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戦闘力ゼロから始めるやりたい放題のVRMMO  作者: kanaria
VRMMOを遊びつくせ

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26.第二の街に変わったものはあるか

 ルリやレイたちと別れた後、私は倒したモンスターを【解体】した。【解体】の手順は生産総合所にあったので実践あるのみだ。


 今回は1種類ごとの数も少ないのでほぼレシピ通り解体する。高く売れそうならもう一度狩りに行くのも有りだろう。

 流石にイエローベアは嫌だけど……。


 でも、1番高く売れそうなのもイエローベアなんだよなぁ。


 簡単に倒せたゴブリンは解体してもあまり使える部分がない。せいぜい魔石くらいだろう。


「逆にイエローベアはアイテムの宝庫だね。皮に牙に爪に……お肉も売れちゃう」


 ゴブリンの肉も肥料になるらしいから取ってあるけれど、値段が桁違いだ。

 シルバーウルフも売れる部分が多いが、スタンピードのおかげで流通量が多い。それ程強くないこともあって高値がつかないのが現状だ。


「第二の街の生産総合所はまだ空いてるし、この隙にできるだけ生産スキルのレベリングをしたいよね。はやく下級ポーションも作れるようになりたいし」


「……ぷぅ」


 ラテは食べられるものがないからかテンションが低めだけれど、生産総合所が空いているのも今だけの可能性が高い。全サーバーで第二の街を解放したら第2陣がゲーム始めるという噂がある。そうなれば生産総合所も再び混み始めるだろう。


「とりあえず、【解体】は終わったから次は【調合】ね。そこまで終わったら一旦ログアウトして休憩を取ってからダンジョンかな」


 いや、壁になるモンスターを探しに行くのも有りか。

 ダンジョンのモンスターはネタに走っていてあまり強くないと情報サイトに載っていたけれど、私にとっては強いかもしれない。ナメてかかれる程自分が強くないことは自覚済みだ。


「ラテはどんな子が良い?」


 まだ第2の街周辺のモンスターをしっかり調べていないので、私もよく分からない。

 確実なのは壁が出来るモンスターが良いということだけだ。


「ぷぅぷぅ」


 質問が分かっているのかいないのか、私を見つめてラテが鳴いた。


「うーん、分かんないや……」


 ラテの言いたいことが分かることもあるけれど、私の質問が悪すぎてなんと答えているのか分からない。

 肉食のモンスターだと相性が悪いとかあるのだろうか。

 そこら辺も含めて調べておいた方がいい。


「まあ、とりあえずは【調合】のレベル上げだね。武器もないし、薬草はレベル上げの為に摘んでおいたのがあるからそれを使えば大丈夫。いっぱいあるから下級ポーションも作れるようになるはず」


 ネスラー管に似た大きな試験管のようなポーション容器もアズキから買ってある。ギルメン価格にしてくれたおかげで問題なく黒字になりそうだ。


 アズキは変わってる人が多いギルドの中でも変わってると思うけど、結構優しいよなぁ。

 私もギルドのみんなに恩返しが出来ればいいんだけど。


 今の私は貰ってばっかりだ。

 一応、【解体】したアイテムはギルメン価格で販売している。でも、みんなが本当に欲しいのは最前線のアイテムだ。私のは2群どころか3群がいい所だろう。


「最前線の素材を丸々買い取って【解体】できればいいんだけど……」


 私の【解体】はそこまでレベルが低くない。大手ギルドで【解体】をよくやっている人には劣るけれど、戦闘や生産のスキルと違って補助スキルの【解体】は育っている人が少ないのだ。

 情報まとめサイトによると、どうやら私のレベルでも最前線のモンスターを解体できるらしい。


 ただ、最前線の素材を売ってくれる人が思い浮かばないんだよなぁ。

 うちのギルドのメンバーは生産職に偏っているし、フレンドも戦闘職のトッププレイヤーがいない。

 残念に思いながら諦めモードでフレンドリストを見ると、街落としで親しくなったみんみんがいた。


 いつの間にフレンドになったんだっけ?

