闇に差す灯火
四つ目の女を倒し、猟犬と共に地下の腐敗した空洞を後にした。遼はまだ、かろうじて生きている。だがその命は脆く、管に繋がれた彼の体は見るからに危険な状態だった。
「これ以上ここにいては危険すぎる。早く連れ帰るんだ。」
猟犬の声は硬く、しかしどこか焦りも含んでいた。俺は頷き、遼を抱き上げて暗闇の中を這うように這い戻った。街の闇は濃く、いつ襲われてもおかしくない。
アジトに戻ると、そこは薄暗い地下室だった。錆びた鉄の扉が閉ざされ、冷たい空気が流れている。猟犬はすぐさま手当ての準備を始めた。
「どうやって彼を救う?まだ何もわからない。どんな薬も、どんな魔術も効果は薄い。」
俺は遼の小さな胸に耳を当てた。微かに響く鼓動が、まだ希望を示しているように思えた。
「何か手掛かりは?」
猟犬は唇を噛んだまま沈黙する。やがて低く呟いた。
「彼を救う方法は、この街の外にあるかもしれない。けれど外へ出ることは、許されない。闇の掟がそれを阻む。」
俺は考え込む。何度死んでも蘇る自分の体。その代償は計り知れないが、今はそれを使うしかない。もし俺の命の力が遼の命を繋いでいるのなら、もっと何かできるはずだ。
「俺の不死の秘密を解き明かさないと、彼は助からないのかもしれない。」
猟犬が冷たい瞳で言う。
「時間がない。敵もまだ動いている。奴らは必ず、遼を奪いに来る。」
不気味な静寂を破るように、アジトの扉が揺れた。
「来たか……」
俺は刃を握り締め、猟犬と共に身構えた。命を賭けて守るべき少年が、今もこの闇の街で喘いでいる。
「まだ秘密は明かさない。」
俺は自分に誓った。遼の命が繋がっている限り、何度でも死に、蘇り続ける覚悟を。