テントウムシ・ラプソディー
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プルルル~、プルルル~
誰かの携帯電話が鳴っている。
「あ、俺か。」
船長が思い出したように携帯電話に出る。
「もしもし?あ?何慌ててるんだ?」
「大変、大変なんですよぉ!!僕のハウストマトがアブラムシの大量発生で大変なんですぅ~~~っ!!」
今にも泣き出しそうな声で慌てふためくトマト農家 兼オペラ歌手のタク君。
「で、俺に何が出来るんだ?」
惨状は理解できたが、なぜそんなことを自分に電話してくるのか分からないでいる船長。
「てんとう虫です!船長も確か広い畑を持ってますよね?そこにてんとう虫は居ませんか?てんとう虫はアブラムシの天敵なんですよぉ!」
かなり慌てている。
「そりゃあ、暖かい時分には一杯居たけど今は真冬だぞ。居るかなあ??」
彼の話では、てんとう虫は白い物に集まる習性があり、群れで生息するらしく、運が良ければ一気に1000匹でも捕獲可能だそうだ。
しかしそれは『運が良ければ』の話。
「とにかく一緒に探してくださいよ~!!このままじゃあトマトちゃんが全滅ですよぉ!!」
彼がこうなったら何を言っても無理なのを船長は知っている。
ため息一つ付くと承諾してやるのだった。
「船長、ネットの情報では石の下とか、枯れ木の下、壊れた廃屋の板塀の裏などに居るそうですよ。あ、どれも日当たり良好で10度以上の暖かい所じゃなきゃ駄目だそうですが。」
エーコが早速調べてくれた。
「やれやれ・・・。てんとう虫一匹につきトマト10個貰おうかな。」
彼のトマトは1つ100円する超人気の高級トマトである。
「1000匹で1万個、と言うことは売ったら100万円ですね。悪くない投資です。」
あべ君が即座に計算する。
「売っちゃうんですか?僕が料理に使いたいなあ。」
なべさんが惜しそうな顔をする。
「てか、てんとう虫ってお金になるんですね?!育てたら良いんじゃないですかね?」
僕には畑一面に蠢くてんとう虫が金色に光る宝の山に見えた。
「そうか、お前が世話してくれるんだな?そりゃ結構だ。」
船長が冷たく言い放つ。
「あ、いや、僕は虫がちょっと・・・」
慌てて前言撤回する僕。
「仕方が無い、100万円のため、仲間のため、皆、協力してくれないか?」
船長の音頭の元、皆、一旦下船して陸地をてんとう虫求めて探し回ることになった。
「うひょ~、寒いですねぇ、今日は特別。」
お洒落なコートに身を包みながらも小平師匠は震える声を洩らす。
「手分けして探そう。それじゃあ『裏か表』でチーム分けしよう。」
「う~らかお~もてっ!!」
良い大人が大きな声で、一斉に手のひらを出し揃える。
裏とは手の甲の方で、表は掌側と決めていた。
「うわ~、私『電卓さん』とだぁ~。」
エーコが嫌そうに声を上げる。
船長がゴツンと拳骨を頭に落とす。
「ツベコベ言うな。」
一喝しすると、早速チームを分ける。
「まず俺は小平さんと。友澤は笹川さんと。金庫番はエーコと。小野先生はなべさんと。羽田さんはタクと。全部で5チームだな。よし、それじゃあ出発!!」
「お~~・・・」
あまりやる気の無い皆。
「あれぇ~?ちょっと皆さん元気が無い?」
タク君はこういうことに敏感に反応する。
「一杯取れたらトマト沢山食べて貰いますから、頑張ってくださいねぇ。」
自分のために寒風の中、てんとう虫探しに引っ張り出したのだからあまり強くも言えない彼であった。
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「早く付いて来てくだ・・・」
エーコはあべ君を振り返り、急がせようと声を掛けかけた。
が、いつの間にか超早歩きのエーコの背後に、彼は息も乱さず涼しい顔でぴったりとくっ付いて来ていた。
一瞬ギクっとするエーコ。
『いつもの電卓さんならずっと後ろの方で息も上がってるくらいなのに・・・意地になってるのかな?』
そんなエーコの気持ちなどどこ吹く風のあべ君。
額に汗一つかかずにピッタリと張り付いてくる。
エーコは徐々に早足から駆け足になっていった。
それでもまるで二人の距離は開かず、スピードは益々加速してゆく。
もう完全に『てんとう虫探し』は忘却の彼方だった。
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「皆ちゃんとテントウムシ探してくれてるかなぁ。心配だなぁ・・・」
心配げなトマト農家歌手。
「ケセランパサラン!」
羽田さんはわざと意味不明な返事を元気に答える。
「ちょっとぉ~、羽田さんも真剣に探してくださいねぇ~~~~」
寒空にタク君の声が虚しく溶けていった。