 会ったのは第二の街の攻略の時と終わった後のパーティの時くらいだ。


 ほとんど会っていないからすぐに思い出せそうなのに、ちょっと思い出せない。

 あの時はゾンビになりながら【調合】をしていたせいか記憶が……。


 どれだけ記憶を探ってもフレンド交換をしたことが思い出せない。面白い人だったし、フレンドでいる分には良いか。


 それに、街落としでお世話になった『もうぼっちとは言わせない』なら最前線にいる可能性が高い。あのギルドは生産メインのプレイヤーが少ないはずだし、もしかしたら最前線の素材を売ってくれるかもしれない。


 善は急げとばかりに個人チャットを送ると、みんみんから直ぐに返事が来た。

 どうやら団長のアシュラに相談してくれるらしい。

 最初からアシュラに個チャ出来ればよかったけれど、私はアシュラの個チャを知らなかった。


「そもそもアシュラとはフレンドじゃないもんね」


 それでも希望は広がったと頷きながら【解体】したアイテムを【空間収納】にいれて、初心者用ポーションを作る。街落としの時に腐るほど作ったおかげで初心者用ポーションと初心者用マナポーションはよそ見をしていても高品質で作ることができた。


 そのまま予約している時間中ずっと初心者用ポーションと初心者用マナポーション、痺れ取り薬を作り続け、ログアウトした。




 ***

 しっかりと休憩をとって再びログインすると、みんみんから返信が来ていた。なんだかギルドチャットも白熱している。

 ギルドメンバーとしてはギルチャを先に確認するべきだろうけれど、それよりもアシュラの返事が気になる。


「おお! 今度会ってくれるのか。って、この時間、ゲーム内の数時間後じゃん! ログインしてて良かった」


 返信をくれたみんみんは私がログアウトしていることも分かってくれたようで、30分前になってもログインしていなかったら、アシュラにログインしていないと伝えると言ってくれている。

 そのチャットにログインしたので時間通りに向かうと返信すると、すぐにみんみんから恨めしそうな顔文字が送られてきた。


 みんみんはアシュラのことが好きだから、本心が出た顔文字だろう。

 実際にその顔をしているみんみんが頭をよぎり、つい吹き出す。街落としの時から感じていたけれど、みんみんのアシュラ愛は衰えることを知らないようだ。

 好きと言っても推しのような気がするけど。


「仲がよさそうでいいねぇ」


 複雑そうにしながらもみんみんを邪険にしないアシュラもまた、みんみんのことを受け入れているようだ。搾取されがちな生産職が戦闘職と仲良しなのはほっこりする。

 私は『もうぼっちとは言わせない』で会った人たちを思い出しながら顔をほころばせた。


「……ぷぅ?」


「んー、なんでもないよ」


 楽しそうな私が気になったのか、ラテが顔を上げて私の足をぺちぺち叩く。心優しいラテを撫でながら近くのベンチに座った。おなかも空いているようなのでご飯とお水もあげる。


 私も自分用の水も飲みながらみんみんからの個チャを確認する。


「待ち合わせは『もうぼっちとは言わせない』の拠点前なのか……。すごく目立ちそうだね」


 ギルド『もうぼっちとは言わせない』はサーバーでトップ争いをしているギルドではない。でもトップ争いをしているギルドに準じるギルドだ。準じるギルドの中では有名で人数も多く、この前の街落としでアシュラが大活躍をしたからか人気もあるようだ。


