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嘘が正義の世界で、“真実”を叫ぶ明証師  作者: 真野はるえい
第3章:嘘と真実の狭間で
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Case07「切り取られた証言」

 「どういうことだ?」

 問いかけると、少年は一度ためらい、震える声で名を告げた。


「……高瀬悠斗。僕、彼女を見ました。テレビが言ってるような“加害者”じゃなくて、怯えて助けを求めるただの人でした」


 名倉マスターが温かいココアを差し出す。

「落ち着いて。順番に話してごらん」


 カップを両手で抱えながら、悠斗はゆっくりと言葉を継いだ。

「今夜、第七街区のアーケードで……彼女は電話していました。“助けて”って。泣きそうで……。その後、交番の方へ早足で歩いていったんです」


 胸がざわつく。報道では完全に無視されていた事実だ。

「証拠は?」と告城さんが低く問う。


 少年はおそるおそるスマホを取り出した。

 画面に映っていたのは、濡れた路面と提灯の赤。その奥でトートバッグを抱えた女性が振り返っている。背後には、傘を差した黒い影が小さく写り込んでいた。


「撮った直後に速報が流れて……“加害者逮捕”って。怖くて、交番に相談しました。でも“軽々しく言うな”って取り合ってもらえなくて」


 告城さんは目を細め、低く呟く。

「インタビューでお前の証言が消されていた理由が、これか」


 悠斗は拳を握りしめた。

「だから信じてほしいんです。彼女は悪くない」


 その言葉に、胸の奥で再びあの“助けて”がよみがえる。

 俺は思わず拳を握りしめていた。


——切り取られたのは、彼女の声か。それとも、真実そのものか。

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