選べる未来
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「あ、そうだ!船長の買い物がまだだった!」
興奮に震える手に電信柱から剥がしたチラシを握り締めているあべ君だったが、ようやくいつもの冷静さを取り戻しつつあった。
「でも何でいつもスクラッチくじを1枚だけなんだろう?確かに1枚買っても100枚買っても当せん期待値はほとんど大差ないから掛金は少ないほど投資効率は高まるんだけども・・・」
ぶつぶつ独り言を呟いているうちに町中にある小さな宝くじ屋の前に着いた。
「あ、すいません、スクラッチ1枚お願いします!」
「どれにしますか?」
女性の店員が5枚ほどのくじをトランプのように右手の中で器用に広げてみせる。
『いいか金庫番。くじは相手に選ばせろ。』
船長の言葉を思い出し、店員に適当に選んでもらう。
「当たりますように!」
帰り際に女店員が願を掛けてくれた。
小さく会釈をして店を離れた。
その様子を向いのカフェの中から見つめる僕。
「そうだ!僕もドカーンと当てて船から下りて一人立ちしてやろう!」
早速ポケットのつり銭を数える。
「873円かあ。ま、4枚は買えるな。」
今度は10枚ほどのクジをさっきと同様に女店員は器用に片手にずらりと広げてみせる。
僕はカードが透けて見えるんじゃないかというほど睨み、ようやく4枚を撰んだ。
心持ち「リッチ」になった気がした。
当たったらどうやって使おうかを空想しながら船に戻ることにした。
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「おー、すまん。ところで友澤っていくつだっったっけ?」
船長の『お買い物』のスクラッチくじ1枚を配りに来た僕に尋ねる。
先日も聞かれたが、どうやら船長は本当に僕の年齢を単純に知りたがっていただけだと分かった。
「えっと35歳になりました。」
「そうかぁ。そろそろ一人立ちしても良い頃だな。」
『ん???やっぱり僕は追い出されるのか???』
「それって船を下りろってことですか?」
僕は慎重に尋ねた。
「は?いやいや、そうじゃなくてお前にはお前のやるべきことがそろそろ確立される年頃じゃないかってな。はは、そう力むな。気が済むまでここに居ればいいさ。」
正直ホッとした。
船長のことを影では『超合理主義者で抜け目がない怖い人』とか言ってる連中が居るのを僕は知っていた。
当然、『働かざる者、食うべからず!』が信条なら何をやっているかわからない僕はすぐにでもクビになるはずだと考えていた。
それが今、彼の本当の懐の広さを垣間見た気がした。
「すいません船長、僕、船長のこと少し誤解していたようです。あの・・・これ、お釣りで買っちゃったんですが、良かったらどうぞ。」
ポケットから僕は自分のクジを取り出していた。
「ん?は、そりゃハズレくじだ。つまらん未来を選びやがって。それよりチョロマカシは重罪だから夕食は抜きな!」
キッとした表情でそう言い放つと部屋の扉をバタンと閉めてしまった。
「は???」
呆気に取られその場に立ち尽くす僕だった。




