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第6話 ホットドッグを狙うのは、森の「ワンコ」だった件

「――グルァァッ!!」


 銀色の毛並みを逆立てた巨大な影が、里の広場へと着地した。

 人狼ワーウルフ。エルフの戦士たちが即座に弓を番え、祝祭の空気は一瞬で氷結する。

 だが、その中心で、俺――御子柴亮みこしば・りょうは、一人鍋を火にかけていた。


「な、何を……! 執行者、早く逃げて! そいつは森の暴君よ!」


 エルナの叫びを背に、俺は里の貯蔵庫から出してもらったばかりの『新鮮な牛乳』の桶を覗き込む。


「……待て。今、いいところなんだ。乳酸菌の代わりに『息吹の精霊』たちを馴染ませる工程が、一番繊細なんだよ」


 俺は指先から微弱な魔力を放出し、牛乳の中に漂う微細精霊たちを活性化させた。

 本来なら数時間かかる凝固。だが俺の『精密魔力操作』は、精霊たちに直接「働きかけ」、瞬時に乳カード(固形分)を分離させていく。少し堅めのババロアぐらいの弾力だ。


「……グルルッ?」


 飛びかかろうとしていた人狼が、ピタリと動きを止めた。

 そいつの鼻は、俺の鍋から漂う「濃厚な乳の香り」に、エルナ以上の高速で痙攣を始めている。


 俺は分離したカードを細かく砕き、それを重ね、圧をかけ、さらに魔力で水分を飛ばす「チェダリング」を高速で実行した。仕上げは、本来数ヶ月かかる熟成だ。


「……サーバーの時間を進める(タイムアクセラレート)よりは楽だな。ここにソルトシードを加えつつ魔力で分子を振動させて、一気に熟成を深めるっ!」


 俺が鍋の中で魔力を爆発させると、そこには特有の濃厚なコクと酸味を持つ、見事な『自家製チェダーチーズ』もどきが完成していた。


 俺はそれを手早くナイフで刻み、バターと小麦粉で作ったルーに放り込む。

 溶け出す黄金の液体。俺はそれを、焼き立てのホットドッグ……羊肉のミートソースがたっぷりかかったそれの上に、滝のようにとろ~~りとかけた。


「……お待たせ。チーズソースのダブルトッピング、ホットドッグだ」


 俺がそれを差し出すと、人狼はもはや「威嚇」を忘れていた。

 爛々と輝く金色の瞳は、黄金のチーズソースに釘付けだ。ダラダラと垂れる涎が地面に水溜りを作っている。


「食うか? 特製チーズソースがけだ。小麦粉を混ぜてあるから、冷めてもずっとクリーミーだぞ」


「……ウワオォォォォォン!!……(人間、それを……それを寄越せぇぇ!)」


 人狼は言葉にならない声を上げると、巨大な手(前足)で器用にホットドッグをひったくり、巨大な顎で一気に丸呑みにした。


 パキィィィィッ!!


 ジュワァァァァ!!


 静寂の森に、今日一番の「快音」が響き渡る。

 弾けるソーセージ、濃厚なミートソース、そして口内を支配する熱々でクリーミーなチェダーチーズと肉汁の奔流。


「……ガハッ、……う、うまい……! なんだこれは、この『黄金の泥』は……っ! 私が今まで食べてきた獲物とは違いすぎる……!」


 巨大な人狼が、その場にヘナヘナと座り込んだ。

 尻尾が。

 さっきまで威嚇するように逆立っていた銀色の尻尾が、まるで扇風機のように激しく左右に振られ、背後の巨木をなぎ倒さんばかりの勢いでブンブンと鳴り響いた。


「(……チョロすぎるだろ、この駄犬)」


 俺は溜息をつき、二本目のソーセージを焼き始めた。

 どうやら食いしん坊な隣人に加え、今度は「銀色の忠(駄)犬」が加わることになりそうだ。



※チェダーチーズって手作りできるのを今回初めて知りました


 手作りチェダーチーズは、新鮮な牛乳に乳酸菌とレンネット(凝固剤)を加え、カード(固形分)を細かく砕き、加熱・攪拌カッティング後に水分を抜く「チェダリング」工程を経ることで、特有の濃厚なコクと爽やかな酸味を持つハードチーズが完成するようです。


★手作りチェダーチーズの基本工程

 加熱と凝固: 牛乳にスターター(乳酸菌)を加え、塩化カルシウムを加え、レンネットを入れて30分程 

 度静置して固める。


 カッティング: 固まったカードを1cm角程度に切り、ホエイ(乳清)を排出させる。


 調理・撹拌: 温度を35℃位に保ちながら1時間ほど攪拌かくはんし、さらに水分を抜く。


 チェダリング: 塊になったカードを折りたたみ、積み重ね、反転を繰り返してさらに水分を抜く。


 加塩・型詰め: カードを細かく砕き、塩を混ぜて型に詰め、圧力をかけて(プレス)約12時間ほど脱水する。


 熟成: 型から取り出し、10℃前後の環境で3〜6ヶ月ほど熟成させる。

※より手軽な方法として、レモン汁で分離させ、水気を絞り、重石をして固める方法もあるそうです。

書けば書くほど食欲が、、、ダイエット出来んのかなホント、、、


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