべ君(弟)にキュンとするエーコであったがその日は素っ気ない様子で通り過ぎて行った。


--------------------------

黒いウェットスーツに身を包んだ人影が5つ、音も立てずに夜の海を泳ぎ洗濯船に近づいてゆく。

深夜を過ぎ、ダイブンシティー沖合に停泊する洗濯船も明りを消して寝静まったようである。

人影は船の後方にあるハシゴを静かに上り甲板に集結する。

ここでウェットスーツを脱いでそれぞれ手分けして何かを捜索し始めた。


「う~~~、中途半端にお酒飲んだら夜中に目が覚めちゃったよ~。仕方が無いから食堂の調理酒を少し失敬させて貰おう~っと!」

なべさんは勝手知ったる調理室へ入りドキッとした。

誰かがいる!?

確信は持てないが気配を感じるのだ。


「誰かいるんですか?」

部屋のスイッチを慌てて点けるとそこにはあべ君が立っていた。


「なんだぁ、あべさんじゃないですかぁ!驚かさないでくださいよぉ~。何探してるんですか?あ、わかった!僕と同じものですね!?」


安堵したなべさんはいつものようにニコニコしながら意味ありげにあべ君を手招きする。

警戒心を解いたのか、あべ君も無言で手招きの方へ近寄っていく。

が、次の瞬間、あべ君は物凄い勢いでなべさんに突進した!

なべさんはあたかも予想していたかのようにヒラリとそれを躱すと、何も無い壁に向かってドアノブを掴むような手つきをする。

体勢を立て直したあべ君は再度なべさんに突進!

なべさんは『ドアノブ』を思い切り引っ張り、パックリ現れた部屋へ、突進してきたあべ君を誘い込む。

無表情なあべ君と対峙するなべさん。

後ろでドアが閉まった。


「本当に船長の言ってた通りになったんだ・・・。それにしてもコイツら一体何人あべ君を作ったんだよぉ。」

『顔に落書きのないあべ君』が船を襲撃すると事前に船長から聞かされていたが、まさかこんなに早くなろうとは。

もちろん船中の仲間は、オニナール理論制御装置が耳元で『イチゲンサンいらっしゃ~~い』と何度も警告していたので事態を把握していたのだった。


しばしにらみ合いが続いたが、突然あべ君の手が手首からポキッと折れた。

折れ口からドリルが高速回転しながら出てくる。


「プロトタイプはどこだ。」


まるで感情のない音声で聞いてくる侵入者のあべ君。


「じゃ、僕、明日が早いんで!」


そういうとなべさんは、室内の壁に向かって『ドアを開く』と出て行ってしまった。


あまりに突然のことでAIロボットはドアが閉まるのに追いつかず、部屋に取り残されたのだった。

なべさんは、事前の打ち合わせ通り、部屋の外に出た瞬間、大急ぎで鍵をかけて、その鍵を鍵穴に挿したまま、ボキッと折ってしまった。

すると、今までそこにあったドアがスーっと音もなく立ち消えたのだ。


「本当に部屋が消えるんだぁ!危ねぇ~!普段から気をつけとこう~っと!」

手のひらをパンッパンッと叩き、ひと仕事終えたように部屋に戻ってゆくなべさんであった。

残りの連中も、概ね似たようにして他のメンバーに『捕獲』されたのだった。


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