今、ここから!
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「あれ?・・・いや、もう一枚あるし!」
嫌な予感がしてきた。
4枚中すでに3枚がハズレだった。
僕は最後のスクラッチくじを慎重に削る。
『頼む!200円でもいい!!』
結果は無残なものだった。
「あはははははは~~~~~~っ!!」
少し大袈裟すぎるくらいに笑い転げる笹川さん。
「ほら~、オーラが無かったでしょ?」
ニヤニヤとケセラン羽田さんが窘める。
「ま、まあ、次があるしね!まだ若いんだからクジになんか頼っちゃだめよぉ~。」
かなり期待していたのを誤魔化そうとする竹子ママ。
「クジって基本、外れる様に出来てますから、確率的に。」
僕は出来るだけ平静を装った。
「やっぱ友澤さんのオーラじゃダメかぁ~!」
あべ君が本当に悔しそうに洩らす。
「いや、だからオーラ関係ないし!!」
ちょっとムキになる僕。
確か彼は僕よりも少し年下だったはず。
ソイツが失礼な発言をするのはこの国の男子として我慢ならない。
もう一言言い返してやろうと思った瞬間、ホールの明かりがグーンと暗くなった。
「あら?!もう週末じゃないの!?」
竹子ママが何かに気が付く。
「お、タクちゃんオンステージですか!こりゃ良い時に来た!」
笹川さんが嬉しそうに小躍りする。
ホール中央のマストの基底部の周りに床から迫り出しでステージが上がって来た。
柱を取り囲むようにドーナツ型のステージは奥行きが2~3mほどで高さは50cmもあろうか?
中央柱にスポットライトが当たり、どこからともなくオーケストラの演奏が始まった。
これは確かオペラの楽曲。
『何だっけ?』
「イタリアの作曲家プッチーニの作品「トゥーランドット」より「 誰も寝てはならぬ」ですね?!最後のビ~ンチェロ~、ビン~チェロ~~の所が僕は大好きです!」
あべ君も目を輝かせて今かと待ち構えている。
そしてどこからか「風船オペラ青年」の唄声が聞こえ始めた。
柱の向こう側からゆっくりと歌いながら歩いてこちら側正面へ躍り出る。
観客たちの割れんばかりの拍手や口笛が鳴り響く。
気が付けば物凄い数の観衆に取り囲まれていた。
悔しいが流石にプロだ。
見事な抑揚に心のひだも揺れる。
初めて僕はオペラに聞き入ってしまっていた。
映写室で見た変な替え歌の時よりも遥かに実力も増している様子だった。
いよいよ最後の見せ場『ビ~ンチェロ~』のところだ。
高音で長く澄み切った声で見事に歌い切った瞬間、会場はまたもや拍手喝采に包まれるのであった。
「友澤、これがオーラだ。『今、ここから、自分に出来ることに全力を尽くす』そいつがオーラの正体なんだな。」
気づけば船長が僕の左側に立ち並んでステージを見つめていた。
「今、ここから・・・」
何かがストンと僕の中で腑に落ちた気がした。




