Case08「虚像の街角」
翌日もニュースは同じ映像を流し続けていた。
彼女は“加害者”。悠斗の証言は切り捨てられ、ネットでは「虚言」とまで言われている。
「……僕、余計なことをしたんですか」
悠斗はスマホを握りしめ、画面を伏せた。誹謗中傷の通知が止まらない。
「いや。お前の言葉がなければ何も動けなかった」
そう言ったものの、胸のざわつきは消えなかった。
「現場を確かめるぞ」
告城さんが短く告げた。
第七街区のアーケードは、祭りの後で静まり返っていた。
「ここで彼女を見ました」
悠斗が指差す。
その瞬間、背後に影。街灯の死角で傘を差した男がこちらを見ていた。
「……つけられてたな」告城さんの声。影は走り出した。
「待て!」
俺と悠斗も駆け出す。
細い路地に飛び込んだ途端、黒いスーツの男たちに囲まれた。
「目撃者を確保しろ」
無線の声が耳に刺さる。悠斗の腕を掴む手――。
「やめろ!」
必死に体当たりしたが、逆に弾き飛ばされる。息が詰まる。
だが、男が一人崩れ落ちた。
告城さんが鋭い動きで蹴り飛ばしていた。
「走れ!」
俺たちは路地を抜け出す。背後で閃光が弾け、影が煙のように消えていった。
残された無線機から、雑音混じりの声が流れていた。
『対象、第七街区に確認。削除を急げ』
悠斗が震える声で言う。
「やっぱり……彼女は追われてたんだ」
胸の奥で、あの“助けて”が再び鳴り響いた。
真実を切り捨てるやつらがいるなら――暴くしかない。