朝礼(台本改変版)
・生徒
A…男/静岩河佐(しずいわかわさ)
B…男/紗河洋介(さかわようすけ)
C…女/佐谷沙耶(さやさや)
・先生
D…男/河嶋藤二(かわしまとうじ)
・不良
Z…男/不良
B「おはよっ」
教室の中に、大声で響き渡る。
A「いつもどおり、大きな声だな。元気なことはいいことだ|(笑)」
一番の友人であるBは、Aが教室に入ってくるとすぐに同じぐらいの大きな声で返した。
C「おい、お前らうるさいぞ」
A「何をいってるんだよ」
B「そうだ、そうだ。何を言ってるんだ。元気じゃないと疲れるだろう」
C「お前たちのほうが疲れるだろう。いつもいつも元気でさ」
A「元気じゃないとさ、俺は死んでしまうんだっ」
C「お前は何を言ってるんだ。元気すぎても問題だろう」
チャイムの音が、その会話を引き裂く。
A「おっといけねえ。もうこんな時間か」
C「話しすぎるのも問題だろ」
B「先生が来るぜ、座っておかねえとな」
A「何だとっ。貴様ら、それでも漢かっ!」
C「私は女だけど…」
A「問答無用っ。何も恐れることはないっ」
ガラガラと教室のドアが開く。
D「はい、A君、廊下に立ってなさい」
A「先生、そりゃないっすよ」
Aの額にチョークが突き刺さる。
Aは、そのままのポーズで倒れた。
D「廊下に立ってろって、いってるだろっ」
A「ご、ごめんなさい」
教室から外に出る音。
D「じゃあ、今日のことを言っておくわね」
プリントを配る音と教室の静かなざわめきが、聞こえてきた。
チャイムと同時に、Aは教室に帰ってきた。
A「よっしゃー、俺は戻ってきたぜっ」
頭をはたかれる音とともに、再び顔面から倒れこむ。
D「やかましいっ」
それからAは先生Dによって引きずられていった。
D「まったく、A訓は元気なところだけが取り柄ですね。ほかの方向にはまったく興味がないみたいなのに」
ため息混じりに、職員室で反省文を書かせる日々が、また今日も始まった。
教室で、授業の準備をしているCとBは、Aの昔を知っているBからいろいろ聞いていた。
C「やれやれ、あの馬鹿は、どこまで馬鹿なのやら」
B「あいつはあんなやつさ。昔からな」
C「そういえば、Bはいつ知り合ったの。あの元気馬鹿と」
B「馬鹿馬鹿というもんじゃないよ。そうだな…」
〜回想〜
ちょっとした路地裏、薄暗いところで3人組にちいさな男の子が襲われていた。
B|(子供)「ちょ、返せよ。俺のカード!」
Z「はぁ?何いってるんだよ、このガキは。おい、もう行こーぜ」
B|(高校生)「3人ぐらいだったかな。近所で有名だった不良集団に、はやっていたカードゲームのカードを全部巻き上げられてな」
A「待てよっ」
B|(高校生)「そんなときだったよ。あいつが現れたのは」
Z「お前は誰だよ」
A「子供から巻き上げるなんて言語道断っ。正義の鉄槌、受けてみろ!」
B|(高校生)「とか何とか言いながら、その不良に立ち向かったんだ」
Z「ガキの相手してるほど暇じゃないんだがな」
やれやれとした感じで、一発みぞおちに殴る。
B|(高校生)「その不良は続けて殴ろうとしたんだが、1mぐらいとんだAを見て、満足げにうなづくと、そのままどっかへ歩いていったんだ」
B|(高校生)「その後、うんうんうなっていたように聞こえるAのところへ駆け寄ると、Aは笑ってたんだ。ガッツがあるやつは好きだ、とか言ってたよ」
〜回想終了〜
C「で、そのカードはどうなったの」
B「後々になって聞いたんだが、どこかに売り飛ばしたらしいんだ。それで、俺の手元には何も残らなかった。まあ、それがAと初めてであったときだな」
C「なんだ、みせてもらおうと思ったのに」
B「俺がし始めたことには、流行中とはいえ、もう最後の方になってたからな。いつ終わっても不思議じゃなかったんだよ」
ガラガラと教室のドアがあき、頭を抱えたままのAが入ってきた。
B「おう、やっと帰ってきたか」
A「あてて、あんなにきつくしなくてもいいのにな」
C「反省なんかしてなさそうに見えるわね」
A「何を言うっ、我が辞書に反省の字などないっ」
C「はいはい、分かった分かった」
B「お前がいない間に、もうすぐ授業なんだ。さっさと準備しとけよ」
A「大丈夫、すでに準備済んでいる」
C「準備って、ノート一冊しか見えないんだけど…」
A「俺のノートは複合型だっ、何があっても完璧に対処できる!」
Bはすでに諦めたように溜息をつき、Cは呆れながら言った。
C「そうですか」
ちょうどCが言うと同時に、チャイムが鳴り、廊下を先生の足音が聞こえてきた。
B「あ、やべ」
C「そうよ、一緒に怒られるのは嫌だからね」
A「何を言うかっ、何事にも、元気があれば大丈夫だっ」
そういって入ってきたのは、担任だった。
D「またお前か」
そう言って、また騒がしい一日が始まった。