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魔鋼のレライエ 中編

放浪変その12

 人造人間に次々と悪魔が憑依し、その数、千体の魔王軍が誕生しつつあった。そして、レライエとアリエスの因縁の対決が始まる

 工業都市アルステイツは混乱を極めていた。人間に従順な人造人間ホムンクルスたちが悪魔の憑依を受けて、魔族として生まれ変わり、魔王軍を結成して人間に反旗を翻したのだ。

 アルステイツにいる人造人間の数はおよそ千体。それが全て悪魔の憑依を受けたら、魔王軍が完成する。

 マヤ・カリバーとユキマル、ビャクヤの三人は急いでギルド支部に駆けつけた。支部のビルの周りではすでに戦闘が行われていた。入り口辺りで戦っていたパーティーは突然、人造人間たちが斬り捨てられ、魔法攻撃で吹っ飛ばされるのを目撃することになった。

「おお、勇者パーティーの皆さん!助かりました!」

「しばらく、踏ん張っててくれ!我々は支部長と前後策を話し合ってくる!」

 ギルド支部の中に入ったマヤたちは、意外な人物と遭遇することになる。

「やー、これはこれは。初めまして、勇者パーティーの皆さん!」

 特徴的な先の尖った耳を持つ、少女のエルフと疲れた様子の若者がいた。

「エルフの魔法使い!?何故こんなところに?」

「ふふふ、あなた方と会えるのを楽しみにしてたよ。カリバーさん、ユキマルさん、ビャクヤさん」

「アンドレア殿に聞いたことがある!魔法を極めて旅に出た一癖あるエルフの魔法使い、アリエスの名を!」

 ビャクヤは仰天して思わず杖を構えた。

「おいおい、ビャクヤさん。ボクは敵ではないよ。この街で起こる悪魔たちの一斉受肉を予知し、貴族や冒険者たちに対策を取らせていたのはボクなんだから」

「しかし、街一番の錬金術師が殺されたぞ。あれは・・・」

「姉上、僕たちが会ってたのは人造人間のモーガンです。何か違和感を感じていたんだ!」

「そう。全く師匠は食えないお方だ。悪魔の一斉受肉を聞いて、自分の人造人間にちゃっかり身代わりをさせていたんだからね」

 アリエスの隣に立つ若者が肩を竦めて見せた。

「君がモーガンの弟子のケインか?」

 マヤの問いにケインはゆっくり首肯した。

「師匠も人が悪いんだよな。予め話してくれてたら・・・」

「その場合、君はあくまで錬金術師の肩書きに拘っただろう。しかし、君に必要なのは魔法の知識と実戦だ」

 ケインは深くため息をつくと、崩れるように椅子に座った。

「ええ、こうなったら魔法を使わざるを得ませんからね」

「しかし、アリエス殿。アンドレア殿も手を焼いた自由人のあなたが、何故今回は積極的に関わっている?」

「ここにいるケインはボクの弟子なんだけど、魔法の修行を嫌がってね。それで錬金術師に弟子入りした、変わり者なんだ」

「あなたにだけは、変わり者なんて言われたくないですよ、先生」

「手厳しいなあ。ボクはただ、千年前の因縁に決着をつけたいだけだよ」

「失礼、因縁というのは?」

 マヤは思わず口を挟んだ。

「レライエだよ。ボクはある方法で魔界の様子を監視してるんだけど、レライエが今回の魔王軍結成の任に就いたのを察知して、魔法使いの教師としてアルステイツに潜入してたのさ」

 そこで、一瞬だけ顔を歪めたアリエスは、それまでの飄々とした態度を消し、真顔になった。

「千年戦争の時、レライエを討伐したのはボクだ。最も、やつは魔界に戻るためにわざとボクにやられた風を装ったんだ。それが今でも心残りでね。で、今回レライエがまた受肉する兆しがあったから、急いでアルステイツにやって来たんだ」

