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戦闘力ゼロから始める曲がり曲がったVRMMO 。生産をしつつテイマーと弓の両立は欲張りすぎ……?  作者: kanaria
3章.VRMMOを遊びつくせ

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44.ドジョウのようなモンスター

 ビチビチと音を立てて水面を叩く細長い魚の口には釣り針が刺さっている。

 それが痛いのか、暴れるたびに釣竿が振り回される。これでは遠心力で更に釣り針が深く刺さりそうだ。


 私は予想だにしない状況に頬をかく。


「えーっと? 私が悪いのかな? いや、多分私のせいだよね」


 ただ【釣り】をしていただけなのにこんなハプニングに見舞われるとは思っていなかった。


 でも確かに魚目線で考えたら釣り人なんて害悪だろう。

 美味しいごはんを食べたと思ったら釣り針が刺さるのだ。恐怖でしかない。


「…………あの、良かったら外そうか?」


 釣ろうとしたのは間違いないけれど、魚をいじめるつもりは全くない。

 恐る恐る水面に近寄ると、ドジョウのような魚が涙目になりながら私を睨みつける。


「おお、凄い敵意を感じる」


 それでも自分ではどうすることもできないと思ったのか、悔しそうに唸りながら私に近づいてきた。

 水面を叩くとより痛くなると学習したのか、最小限の動きでだ。


 うーん、怒っている割に警戒心が少なそう。

 そもそも魚なのかな?


 よく分からないけれど、魚にしては頭が良さそうだ。私の言っていることも理解している。

 そんな魚なんているのだろうかと疑いながら私も魚に近づいた。


「えっと、これでどうだろう」


「……ぴぃ」


 大きく開けてくれた口から釣り針を抜き取る。ついでに釣竿も回収した。


「ぴぃぴぃ」


 怒っていた魚は何度も口をもごもごさせた後、怒ってるんだぞという態度を取る。ラテたちと同じくらいの大きさのせいか、不機嫌そうにしていても愛嬌がある。

 ここにきてようやくこの魚がモンスターなのではないかと思い至った。


 なんで川の中にいるのか分からないけど、モンスターだよね?

 こんなに警戒心のないモンスターなんて見たことがないけど……。


「あ、薬草丸が居たわ」


 よくよく思い返してみれば薬草丸もなぜか自分から私に挨拶をしにきた。

 もしかしたら野生のモンスターも人の言葉を理解しているのかもしれない。


 襲いかかってくる理由は分からないけど、今度話しかけてみようかな。

 返事をしてくれたら面白い。ただ、薬草丸つながりで走る薬草型のモンスターたちに逃げられたことまで思い出し、眉間にシワがよる。


 こんなに温厚なのに逃げていくなんて酷すぎじゃない?

 私の何が嫌なのか!


 目の前にモンスターらしき生き物がいることを忘れてぶすくれていると、目の前のモンスターが鳴いた。


「ぴぃぃ! ぴぃ!!」


 意識が自分から逸れていると気づいたのか、私の眉間の皺が怖かったのか。何かを訴えかけるように魚型のモンスターが尾びれで水面を叩く。


 よく見ると尾びれというより尻尾のようだった。


「ごめんごめん、私はここで岩凪のご飯をとってたんだ。痛かったよね」


 謎のモンスターに釣ろうとしたことを謝りつつ、理由を教える。

 あわよくば自分も魚を塩焼きにして食べようと考えていたことは内緒だ。バレると面倒くさい気がする。


「ぴぃ?」


「ああ、岩凪はこの子だよ。私のテイムモンスターなの」


 野生のモンスター相手に何をしているんだとも思ったけれど、魚型のモンスターからはどんどん敵意が消えていく。それどころか岩凪を見て目を丸くしていた。


「ぴぃ? ぴぃぃ??」


「…………シャー」


「ぴぃぴぃ」


 良く分からない会話を始めた2匹に私は瞬く。


 え、岩凪が鳴くなんて珍しい。

 岩凪と知り合いなのかな?


