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洗濯船ハイパー日誌  作者: 田子作
第2章 輝ける洗濯者たち!
21/101

『悪夢よりの使者』

イラスト付きのこの話はこちら↓

http://ideanomi.jp/index.php?%E6%82%AA%E5%A4%A2%E3%81%AE%E4%BD%BF%E8%80%85

「誰?!」


暗い通路を向うから歩いて来る人影ひとつ。

目を凝らすが輪郭すらおぼつかない。


「誰ですか?」


その時、わずかな明かりが何かに反射した気がした。

それは人の頭部付近。

眼鏡だ!

この船で眼鏡をかけている人となると・・・エーコさん!?

無意識に手が震え始める。

額に嫌な感じの汗が滲む。

呼吸が荒くなるのを感じているが自分ではどうしようもない。


「エ、エーコさん?!」


それはほぼ確信に近かった。


「そーですよー、電卓さーん。」


やはりエーコさんだ!


「ど、どうしたんですかこんな時間に・・・」


声が微妙に震えている。気づかれないようにゆっくりと鼻で深呼吸をする。


「べつにー。電卓さんこそこんな時間にこんな所で何をしてるんですかー。」


声に抑揚のない、まるで感情を持ち合わせていない初期型AIのような話し方と声だ。


「ぼ、僕は・・・」


言いかけてハタと気が付く。

僕は一体なんでここに居るんだ?

ここはどこだ?


「そーですよねー。もう電卓さんみたいな『頭が良い人』なんて要らないのにねー。AIの方がずっと役立つのにねー。」


うっ!!

図星だった!

記憶力でも組み合わせ理論でもAIに勝てる訳がないのに・・・

僕だって学生時代は優秀な方だったんだ!

それなのに、それなのに・・・

AIの台頭でいわゆる『ホワイトカラー』と呼ばれていた仲間が次々と失業した。

僕もいつまでここで働けるか・・・娘もまだ小さいし、家のローンだってこの先何十年も支払わなければいけないというのに・・・

もし今年生き残れても数年後には?

もし僕が失業したら・・・


「うっ、うっ、うっ・・・」


悔しくて悔しくて気が付けば嗚咽を漏らしていた。


「ほらー・・ほらー・・・ほらー・・・」


エーコさんが僕の胸ぐらを掴んで上半身を揺する。

徐々に胸が締め付けられるような息苦しさが増してゆく。

耐え切れず彼女の手首を掴んだ!!


「痛い!!パパ!!」


エーコさんの声が娘の声に変わった?


「パパ、パパ!」


ハッと目を覚ます。

僕に両手首を握られ、今にも泣きそうな怯えた表情の幼い娘が目の前に居た。


「あわわわっ!!」


慌てて娘の手を離す僕。

頬を涙が伝ったのか、モミアゲが濡れている。

娘は手を離されると一目散で妻の所へ泣きながら駆けて行った。

寝間着は寝汗でびっしょりだった。


もうこの半年、ずっと同じ夢を見ている気がした。

月曜日の朝だというのに身体はぐったりと疲れ切っていた。


『そうだよな・・。AIが人間の頭脳を完璧に超える日なんてすぐそこだよな・・・』

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