「レライエをまた倒すためにか?」

 マヤの問いにアリエスは口許に笑みを浮かべた。

「そう。全くの私怨さ。今度は受肉した身体だけじゃなく、精神生命体も滅ぼしてやる」

 アリエスから殺気を感じたのは一瞬で、また、皮肉な笑みを浮かべて杖を振り回した。

「まあ、今回はガルド侯爵とギルドから依頼を受けた仕事だからね。弟子のケインに実戦も経験させたいし」

「しかし、アリエス殿。レライエを討伐するのは我々だ。既に一度戦闘になったしな」

 ユキマルが珍しく挑発的に言ってのける。

「でも、逃げられたんだろう?あいつは確かに手強いが、それ以上に用心深い。直ぐに部隊を編成して報復リベンジしてくるぞ」

 笑みを湛えたままアリエスが楽しげにのたまう。刀の柄に手を置くユキマルを制止したのはマヤだった。

「結束しよう!敵は千年戦争で殺人機械キリングマシーンと呼ばれた、悪の英雄だ。オマケに千体もの魔王軍を従えてる。ここにいる冒険者全員で事に当たったほうが良い」

「ふむ。君たちは冒険者だから、そうするが良いさ。でも、ボクは旅をしているエルフの魔法使いさ。自分のやり方でやらせてもらうよ」

 刀の柄に手を置いたユキマルが一歩踏み出した時には、アリエスの杖が喉元に突き付けられていた。

「剣でも魔法でも大事なのは速さだ。ボクは一瞬でここにいる全員を屠ることが出来る」

「さて、それはどうかな?」

 ユキマルは腰を落とし、抜刀術の準備に入る。だが、そこでマヤが止めに入った。

「止めろ、ユキマル。アリエス殿もだ。今、やらなきゃいけないのは、レライエと千体の魔王軍の討伐だ」

 いつの間にか抜かれていた二本の刀は、アリエスとユキマルの喉元に突き付けられていた。

「・・・流石は煙幕のカリバー。全く見えなかったよ」

 口許に笑みを刻んだまま、アリエスはゆっくりと杖を引っ込めた。

「とにかく、貴族たちやギルドに対策をさせていたのはボクだ。これ以上、協力する義理はない。ケインを連れてレライエの討伐に向かう。まさか反対はしないだろうね?」

「貴殿がそうしたいなら勝手にすれば良い。我々はあくまで冒険者として今回の件の収拾に動く」

「うん、そうしてくれ。それにしても、人間がそこまで強くなれるとはな。カリバーさん。あなたは全く規格外だ」

 アリエスは杖を床に向けて魔方陣を出現させた。

「それでは、生きていたらまた会おう!」

 ケインも無言で魔方陣の中に入り、光が弾けると二人の姿は消えていた。

「それにしても、こうも積極的に人間社会に関わるとは。あのエルフこそ規格外ですな、姫様」

 ユキマルの頭に拳骨が落ちる。

「姫と呼ぶな!では、スタイン支部長。冒険者たちを効率的に各地区へ派遣しよう」

「そ、そうですね!何しろ敵の数が多い。市庁舎の警備兵や衛兵の働きで貴族たちの安全は守られてますが」

 ビャクヤは空中にアルステイツの地図を開き、貴族たちの住む市庁舎周辺を探った。沢山の赤い丸が蠢いているが、その中に緑の光があった。

「レライエはここにいます。市長を押さえるためですかね?」

「よし、今この場にいるみんなは付いてきてくれ。市庁舎に向かうぞ!」

 ギルド支部の中に残っていた、二十人ほどの冒険者と共に、マヤたちは行動を起こした。


 その半刻前。アルステイツの商店街にある読書カフェのカウンターに、マントと帽子で正体を隠したレライエの姿があった。

「人造人間に悪魔を受肉させる計画は着々と進行中だ」

「あらまあ。それでは魔王軍結成は時間の問題ですわね」

「しかし、そう簡単には行きそうもない。あの勇者パーティーは思った以上の強敵だ」

「あらあら。レライエさんがそんなことを仰るのは珍しいですわね」

「千年戦争の間でも、あれだけの手練れとは会ったことがない。とんだ伏兵がいたものだ」

「それにこの気配。明らかにエルフですわ。エルフは人間社会に積極的に関わらないはずですのに」

「ふん、あいつだな。千年戦争の時に俺の依代を破壊したエルフ。確かアリエスと言ったか」

「ああ、あの旅好きのエルフですね。まさか、あの方がレライエさんを倒したとは意外ですね」

「実力は確かだ。だが、あの時は千年戦争も終わりを迎えそうな時だった。だから、俺はあえてやられてやったんだ。やつめ、あの時のことを根に持っているようだな」