 興味が無いことはチラ見しても無視をするのが岩凪だ。返事を返した時点で顔見知りの可能性が高い。


 うーん。

 私の知り合いではないなぁ。


 ドジョウのような魚だと思っていたモンスターはよく見ると綺麗な青色をしている。鱗が夕日を反射して綺麗だ。

 最近日光がきついせいで眩しいけどデバフ(状態異常)はかかってない。


 でも、見たことないモンスターだよね。

 まあ、モンスターなんて見たことがない生き物が多いんだけどさ。

 ゴブリンとかオークが実際に居たら臭そうだし。


 現実ではあり得ない走る薬草もいる。私は納得しながらラテと薬草丸を撫でた。


 それにしても私たちは何をするかな。

 なんだか盛り上がってる岩凪たちの会話を邪魔することはできないよね。


 本当は【釣り】を再開するのが1番いいけれど、ドジョウのようなモンスターが怒るかもしれない。せっかく回収できた釣竿が壊されたら流石に堪える。

 私は仕方なく辺りを見回した。


「お、カニがいる」


 第二の街周辺の川と異なり、苔むした滝つぼ周辺の岩にはカニが歩いていたのだ。

 指でつまみ上げてみると、威嚇するようにハサミを突き出してくる。このサイズなら丸ごと素揚げにしたら美味しそうだ。


 水も綺麗だからきっと美味しいよね。

 あー、揚げ物が食べたい!


 この前早食い競争をしていたパラライズバタフライの姿揚げは食べたくないけれど、小ガニなら絶対おいしい。ハルカに【料理】をしてもらえば、手が止まらくなりそうだ。

 想像だけでよだれを垂らしそうになりながら、小ガニを摘まみ上げて【空間収納】に入れていく。


 第二の街周辺に居たカタツムリですら食べられるのだ。小ガニが食べられないはずがない。

 味付けはやはりシンプルに塩といくべきだろうか。


 私は味に期待を膨らませながら小ガニを【観察】する。結構な数を【採取】したので期待が大きい。【観察】をしたのも軽い気持ちだった。

 でも、その結果を見て私は崩れ落ちる。


 なんと小ガニの名前がポイズンクラブとなっていたのだ。


「…………うぅ」


 ポイズン……。

 毒抜き方法さえわかれば……。

 いや、多少の毒ならイケるかな?


 無慈悲な食べられない通告に涙が止まらない。

 さすがに毒で死に戻りをするのは嫌だ。トラウマになってしまう。


 くっ、こうなったらリアルでサワガニの素揚げを食べてやる!!

 近所にある気がしないけど、探せばどこかにあるでしょ!


 味まで想像していたのに食べられないなんて諦めきれない。

 私は唯一残ったリアルに望みを託し、ログアウトをしたらググると心に決めた。


 心の中で涙を流しながらも岩凪とドジョウ型のモンスターのことを思い出して視線を向ける。

 小ガニを諦めて急に様子が気になったのだ。


「ぴぴぃ!! ぴぃぃ!?」


「…………」


 いつの間にか会話をするのが億劫そうになっている岩凪に思わず吹き出す。

 岩凪は誰と会話していても岩凪だった。


 それでも気にしていなさそうな魚型のモンスターはある意味凄いんじゃないだろうか。

 私はしばらく魚型のモンスターを眺め、今度は視界の端が赤く点滅していることに気づく。


 また誰かからの個チャかな?