 そのギルド前で立っていたら近くを歩いているプレイヤーに通報される気がする。


 さすがに通報されるのは嫌だなぁ。

 拠点の前に立っていれば『もうぼっちとは言わせない』のメンバーにも変な目で見られそうだ。


 ご飯を食べるラテを撫でながら唸る。


 みんみんにそこら辺も相談すると、ギルドの拠点前についたら個チャでみんみんを呼び出せとのことだ。アシュラと会えるということで、みんみんも同席したいらしい。

 ブレない姿勢が非常に良い。


 私もアシュラと話せる機会は滅多にないので楽しみだ。

 こんなことで大手ギルドのギルマスと話すのは申し訳ない気がするけれど、アシュラと仲良くなりたいのでお言葉に甘えよう。アシュラは強いだけでなく、黒猫のアバターに合う猫のような性格も可愛らしい。


「ユニークで強くてかわいいとか、もう最強じゃん」


 まだ戦場で大鎌を振り回す姿を見たことはないけれど、絶対似合う。武器の大鎌はアシュラの身長より大きいらしいし、共闘する機会があったらぜひとも見てみたい。


 ワクワクしながら私はみんみんに出迎えを頼み、今度はギルドチャットを開くことにした。

 こちらはしきりに私を呼び出そうとしているらしく、とても強く光っている。恐らく拠点の話だろうけれど、そこまで光っていると見たいような見たくないような気になる。それでも無視する訳にはいかないので、ギルドチャットに目を向けた。


 ついでに【魔法素養の心得】のレベリングの為、手のひらに水の玉を生み出す。その中にリルモからもらった卵を入れたら一石二鳥だ。

 水の玉に入れるだけで卵が魔力を吸収してくれているかは分からない。それでも何もしないよりは何となく良い気がする。


「早く孵ってくれるといいねぇ」


 まったく情報がないので卵から何か生まれるのか想像もつかない。卵をくれた時のリルモの感じから推測するに戦えるモンスターではあるのだろう。

 ログアウトをしている間も進んでいたギルドチャットを確認しながら卵に思いをはせる。


「ぷぅぷぅ……」


 ご飯を食べ終わったラテが残りの草を足で押すのを止め、【空間収納】にしまう。このスキルは取って良かったスキルナンバーワンだ。アイテムボックスのないゲームは非常にやりずらい。今後課金アイテムとして登場するのかもしれない。


 どうでもいい事を考えながらギルドチャットを読み進めていくと、なんの話しをしているのか簡単にわかった。


「なるほどねぇ。拠点のデザインで揉めてるのか」


 ログインするとギルドメンバー一覧に載っている名前が灰色から黒になるため、ログインしていることがバレた私にも意見が求められている。

 ひとまずそれを無視して流れを確認し続けていると、どの街に拠点を作るかの次はどんな拠点にするかで揉めているらしいと判明する。


「ナツミとアズキはファンシーな外見の拠点にしたいんだって。でも蛍光紫は癖が強すぎるんじゃ……」


 反対派筆頭がジローでザオとハルカも反対のようだ。意外にもレイはどちらかと言えば蛍光色というスタンスを保っている。レイこそ目立つ色と主張しそうだったのに予想を裏切られた。

 ただ、蛍光色でなくても、黄色の外壁が良いらしい。


「蛍光色の外壁も黄色の外壁もすごく目立ちそうだなぁ」


 中まで外壁と同じ色だったら嫌だ。

 せいぜい自分用のスペースだけにして欲しい。


 まだ内装まで至っていない話し合いを眺めながら水の玉の中に入っている卵をつつく。ひんやりとした水の玉がなんだか気持ちいい。


 最新のチャットまで読み、そろそろ返信するかと考えたところで卵が震え始める。

 レイから個チャまで来たけれど、それどころじゃない。


「え、孵る? まさかこの卵、孵ろうとしてる!?」


「ぷぅ?」


 震えの大きくなる卵を見て、慌てて水の玉を消した。膝の上でうとうとしていたラテも首を上げる。


 カタカタカタカタ。


 また震えているだけだろうか。

 少し不安に思いながら見守っていると、卵から眩い光があふれだした。

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