「でも、エルフならばかなり手強かったのでは?」

「ああ、だがあの頃には主だった幹部には撤退命令が出ていた。俺はそれに従ったまでだ。それをやつめ、未だに根にもってるとはな」

 生体金属で出来た顔が、苦笑の表情になる。

「だが、今回は魔王軍を率いての全面戦争だ。アリエスのやつと徹底的に戦ってやる。この新しい身体がどこまでやれるか試したいしな」

「気をつけてくださいね、レライエさん。今回は勇者パーティーも戦いに参加しているのですから」

「ああ、少しだけ戦ったが強敵なのは確かだ。だが、まだこの身体のポテンシャルは未知数だ。勇者パーティーもアリエスも、まとめて屠ってやる!」

 レライエは立ち上がり、ミルファに背を向けた。

「レライエさん、ご武運を」

「ふふふ、軽く皆殺しにしてくるさ」

 レライエの姿が空間転移で消え失せた。

「本当にそうなると良いんですがねー」

「おやおや、カリバー贔屓だったんじゃないのかい、ミルファ?」

 カウンターに寝そべる黒猫のジルがあくび混じりにそう皮肉る。

「ええ、カリバーさんは推しですが、千年戦争の英雄はまだ本気を出してませんからね」

「どちらにしても、今回は大がかりな戦いになる。そうなると人間よりも魔族が有利だ。食事もせず、不眠不休で戦闘を行うことが出来るからね」

「まあまあ、そうですわね。でも、カリバーさんが出てくると戦闘が早く終結することが多いですわ。それこそが勇者パーティーのアドバンテージですからね」

「やれやれ、またカリバー贔屓が出てきたね」

「おっと、ルキフェル様に聞かれたら一大事ですわ」

 ミルファは口許を隠し、悪戯な表情で笑いを漏らした。


 マヤたちが市庁舎付近に到着するまで、人造人間たちの各チームが連携して襲いかかってきた。身体能力が人間よりも高い人造人間だが、魔族を相手に戦ってきた冒険者たちには通じない。数で有利な人造人間たちを、魔法と剣で戦略を持って倒してゆく。

 市庁舎の周りを衛兵が陣を敷いて固めており、人造人間の魔王軍を押し返していた。

「よし、周りを取り囲んでいる人造人間を片付けてゆくぞ!」

 マヤが刀を抜き、冒険者たちを率いて斬り込んでゆく。突然現れた伏兵に魔王軍の統率が乱れる。

百花爆裂ひゃっかばくれつ!」

 マヤとユキマルの、一太刀が百の斬撃になる広範囲奥義で、市庁舎を取り囲んでいた魔王軍たちは数を減らしてゆく。

「ビャクヤ!レライエはどこにいる?」

「魔力を探りましたが、レライエといくつかの人造人間が、内部に入り込んでいます!恐らく空間転移を使ったのでしょう」

「よし、それでは我々もこの人海戦術を突破して・・・うん?」

 マヤは突然、強大な魔力を感じて空を見た。そこには巨大な翼をはためかせたゲルデルンというドラゴンの姿があった。

「炎と毒を吐き出す邪竜だ!レライエとはかなり高位な魔族のようだな!ゲルデルンは中位のドラゴンで手懐けるなんて至難の業に近い!」

「ビャクヤ様!マヤ様と私に空中歩行の魔法を!」

「オーケー!エアウォーキン!」

 ビャクヤが杖を振るとマヤとユキマルのブーツが光輝いた。二人は見えない階段を駆け上がって宙を進む。

 ゲルデルンは大口を開け、毒液を吐いた。

「裏奥義、明鏡反水めいきょうはんすい!」

 二人は闘気を解放し、結界を作って毒液の直撃を避けた。だが、毒液は地上に向かって滴り落ちる。

「みんな、結界を張れ!触れるだけで死に至る猛毒だ!」

 マヤは地上の冒険者たちに警告する。そして魔法使いたちが結界を張って難を逃れたが、人造人間たちは毒液に触れて次々に倒れた。

「人造人間といえど、毒液には耐えられなかったか」

「マヤ様!あのドラゴンは私が倒します!」

 ユキマルの刀が白い光を放ち始めた。このまま打ち込めば広範囲攻撃の万花爆砕ばんかばくさいになるが、市庁舎の建物を破壊するわけにいかないので、エネルギーを凝集して、一体に向けて集中して打ち出す。

一輪殲滅いちりんせんめつ!」

 ユキマルの打ち出したエネルギーと、ゲルデルンの炎のブレス攻撃が激突する。流石に中位ドラゴンのゲルデルンのブレスは強力で、ユキマルの打ち出したエネルギーを散らしてしまった。

