船長のプロポーズ?!
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あれから2時間ほど経過した頃、若草公園の隅っこにディスプレイされてある本物の機関車の前に集合した洗濯船メンバー。
「いや~、なかなか見つからないものですね、この時期って。」
そう言いながら額の汗を拭う笹川さん。
手には20匹ほどのテントウムシが入った透明なビニール袋を携えている。
「ほんと、超難しいんですよね。あんまり見つからないんでカブトムシの幼虫を見つけてきました!」
嬉しそうに親指ほどもある大きな幼虫がゴロゴロ入った袋を見せるケセラン羽田さん。
「何してるかと思ったら、そんなの集めてたんですか~!!」
タク君が隣で青筋を立てて静かに怒っている。
「で、エーコたちは?」
船長が先程から珍しく静かなエーコを指名する。
「え・・・っと・・・それが・・・」
エーコは口ごもる。
「は?聞こえん!金庫番、どうなった?」
気の短い船長はあべ君に状況説明を求める。
「はい、それが・・・エーコさんが突然走り出して・・・それを追いかけて戻ってきたらこの時間になってました・・・すみません、僕がついていながら・・・」
あべ君は申し訳なさそうに顔を伏せる。
「はあ?なんじゃそりゃ?!収穫はゼロなんだな?」
「・・・はい・・」
モジモジしながら小声で答えるエーコとあべ君。
「後は、なべさんと小野先生かな?」
船長が二人を目で追う。
「ふっふっふっふ、僕たちの実力を見てもらいましょう!」
不敵な笑みの小野先生。
その隣で同じ笑みを浮かべるなべさん。
後ろ手に袋を隠して勿体をつけている。
ゆっくりと袋を持った手を前に回し、高く掲げた。
袋にはぎっしりと詰まったテントウムシたちが!!
「どうですか?ふふふふ。ざっとこんなもんですよ、僕らにかかれば!」
二人して顔を見合わせると『ね~~!』と、小学生がするように首を傾ける。
「あれ?船長達はどうでした?」
タク君が船長の手元を覗き込む。
「あ、こほん。俺たちは、あれだ。方向を間違ったと言うか・・・ポイントが掴めなかったというか・・・すまん、これだけ。」
そう言って差し出した袋にはわずか数匹のテントウムシが寒そうに転がっている。
「え~~!これだけですか?」
がっかりするタク君。
「まあ、その分ナベさん達が頑張ってくれたことだし。また見つけとくよ!」
『うっしっし。後日大量のテントウムシが届くとも知らずに・・・むふふ。』
ひとまず目標には少し届かなかったが、何とかなりそうだということで胸をなで下ろすトマト農家タク君であった。
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「それじゃあ、テントウムシが取れたということで、今日は本当にみんな、ありがとう!!乾杯!!」
船長の音頭で『酒宴をこよなく愉しむ会』がスタートした。
今日の会は、いつものナベさんの絶品料理と、ケセラン羽田さんの中華料理も加わって、物凄く豪華な会となっている。
「旨ぇ~~っ!!酒に中華が合うとは思わなかったです!!」
思わず僕は叫んでいた。
既にみんなはアルコールが回ってるので僕の声など誰も気にしてはいなかったのだが。
「さあ、どんどん飲んでくれ!今日は俺の奢りだからな~!」
鼻の頭を赤くしながら船長が上機嫌で大声を上げる。
吐く息も白いのに、いつものごとく『拡大した』甲板には既に100名を超える人間が酒宴を開いていた。
僕ら乗船員は一固まりになって床に円座を組んでいる。
日中の疲労に料理の美味しさも加わって、いつもよりかなり早いペースで酔いしれてゆくメンバー。
しかしいつもと違う雰囲気の者がいた。
ドンチャン騒ぎの中、突然エーコがスックと立ち上がり、船長の前に立った。
船長を見下ろしながら、意を決したように声を上げた。
「船長!私、船長のプロポーズは受けられません!!」
一瞬で静寂に包まれた僕たち。
「船長が宇宙人にプロポーズ?」
みんな口々に呟く。
「は、はああ???」
当の船長は全く覚えがない感じ。
「以前言いましたよね?それもみんなの前で!」
『みんなの前で?』逆に皆はいつのことだかわからなくなった。
「何のこと?お前、頭打った??」
船長は本当に身に覚えが無い様子。
「誤魔化すんですか!?」
エーコはなぜか怒っている?
「え?え?みんな、聞いてたの??」
メンバーを見回す船長。
メンバーも誰一人として覚えていない。
「いいえ、言いました!!『永久にこの船から降りさせないぞ!!』って、言ったのを忘れたんですか?!これだから地球人の記憶力ったら当てになんないし。」
憤懣やるかたなしといった感じのエーコを見つめているうちに船長は何かを思い出した!!
「バカ野郎!!あれは『お前が借金を返さないと永久に船から降りられんぞ!』って意味だろうがぁ~~~!!」
メンバーは顔を見合わせるとドッと爆笑した。
「へ?え、あれってそういう意味じゃなかったんですか??」
戸惑うエーコ。
「がはははは、何を言い出すかと思えば!まあ、お前はその程度だもんなぁ、いっつも!!」
涙を流して爆笑する船長たち。
「ところでいきなり何でそんな事言い出したんだ?」
ひとしきり泣き笑いした後、船長はエーコに尋ねた。
「え?!そ、それは・・・私・・・好きな人が・・出来たと言うか・・・」
一瞬で静寂に包まれた僕たち。
次の瞬間には噴火でもしたような大爆笑が炸裂した。
「ぎゃははは・・く、苦しい・・・お前、笑いの神が降りてる・・今夜、絶対・・・ぎゃはははは・・」
悶絶しながら笑い転げる船長たち。
「本当です!!」
珍しく食べ物以外の話で真面目な顔をしているエーコ。
「じゃあ聞くが、その不幸な男は誰だ?」
からかう船長。
「不幸じゃないです!絶対今より幸せにします!」
ムキになるエーコは初めて見た。
「分かった分かった。すまん、で、誰が好きになったの?」
今度は少し優しく話しかける船長。
エーコは静かに指差す。
その先には金庫番あべ君が美味しそうに酒を飲んでいた。
「え~~~~っ!!いつの間に!!」
みんなの声が重なった。
「え?はい?どうしました?」
まるで事態を把握していないあべ君だった。




