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洗濯船ハイパー日誌  作者: 田子作
第2章 輝ける洗濯者たち!
37/101

エーコとの遭遇

本サイトに対して先行リリースです。



「さぁて今夜は何を食べるかなぁ♪」

まだ髭の無い頃の船長は、大型クルーザークラスの『石川青果号』を自動操縦に切り替えて、

夕食の支度を始めるようキッチンなべさんに連絡に行こうとする。


「『母ちゃん』、今日は何が食いたいかい?」

船室のソファーにちょこんと座る初老の婦人に声を掛ける。


「あ、僕パスタ作りましょうか?」

とぼけ声の青年が答える。


「あ~俺はそんなハイカラなもんは食わん。」

黙っていると品の良い婦人だが口を開くとこの有様。

ダイブンシティー青果市場で40数年も鍛えられながら商売を続けて来るには女を捨てる必要があったと言う。


「わははは、タクよ、振られたな!」

風船顔の青年に返す船長。


「僕のは本場仕込みだから美味しんですよぉ!」

残念そうに話すタク青年。


「そうやのう、旨ぇフグが食いてぇなあ。」

もともと食は細い方で、好き嫌いも激しい『母ちゃん』だが、フグだけは大好物だった。


「お、こりゃあ、なべさんの腕の見せ所だな。」

船長も嬉しそうだ。

この頃の石川青果号はさほど大きいとは言えないまでも地元では知る人ぞ知る有名な「八百屋船」だった。

先の大震災でかなりの陸地を失ったこの国では、居住区以外は可能な限り船上生活をするよう国民に要望していた。

「皆の為や!」と率先して船に乗ったのがこの『母ちゃん』こと、店主の房子ばあさんであった。


「ふぐかぁ。久しぶりやのぅ。うひひ。」

滅多に食べ物で喜ぶことは無い『母ちゃん』も今夜ばかりは様子が違った。


船長は一度デッキに出て周囲を確認することにした。

自動操縦とは言え、レーダーに感知しきれない『何か』があったら大変なので、目視でも確認するのが日課となっていた。

目は良い方ではないがコンタクトレンズを入れているので薄暗くなりつつある夕暮れ時でも問題なく確認作業は出来た。


「前後、左右、よし!!よし!!」

目視と同時に指を差し、呼称を唱える。


そう言うとキッチンへ続く狭い階段を下りて行った。


--------------------------------------


「あわわわわぁ~~~~~!!誰か止めて~~~~~~~~ぇぇぇ」

激しい振動で今にも操縦席から振り落とされそうになるエーコ。


キーーーーーーーーーーーーーーーーンッ


けたたましい金属音を鳴らしながら地上目がけて落下してゆくエーコの乗る餃子型宇宙船『ケチラス号』。


「ひえ~~~ぶつかる~~~~~!!」

ほぼ操縦不可能となった操縦桿を必死に握りしめながら不時着可能なポイントを探す。

このまま直進すれば大地に激突は避けられない。


「はっ!!フラクタル走行だ!!」

そう言うと、まだ辛うじて動作している右側エンジンの作動ボタンをOFFにした。

宇宙船の左側エンジンは作動しているままなので途端にクルクルと回転を始める。


「わわわわわ~~~、目が回るぅ~~~~!よしっ!今だ!!」

今度は左側エンジンを切ると、同時に右側エンジンのスイッチを入れる。

何度かタイミングを見ながらこんなことを繰り返しているうちに、餃子型宇宙船はグルグルと大きな渦巻きを描く航路に入った。


「よし!これなら衝撃は最小限に抑えられる!で、予想着地点はと?」

今度は計器類をポンポンと軽くタッチして操作した。


「よしよし!海上だ!着水ポイントをクローズアップ!!」

正面の300度モニターに着水予定ポイントがクローズアップされて映された。


「ん?何だ?げ~~~~~~っ!船がおる!!どいて~~~~~~~!!」

避けるにはもうさほどの時間も無かった。


ちゅどーーーーーーーーーーーーーーーーんっ!!


まるで大陸間弾道ミサイルに直撃されたような衝撃が「石川青果号」に走った!!

船室のソファーから母ちゃんが宙に舞う。

階段を下りていた船長は甲板へ引き戻され、風船青年に至っては海上へ飛んで行ってしまった。


「な、な、何が起こったんだ?????」

船長は宙を舞い、甲板に叩きつけられながらも事態の把握に努めようとした。


「はっ!!母ちゃんは!?」

激痛の走る体を引きずりながらも、慌てて船室を覗く。

船室の中は物が四方八方に飛び散らかり滅茶苦茶な状態だった。

が、母ちゃんだけはなぜか元のソファーにちょこんと座っていた。


「お前、大概にしろよ。どこ見て運転しよんのか!!」

久しぶりに本気で怒っている。

こうなると一個小隊でも止められるものではないが、とりあえず無事なことは判った。


「お、俺じゃないって!!」

無駄だと分かっているが取り敢えず言い訳しておく船長。


「お前以外に船を座礁させられる奴がどこにおるっちゅーんかい!!」

物凄く真っ当な意見だった。

が、これは1000年に一度あるか無いかの『単なる不運』だったのだ。


-------------------------------------

「あ、た、たたたた・・・はっ!!生きてる!!はっ!船は!!」

モニター画面には大きなヒビが縦横無尽に走っていたが辛うじて外の様子は映し出された。

モニターには大型クルーザーの船首に餃子型の宇宙船がグッサリと突き刺さっている映像が映し出された。


「わちゃ~~~。これはもう隠密行動は無理だ。とりあえずこの星の奴とコンタクトを取るしかないか。」

頭上のレバーを引くと天井部分にポッカリと丸い穴が開いた。


『餃子の皮』から餡がはみ出してきたように船長には見えたが、どうやらそれは人影だと気付いた。


「こんばんわ!」

右手を軽く上げた20代前半と思われる女が船長に話しかけた。


「こ、こんばんはぁ~~~~?!!」

流石の船長も事態を理解するのにかなりの時間を要したのは言うまでもなかった。



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