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洗濯船ハイパー日誌  作者: 田子作
第2章 輝ける洗濯者たち!
26/101

船長のため息②

イラスト付きのこの話はこちら↓

http://ideanomi.jp/index.php?%E8%88%B9%E9%95%B7%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E6%81%AF%E2%91%A1

「寒い寒い寒いう~~~~っ」


僕は寒さに身を縮こまらせながら階下に駆け込む。

最近では、日に日に寒さがきつくなり、『たかが洗濯』でも大変な仕事になっていた。


「ぶへっくしょいっ!!」


飛び出したものの、その高い粘性から僕と縁を切ることも出来なかった鼻水は、見事な弧を描き上着の胸元に着地した。


「うわぁ~、なんでそうなるんだよぉ~・・・」


ポケットからくしゃくしゃのティッシュを取り出し、慌てて拭い去る。


「こんなところを竹子さんに見られたら最悪だよぉ~。」


何度も擦り取る様に拭い、ようやく顔を上げてギョッとした。


中央通路の4~5m先で仁王立ちになって僕を見ているケセラン羽田さんと目が合ったからだった。

なぜか背中に大きな中華鍋を背負っている。

まるでアメリカンコミックのヒーローみたいに。


「ど、どうしたんですか?もう夕方ですよ。そんな仕事用の割烹着なんか着て中華鍋まで背負って!?」


しかも彼の表情はなぜか怒っている。

物凄い形相で僕を睨んでる??


しばしの沈黙を破ったのは『プゥ~~~~~~~~~~~ッ』という緊張感のないノイズだった。


「放屁かよ!!」


すっきりしたのか突然満面の笑みになるケセラン羽田。


「ケセランパサラン!!」


嬉しそうにそう言い残すとクルリと向きを変え、中央広場の方へ歩いて行った。


「なんだよぉ!通行止めになったじゃんかよぉ!!」


聞こえないように文句を言う僕。

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「しかし最近の船長の溜息の原因って一体何なんでしょうね?」


笹川さんは『タイガーアイ』の真っ赤なカクテルをちびちび舐める。


「何か心配事でもあるんですかね?僕らに話してくれれば相談に乗れるかもしれないんですけどねぇ。あの人のキャラじゃそれは無いか。」


ドライマティーニの注がれた小さな三角形のグラスを、洒落たジャケットを着こなしている小平師匠は飲むでもなく右手で弄ぶ。

あたかもカクテルグラスさえも彼のファッションの一部であるかのようだ。

どこからともなく聞こえて来るジャズナンバーが彼のオシャレ度をさらに増してる気がする。


「少なくとも経済的な理由ではないわよねぇ。今のところ資金は潤沢だしぃ・・・」


既に『オネエ化』したあべ君がビアグラスに緑色の目薬のようなものを入れながら続ける。


「あ、また『オニナール溶液』をアルコールに入れてる!!悪酔いしますよ!」


小野先生が指摘する。


「だってぇ、最近何かと嫌なことが続いててこうでもしなくちゃ酔えないのよぉ!なによ、違法なの!?え?この薬は違法なんですかぁ~ってね!」


既に悪酔いし始めているあべ君。


『ぐぅ~~~~っ』


不意に僕のおなかが鳴った。


「あら、友澤さんはおなかが空いてるの?」



竹子ママが気遣ってくれた。


「あ、いや、今日は特に寒かったから・・・何かありますか、食べる物?」


照れながら腹をさする。


「丁度良かったわ!!今日から頼ましい助っ人が入ったのよ!あんた~~!」


色っぽい声でカウンタの端っこの方へ呼びかける。

すると今まで誰も居なかったカウンターの下からひょこっと男が顔を出した。


「ケセラン羽田さん!!」


「あいよ~!餃子リャンガー!!」


元気良い掛け声とともに餃子が乗った皿が2つ、勢いよくカウンターの上を滑りやって来た!


「しゃべれるの!?」



みんな唖然とした。


「あら、船長じゃない?」



竹子ママは、広場を横切る船長を見つけ手招きをする。


船長は腹をさすりながら手を払い、『今日は止めとく』の合図を送りかえしてきた。

そしてそのまま広場を横切って行ってしまった。


「そりゃそうよねぇ。ここのところ毎晩味見をしてもらってたから無理ないか!」



少し残念そうな竹子ママ。



「毎晩中華って・・・ひょっとして船長の溜息の原因って・・・」


笹川さんが詮索する。


「食べ過ぎ!?」


全員でハモった。


『なんだよ~!心配して損した!』



という空気が流れたのは言うまでもない。


ただ僕と小野先生だけは


『でもケセランさんを『あんた~』って、どんな関係!?』


という新しい疑問が芽生え、スッキリ感も中途半端だった・・・

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