『悪夢よりの使者』
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「誰?!」
暗い通路を向うから歩いて来る人影ひとつ。
目を凝らすが輪郭すらおぼつかない。
「誰ですか?」
その時、わずかな明かりが何かに反射した気がした。
それは人の頭部付近。
眼鏡だ!
この船で眼鏡をかけている人となると・・・エーコさん!?
無意識に手が震え始める。
額に嫌な感じの汗が滲む。
呼吸が荒くなるのを感じているが自分ではどうしようもない。
「エ、エーコさん?!」
それはほぼ確信に近かった。
「そーですよー、電卓さーん。」
やはりエーコさんだ!
「ど、どうしたんですかこんな時間に・・・」
声が微妙に震えている。気づかれないようにゆっくりと鼻で深呼吸をする。
「べつにー。電卓さんこそこんな時間にこんな所で何をしてるんですかー。」
声に抑揚のない、まるで感情を持ち合わせていない初期型AIのような話し方と声だ。
「ぼ、僕は・・・」
言いかけてハタと気が付く。
僕は一体なんでここに居るんだ?
ここはどこだ?
「そーですよねー。もう電卓さんみたいな『頭が良い人』なんて要らないのにねー。AIの方がずっと役立つのにねー。」
うっ!!
図星だった!
記憶力でも組み合わせ理論でもAIに勝てる訳がないのに・・・
僕だって学生時代は優秀な方だったんだ!
それなのに、それなのに・・・
AIの台頭でいわゆる『ホワイトカラー』と呼ばれていた仲間が次々と失業した。
僕もいつまでここで働けるか・・・娘もまだ小さいし、家のローンだってこの先何十年も支払わなければいけないというのに・・・
もし今年生き残れても数年後には?
もし僕が失業したら・・・
「うっ、うっ、うっ・・・」
悔しくて悔しくて気が付けば嗚咽を漏らしていた。
「ほらー・・ほらー・・・ほらー・・・」
エーコさんが僕の胸ぐらを掴んで上半身を揺する。
徐々に胸が締め付けられるような息苦しさが増してゆく。
耐え切れず彼女の手首を掴んだ!!
「痛い!!パパ!!」
エーコさんの声が娘の声に変わった?
「パパ、パパ!」
ハッと目を覚ます。
僕に両手首を握られ、今にも泣きそうな怯えた表情の幼い娘が目の前に居た。
「あわわわっ!!」
慌てて娘の手を離す僕。
頬を涙が伝ったのか、モミアゲが濡れている。
娘は手を離されると一目散で妻の所へ泣きながら駆けて行った。
寝間着は寝汗でびっしょりだった。
もうこの半年、ずっと同じ夢を見ている気がした。
月曜日の朝だというのに身体はぐったりと疲れ切っていた。
『そうだよな・・。AIが人間の頭脳を完璧に超える日なんてすぐそこだよな・・・』