「まさか!超究極奥義が破られました!マヤ様!」

「リンドブルムほどではないが、やはりドラゴンは最強生物だな。ユキマル、もう一発打ち込めるか?」

「そうですね、後一発が限界ですが」

「よし、注意がお前に集中してる隙に私が一輪殲滅でゲルデルンを不意打ちする。いけるか?」

「確かに、その手しかなさそうですな」

 ユキマルは刀を握り直し、ゲルデルンの毒液攻撃を、闘気のエネルギーで防ぐ。その隙にマヤは身体を煙幕状にして、ゲルデルンの下を漂って背後に向かう。

「よーし!ゲルデルン!もう一度勝負だ!」

 ユキマルの刀が白い光を放ち始め、ゲルデルンはブレス攻撃の体勢に入る。次で勝負が決まる。


「お前の顔は二度と見たくはなかったんだがな」

 貴族たちの屋敷も多い市庁舎街で、金属人間となったレライエとエルフのアリエスが対峙していた。

「そっちは随分とイメチェンを図ったね。金属人間になった気分はどうだい?」

 杖を構えたアリエスとレライエは睨み合い、一触即発の状態だった。そこで人造人間の何人かが動きを見せたが、

「ドライド!」

 四十センチほどの杖を構えたケインが、攻撃魔法で吹き飛ばした。

「良いね、ケイン!その調子で露払いを頼むよ」

 エルフのアリエスは杖を僅かに動かし、

「ジャルバローダ!」

 いきなり最強攻撃魔法を繰り出した。杖の先に積層魔方陣が展開し、太さ一メートルの光のエネルギーが打ち出される。レライエは結界を張りその攻撃を防ぐ。

「今度はこっちの番だ!」

 レライエは腰を落とすと、地面に向かって金属の腕を振り下ろした。地面に亀裂が入り、巨大な岩盤が持ち上がってアリエスとケインの身体が、空中に投げ出された。

「やれやれ、とんでもない馬鹿力だね」

 空中にいるアリエスたちに向けて、レライエは地を蹴って飛んだ。そして上腕から銃身を伸ばし、鉄の弾丸を撃ちまくる。

「ヴァルサイド!」

 アリエスは最強結界を張って銃弾を弾き返す。レライエは効果無しと判断すると、腹の部分を開いて高出力のエネルギーを発射した。流石の最強結界もヒビが入り、突撃してきたレライエは魔鋼鉄の拳の連打を結界に打ち込む。そうして最強結界も粉々に砕けた。

