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洗濯船ハイパー日誌  作者: 田子作
第2章 輝ける洗濯者たち!
25/101

船長のため息①

イラスト付きのこの話はこちら↓

http://ideanomi.jp/index.php?%E8%88%B9%E9%95%B7%E3%81%AE%E3%81%9F%E3%82%81%E6%81%AF

甲板に立ち遠くを見つめる船長。

ため息一つ。

その姿を離れたところから見つめる僕ら。




「ほらね?船長また溜め息ついてるでしょ?」


金庫番あべ君がヒソヒソ声で話す。




「うーん、大丈夫ですかねぇ・・・」


腕組みしながら金指ゴールドフィンガー小平師匠が心配げな表情で船長を見守る。




「というと?」


僕は小平さんが何を心配しているのか理解できていない。




「ほら、よく言うじゃないですか、『ミドルエイジ・クライシス(中年の危機)』って。まさかこのまま海にドボンってことにならなきゃいいんですが・・・」


眉間にしわを寄せ、ますます深刻そうな顔をする。




「まさかぁ。『あの』船長に限ってそれはないと思うんですけど~。」


僕には『あの』船長が何の得にもならないことをするとは到底考えられなかった。




「わかりませんよ。実際、中年の自殺で支払われる保険料は年々増加の一途をたどってるんですから。」


金融商品にやたらと詳しいあべ君が小平師匠の心配に同調する。




「あ、ほら!また!」


小平師匠が船長のため息を指摘する。

そんな彼らをさらに後ろから冷ややかに見ている人影が一つ。




「今朝は新鮮な鮭が手に入ったので甘塩で焼いてみました!」


血色の良い顔の料理長は朝からご機嫌である。


それに比べ船長はどこか元気がなく、食欲も湧かないらしい様子。




『ほら、またですよ。』


コソコソ声で隣のあべ君を肘で突っつく小平師匠。




『本当ですね~。こりゃ深刻だなあ。一体どうしちゃったんですかね!』


あべ君もヒソヒソと答える。

とうとう船長は鮭に手を出すことなく箸を置いた。




『ひょっとしたら昔のことを思い出してるのかも?』



笹川さんも加わってきた。




『そう言えば、船長の部屋に『赤ちゃんの寝姿』の絵が飾ってありますが、あれと何か関係があるんですかね?』


思わず僕は船長部屋を掃除したときのことを思い出した。




『友澤くん!お客の秘密は?!』


笹川さんが僕を咎める。




『・・・『墓場まで』でした・・・すいません。』


反省する僕に、




『あ、知ってますよ、その絵!あれは確か船長が描いたとか・・・』



『え!あの絵って船長の手書きだったんですか!!』


鉛筆によるデッサン

その質の高さにてっきり誰かに貰った物だとばかり思っていた。

もしかするとデザイナーの僕よりも絵は上手い!?

焦った。

僕の存在意義って・・・

いや、今はそれどころじゃない。


大きなテーブルは『表向きは静か』だが、みんなの憶測とアイコンタクトで『ガヤガヤ』している。


その時だった。

突然エーコが立ち上がり、船長を指差し大声を上げた!




「死んだように過去に囚われて生きるのか、死ぬ気で今を生きるのか、はっきりさせたほうが良いですよ!!」

『・・・決まった!!』  悦に入るエーコ。



『あちゃ~!やらかしちゃったよ!』


小平さんが苦虫を噛み潰したような表情になる。



『ホントK.Y(空気読めない奴)だな、こいつは!』


僕はエーコを睨みつけた。


キョトンとした表情の船長だったが少し間を置いて口を開いた。




「・・・『死ぬ気で今を生きる』か。・・・その言葉、そのまま返させてもらうぜ、エーコ。」


一同は、一瞬だが船長の話が何を意味しているのか分からず呆気にとられた。




「おい、金庫番。」


口元をナプキンで静かに拭き取りながら『金庫番』あべ君に声をかけた。




「はい!!」


急に電源が入ったようになるあべ君。




「エーコが乗船してから今日までに紛失・破損・消耗した備品の総額はいくらだ?」


あべ君は、すぐさま胸ポケットから小さな電卓を取り出すと何やらぶつぶつ呟きながら物凄い勢いで電卓を叩き始める。




「〆て総額で432万5987円になります!」


数字を扱う時のあべ君は別人のように輝いている。




「な、なんと~~~~~っ!!」


仰け反るエーコ。




「さあ、『死ぬ気で』働かないと永遠にこの船から降りれんぜ~!」



ニヤリとする船長。




「・・・あ、悪夢だ・・・」


項垂れるエーコ。

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