 ルリやみんみんからなら、岩凪とこのモンスターのスクショを送っちゃお。


 にししと笑いながら確認すると、点滅しているのは個チャではなく強制ログアウトまでのカウントダウンだった。しかもすでにリアルタイムで1時間を切っている。


「ああああ!! 岩凪!! 街に帰るよ!」


 思い返してみればログインから結構な時間が経っていた。


 こんなところで強制ログアウトは不味い。フィールドで強制ログアウトをくらうとアバターがその場所に残ってしまうのだ。

 間違いなく死に戻りすることになる。


 私はラテと薬草丸を定位置に乗せ、岩凪を掴んだ。


「…………」


「ぴぃぃ!?」


 掴まれた岩凪よりも目を丸くしている魚型のモンスターにも軽く頭を下げる。

 岩凪は反応してなかったけれど、急に話し相手が掴み上げられたら驚くだろう。


「ごめんね、モンスター君! 機会があったらまた来るから」


 強制ログアウトまでの時間はまだある。

 それでもここから第二の街に戻るとなると余裕がない。私は急ぎ足で第二の街に戻っていった。


「…………ぴぃ」




 *****

 ほんの少しだけ時間に余裕のある状態で第二の街に辿り着き、どうせならと拠点に向かう。

 街中であれば死に戻りをすることはないけれど、拠点でログアウトするのが癖になっていたのだ。


「危なかったねぇ」


「……ぷぅ」


 最後の最後に出てきたブルーモンキーの群れが最高にデンジャラスだった。マックスの9匹出現したこともさることながら、ラテや岩凪、薬草丸を抱えっぱなしにしていたのがまずかった。

 タンクの岩凪が前に出れなかったせいでアクロバティックに逃げ回らなければならなくなったのだ。


 ほんとにドキドキした。

 ログアウトに間に合わないかと思ったし。

 変な姿勢になっても体が痛まないゲーム内で良かったぁ。


 現実ではかなり厳しいイナバウアーのようなことまでやったのだ。実際に行えば確実に腰が死ぬだろう。


 しかも木に頭をぶつけて怯む危険性もあった。攻撃をくらえば死に、タイムアウトでも死ぬというギリギリ具合。途中でラテが3匹のブルーモンキーを引き付けるというファインプレーをしなければもっと時間がかかっていただろう。


 あの時のラテは本当にかっこよかった。咄嗟に機転の利くテイムモンスたちじゃなかったら死に戻りをして失意のログアウトになっていたはずだ。

 私はラテの雄姿を思い出しながら拠点に入る。すると拠点はどこか物々しい雰囲気だった。


 ザワザワ

 ガヤガヤ


 かなりの人数が商談スペースにいるのか、なかなかに騒がしい。叫んでいる人がいる訳でもないのに、廊下まで声が聞こえてくる。

 しかもすれ違う人の表情は硬く、何だか緊迫した雰囲気だ。


「今日って何かあったっけ?」


 オークションや大きな会議がある時は事前にギルドチャットでお知らせがあることが多い。ただ今回は事前通知がなかった。

 自分の部屋に戻る前にちらりと商談スペースを確認してみると、どこか見覚えのある人たちがあちらこちらにいる。さらに奥にはアシュラも居るみたいだった。


 競売って雰囲気じゃないよね?

 なんだろ。


 私の知る限り、オークション以外であの人数が集まることはない。

 ただ、雰囲気的にもイレギュラーが起きたのだろう。


 気にはなるものの、私はそれ以上邪魔をしないように足音を消して自分の部屋に入った。


「ただいまー! アンドみんなお疲れー!」


 自分の部屋に入ったことでようやく肩の荷が下りる。やはり自分の部屋が一番だ。

 みんなのごはんやお水を用意し、私も水を飲む。ここまで来るともう強制ログアウトまで非常にわずかだ。


 うわー、本当にギリギリ。

 強制ログアウトに間に合ってよかったぁ。

 とりあえず滝つぼで釣りもできたし大満足かな。


 第三の街を遠目に確認することはできなかったけれど、見たことのないドジョウ型のモンスターには会うことが出来た。

 掲示板にも情報がなかったので、相当レアなモンスターだろう。


 最後に岩凪を奪うという可哀そうなことをしたし、次に会うときはご飯でも持っていこうかな。

 食い意地が張ってそうだし、好きなものだったら喜ぶかも?


 練り餌に食いついたのなら多分練り餌は食べるはずだ。他には小エビも買ってみようか。魚型のモンスターが食べそうなものが想像できない。

 ただ食べるものじゃなくて、あっと驚くような美味しいものをあげてみたい。反応の良いあのモンスターはきっと全身で感情を表現してくれそうだ。


 私は今日初めて会った不思議なモンスターの好み考えながら、ラテたちに手を振ってログアウトをする。強制ログアウト1分前のことだった。

次回:3/10(火)更新予定です。

誤字脱字のご報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
あとは赤い鳥と白いねこを飼うんですよね 鳥と蛇は置いといてもぬこ様はどうか見つけて欲しい
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