「相変わらずあっさりと常識を覆すね」

 アリエスは杖を構え直した。そこにサラの身体を乗っ取ったアールが突撃してくるも、

「ドライド!」

 ケインが杖を向けて攻撃魔法を放つ。それを空中で器用にかわしたアールは、地面に降り立つ。

「ははは、小僧!好意を持ってたこの身体に攻撃するのか?」

 顔も声もサラのままなので、ケインは一瞬怯んだ。その隙を逃さず、アールは魔力弾を撃ち出す。だが、それはアリエスの張った結界で無効化される。

「何をやってるの!?そいつはもう君の知ってるサラじゃない!躊躇うと殺されるよ!」

 アリエスは珍しく怒気の孕んだ声を上げた。

「やれやれ。分かってますよ、先生!」

 ケインは腹を括り、拡散攻撃魔法を放った。

「ドライドルーバ!」

 四方八方から飛んでくるエネルギー波をかわせず、アールは半身を吹き飛ばされた。

「おやすみ、サラ」

 ケインは一瞬だけ悲しげな表情を浮かべ、

「ドライド!」

 トドメの攻撃魔法を打ち込んだ。サラの身体は四散して消え去った。

「よし、良くやった。後は・・・うおっ!」

 音速で移動してきたレライエは両腕の拳の雨を降らす。

「キルドレッドフィスト!」 

 咄嗟に張った最強結界にヒビが入ってゆく。宙に飛んだアリエスは最強攻撃を打ち込む。

「ジャルバローダ!」

 上から降り注ぐ最強攻撃も、

「ゼロクルス!」

 魔族の最強結界で防がれた。

「やれやれ、参ったね。新しい身体は余程相性が良いらしい。ボクの最強攻撃をあっさり受け止めた」

「先生、それは俺が魔鋼鉄に魔法を掛けて作ったからです。頑丈さにかけては他に引けを取りません!」

 ケインはこんな事態になるとは思ってなかったのだろう。この世で最も壊しにくい身体を、レライエに与えることになった。

「君が気にすることじゃない。どちらにしても、レライエはボクが倒す!ドライドルーバ!」

 衛兵の守りを破って入り込んで来た人造人間を、アリエスはまとめて塵に帰す。

「悠長にお喋りしてる暇はないぞ!」

 レライエがまたもや音速で迫り、連続蹴りを繰り出す。

「キルドレッドフット!」

「ヴァルサイド!」

 最強結界にヒビが入ってゆく。格闘戦ならレライエは文字通り最強だろう。だが、アリエスはエルフでも、一、二を争う魔法使いだ。あくまでも自分のフィールドで戦う。

「仕方ない。千年ぶりに奥の手を出すか」

 アリエスの目が冷たく光り、杖の先に積層魔方陣が展開する。

「エンダローダ!」

 太さ二メートルに及ぶ光のエネルギーが打ち出された。

「むうっ、千年前に俺を倒した魔法か!?」

 レライエも余裕のない様子で、慌てて結界を張った。

「ゼロクルス!」

 結界を張り、さらにそこに魔力を注ぐ。エンダローダの直撃を食らい、結界にヒビが入る。

「やれやれ、正に宿敵だな、お前は!」

 レライエは結界を張ったまま、攻撃魔法の準備を整える。

「オーバージェノサイド!」

 両手を前に突きだし、最強攻撃魔法が打ち出された。結界を破壊したエネルギー波とレライエの攻撃魔法がぶつかり合い、大規模な爆発が生じた。

 両者、結界を張って爆発から逃れたが、実力は拮抗していた。

「攻撃力、防御力、共に同レベルか」

 宙に浮いたまま、アリエスが口許に笑みを刻む。

「先生!勝てるんですか?あんな化け物に!?」

「勝てるかどうかじゃなくて、勝つんだよ、ケイン。ラルカス殿とアンドレア殿なら勝てるだろうが、あのお二方は人間社会に関与したがらないから、今、レライエを倒してしまわないと、どれだけの被害が生まれるか分からない」

「ドライド!」

 衛兵の包囲網を掻い潜って侵入してくる人造人間を、ケインは攻撃魔法で屠った。

「よし、その調子で人造人間たちを倒すんだよ。正直、今のレライエを相手に必ず勝てる保証はない」

「不安になることは言いっこなしですよ。直に勇者パーティーもやって来るでしょうし」

「あの連中に獲物は譲る気はないよ」

 アリエスは杖を振り回し、対峙する金属人間を睨んだ。


「一輪殲滅!」

 ユキマルは白く輝く刀を振り下ろした。凝集されたエネルギー波が、ゲルデルンに向けて放たれた。邪竜も口を開け炎のブレスを吐き出した。

 煙幕状になって漂っていたマヤは実体に戻り、直ぐに闘気を解放する。そして、振り上げた刀が白く光り始めた。ユキマルとゲルデルンのエネルギー波がぶつかり合って、爆発が生じた隙に、マヤも超究極奥義を繰り出した。

