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洗濯船ハイパー日誌  作者: 田子作
第1章 大いなるアホローチ(序章)
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見えない壁

イラスト付きのこの話はこちら↓

http://ideanomi.jp/index.php?%E8%A6%8B%E3%81%88%E3%81%AA%E3%81%84%E5%A3%81

・・・その日を境に僕の常識は一変した。


『見えているものが全てではない。見えないものを見る力こそが人の成せる技だ。』


初めての『酒宴をこよなく愉しむ会』の時、何かの話の流れで船長に言われた言葉だった。


正直言って、この一言でこの船に乗船すると決断したといっても過言ではなかった。


しかし、その言葉の意味は僕が想像していたのとはちょっと、いや、大きく違っていたようだった。



僕が乗船して過ごしたこの4ヶ月、この大型クルーザー級の船には船員部屋は僕の記憶が正しければ全部で6つだった。


そして今、左耳の耳たぶに小型の『ニナール理論制御装置』をつけた僕には数十という数の部屋の扉が長い長い中央通路の両側に見える。


その通路の向こうから、左右の扉を忙しそうに飛び交いながら部屋の片付けをこなしてやって来るのは『支配人 笹川さん』だ。


ぼんやりとその場に突っ立っていると、気が付けば僕のすぐソバの部屋まで来ていた。


「ちょっとすいませんね、そこ邪魔だから。」


慌てて笹川さんに道を譲る。


慌ただしく僕の背後の部屋に飛び込んだかと思えば、神業のような速さで部屋の片付けとベッドメーキングを済ませて出てきた。


「( ´Д`)=3 フゥ」


流石に疲れたのか立ち止まって腰に手をやり背筋を伸ばす。


「流石にこの歳でのご奉公は厳しいなあ。本来こういった仕事はバトラーかロビーボーイの役割なんだよな。僕の場合、最低でもコンシェルジュか支配人待遇が当たり前なんだけどなぁ。ま、人が足りないんだから仕方がないか。」


首筋に汗がキラリと光る。


手にモーニングコーヒーが入ったマグカップを持って、そんな彼を見るとはなしに見ていたら、不意に笹川さんと視線が会った。


「流石にこの歳でのご奉公は厳しいなあ。本来こういった仕事はバトラーかロビーボーイの役割なんだよな。僕の場合、最低でもコンシェルジュか支配人待遇が当たり前なんだけどなぁ。ま、人が足りないんだから仕方がないか。」


「ん?デジャビュ?」


さっきも同じ光景とセリフを聞いた気がする?

更にもう一度笹川さんと目が合う。

やはり既視感デジャビュだ!!


「あのさ、君ねえ、目上の人間がこれくらい言ったら、『あ、僕、手伝いますよ!!』とか言うのが礼儀じゃないのかなあ?」


ややキレ気味の笹川さん。

どうやらデジャビュではなく、イヤミだったようだ。


「あ、すみません。気がつかなくて!」


マグカップのコーヒーを一気に飲み干し自分の部屋のベッド脇のテーブルに置いて笹川さんのいるところへ戻った。


「何から手伝えば良いですか?」


とりあえずここは情報が必要だと考えた。

笹川さんに気に入られれば、この船でのあらゆることを知ることができそうだし。


「あ、それから、断っておくけど、僕の仕事以外の質問は一切お断りだから。」


完全に心を見透かされていたようだ。

当てが外れモチベーションが下がった。


「あらら?いいんですか?そんな態度で。」


何か意味ありげな口調。


「あ、すいません。ちゃんとやります!で、何から?」


仕方がない。ここは言う事を聞いて油断させよう。

いつかきっと何かを語るだろうし。


「あ、僕ね、というかこの業界ではね、『客の秘密は墓場まで』てのが常識なの。いつか口を割るだろうなんかは考えない方が良いですよ。」


『~~~~~~~!!』


完全に読まれている!


「でも「船長」は「客」なんですよね!?それって喋っても良かったんですか?」


どうだ、この切り返し!


「まず『船長は船長以外の何者でもない』し、『例え話』も理解できないほど君が未熟者だという事は、この船の者はみんな知っています。」


毅然とした表情でアッサリ切り返されてしまった。


「下らないお喋りを続けますか?手伝いますか?」


言葉は丁寧だが、断れない迫力に押された。


「・・・はい、手伝います・・・。」


どうにも僕は言葉が苦手なようだ。

そればかりか彼と僕の間には圧倒的な何か、そう、『見えない壁』があるようだった。


無言で彼から白い手ぬぐいを渡され、後を付いていくことになった。

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