「一輪殲滅!」

 隙だらけのゲルデルンの背中に、光のエネルギーが迫り、邪竜の心臓部に命中した。破壊のエネルギーは貫通せずにそのまま体内を焼き付くしてゆく。

「グギャアー!」

 断末魔の叫びを上げたゲルデルンは地面に向けて落下した。その亡き骸に冒険者たちは恐る恐る攻撃するが、ピクリとも動かない。勇者パーティーの勝利だった。

 冒険者たちは皆、勝鬨の声を上げ、人造人間との戦闘にも余裕が出てきた。

「みんなは魔王軍との戦闘に集中してくれ!我々は幹部のレライエ討伐に向かう!」

 ビャクヤの乗った絨毯に乗りながら、マヤは指示を出した。冒険者たちは口々に健闘を祈る旨の叫び声を上げた。

「よし、行こう!」

「了解です、姉上!」

 絨毯は市庁舎の内部へと入り込んだ。そこに、背中に翼を生やした人造人間たちが、行く手を阻むように陣形を組んでいる。

「そうだな。悪魔が憑依しているのだから、多少の魔法は使えるのか」

「お任せを!ドライドルーバ!」

 ビャクヤの拡散攻撃魔法が、空を飛ぶ人造人間たちを屠ってゆく。

「レライエはどこだ?それにアリエス殿は?」

「姉上、あそこです!」

 ビャクヤが杖で指し示した先に、高速で戦闘を繰り広げるアリエスとレライエの姿があった。

「むっ!?勇者パーティー!流石だな。ゲルデルンを倒したか」

 アリエスと距離を取ったレライエは強かな笑みを浮かべる。

「何をしに来た、カリバーさん?レライエはボクが倒すと言ったはずだよ?」

 アリエスは殺気のこもった声で問いかける。

「別に邪魔する気はない。貴殿が倒れたら私たちが後を引き継ごうと思ってるだけだ」

「私が負ける?そういう台詞は上級者のAレベルになってから言うんだね」

 アリエスの胸には金色の剣に二本の赤い線が入っていた。

「なるほど。では先達の戦いを見学して勉強することにしようか」

 マヤは絨毯の上で刀を鞘に納め、腰を下ろした。

「姫様!本当に勝ちを譲るのですか?」

 そう言ったユキマルの頭に拳骨が落ちる。

「姫と呼ぶな!千年前の魔族とエルフの戦いが再現されてるんだ。見逃す手はあるまい?」

 それを聞いて、ユキマルも刀を鞘に納めた。

「分かりました。そういうことなら」

 ユキマルも腰を下ろし、傍観者を決め込む。

「僕は良く観察して、アリエスの魔法を盗まなきゃ」

 ビャクヤも腰を下ろし、杖だけを前に突き出していた。

「見学ね。好きにすれば良いよ」

 アリエスは最早興味はないと、レライエに向き直った。

「ふふふ、良いのか、アリエス?勇者パーティーも加われば流石の俺でも手に余るのだがな」

 レライエが挑発するが、アリエスはどこ吹く風だ。

「千年前の決着をつけてやる!エンダローダ!」

 アリエスは最早出し惜しみせず、最初から究極魔法を繰り出した。

「ゼロクロス!」

 レライエは両手で結界を張り、攻撃を受け止めながら突進した。

「オーバージェノサイド!」

 レライエの両手の指先、上腕、腹部からエネルギー波が発射されアリエスの最強攻撃を跳ね返し、今度は自分が攻撃する番に回る。

 猛烈な波状攻撃も、

「ヴァルトレス!」

 最強を越えた究極結界で受け止める。両者の実力は拮抗しているように見える。

「エンダローダにヴァルトレスか。解析魔法で術式を割り出して使えるようにしないと!」

 魔導士のビャクヤはアリエスの魔法を盗むことに専念している。

「どう見る、ユキマル?」

「甲乙つけがたいですな。何か弱点でもあれば良いのですが」

「そういえば、ビャクヤ。金属性には火属性の魔法が有効だと言ってたな」

「あ、はい!今のように破壊に特化した魔法より、むしろ属性に即した魔法のほうが有利な気がします」

「うーん。邪魔するなと言われたが、我々は一刻も早い討伐を優先しなければいけない。ビャクヤ、試してくれないか?」

「でも、それってアリエス殿を怒らせるんじゃ・・・」

「私たちも遊びで冒険者をやってるわけじゃない。確実に倒せるなら、そのチャンスを逃すべきじゃない」

「・・・姉上が後でアリエス殿の苦情を引き取ってくれるなら、加勢するのもやぶさかじゃありませんが」

「ああ、苦情は私が受け持つ。ああやって実力が拮抗したままでは、やがてどちらかが魔力切れになるだろう」

「分かりました。レライエの背後に回りましょう」

 ビャクヤは怪しまれないよう、ゆっくりと絨毯を移動させてゆく。

 レライエとアリエスは、最早結界も張らず、攻撃に攻撃をぶつけて無効化している状態だ。

 そして、レライエの背後に回り込み、ビャクヤは杖を構える。

「炎熱魔法、ラピッドファイア!」

 二千度に達する高温のエネルギー波が発射された。

「むっ!?」

「おい!邪魔をするな!」

 魔力を関知したレライエとアリエスは反応する。そして、ビャクヤの炎熱魔法は全てを飲み込んだ。

放浪編その12でした。かつての千年戦争で戦った宿命の相手である、レライエとアリエスの戦いも佳境に入りました。勇者パーティーも魔王軍を討伐しながら指揮官であるレライエを捜索します。レライエとアリエスの因縁の戦い。マヤは事態の収拾を優先し、その戦いに割り込むが・・・?次回で決着がつきます。それではまたお会いしましょう


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