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戦闘力ゼロから始めるやりたい放題のVRMMO  作者: kanaria
VRMMOを遊びつくせ

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24.新武器は【弓】で使えるか

 やはり技を使うと攻撃力が増す。

 すぐさまルリがタゲを取りかえそうとしてくれたけれど、小さなイエローベアはなかなかルリの方を向かない。


「逃げ回りながらだと射ちにくい!」


 私はAGI(素早さ)も低いので逃げ回るのが一苦労だ。幸いイエローベアも足が遅いのでなんとか逃げられている。


 でも逃げ回っているだけだとジリ貧になっちゃう。

 どうにかしないと……。


 雪も水魔法で追撃してくれているけれど、私が逃げ回っているせいでほとんど当たらない。

 ルリの放った挑発という技でもタゲは移らなかった。余程私がヘイトを稼いでしまっているのだろう。


「こうなったら仕方がない。ルリ、飛び具を使うから気をつけて!」


 装備できるか分からないので、先に試し打ちをしようと考えていた新武器を【空間収納】から取り出す。

 ナツミに特注で作ってもらったパチンコだ。Yの字の枝に伸びる蔦のようなものがかけられている。


「南無三」


 今まで使い道のなかった【魔法素養の心得】を使って手のひらに風の玉を生み出し、イエローベアに向かって発射する。

 【魔法素養の心得】で作った風の玉が手のひらから離れるかとても不安だ。何しろどれだけ頑張っても離れなかったのだ。


 ちゃんと打てるか自信がないので、イエローベアから逃げるのはやめないままに成り行きを確認する。

 けれど心配する私に反して風の玉はあっさりと手のひらから離れ、若干軌道修正をしながらイエローベアに当たった。


「ぐぁあああ!」


 イエローベアは咄嗟に避けようとしたけれど避けきれなかったようだ。

 内部に風が渦巻いている玉がクリティカルヒットした為、大きなダメージを与えたらしい。イエローベアが目を血走らせながら私に向かって走ってくる。


「いやいや!! 普通に怖いんだけど!」


 特に防具を揃えていない私では一撃で死に戻りする。

 私は慌てて再びパチンコを放った。


「ぐぉっ、ぐぅ……ぐぉぉぉおお!!」


 逃げながら放った風の玉は変な方向へ飛んでいき、イエローベアを掠める。これでは流石に削りきれず、瀕死のイエローベアが吠えた。

 小さいとは言え自分より大きなイエローベアが威嚇をする様は怖い。それでもイエローベアが態勢を崩した隙に風の玉を放つと、ようやく倒すことができた。


「よ、よかった……」


 安心してへたり込みそうになったけれど、イエローベアはもう1体いる。

 震えそうになる足をどうにか動かし、倒したイエローベアに解体用ナイフを突き立てた。


 イエローベアを【空間収納】に入れ、辺りを見回すと、ようやくルリと雪がいないことに気づく。どうやら大きいイエローベアを優先することにしたらしい。


 ルリと雪も無事ならいいけど……。

 途中まで大きなイエローベアに追いかけられながら小さなイエローベアのタゲも取ろうとしてくれたのだ。かなり無理をしていることだろう。


 心配になりながらルリと雪がどこにいるかマップで確認する。

 ルリたちとはパーティを組んでいるからどこにいるのかすぐに分かった。


「少し離れちゃってるのか」


 どれくらい傷を負っているかは分からないけれど、ひとまず生きてはいるようだ。ルリと雪、2つの青い丸がマップにある。

 ただ、私が逃げる時に通らなかった場所で戦っているらしく、道は描かれていない。


 トラップとかのない普通の森だし、方角が分かれば何とかなるかな。

 むしろイエローベアに奇襲をかけられるかも。


 弓よりパチンコの方が火力があると分かったので、パチンコを握り締める。弓と矢はしっかりと【空間収納】にしまってあるし完璧だ。


「……ぷぅ」


 小さなイエローベアから逃げている間、私の頭の上にしがみついていたラテが不満そうに鼻を鳴らす。またイエローベアと戦うことになると理解しているのだろう。


「ルリと雪を助けないといけないからね。でも、さっきみたいにはならないはずだから大丈夫だよ」


 さっきは2体いてルリがヘイトを稼ぎきれていない中で私が火力の高い攻撃をしてしまったのがいけない。今度は1体しかいないしやばそうなら弓に持ち替えればいい。


「ぷぷぅ?」


 疑い深そうに私を見るラテをひと撫でし、癒されてから大きなイエローベアの元へ向かう。逃げ回っている間も思ったけれど、森の中は歩きにくい。

 足元に気をつけながら足早に進んでいくと、ようやく戦闘音が聞こえてきた。


「ジャブ! ジャブ!」


 ルリのおかしな【素手】の技名が森に響く。

 確実に間違っている技名でもしっかりとイエローベアに攻撃が通っているようだ。


「ぐおおお!!」


 まだ3分の2ほどHPの残っているイエローベアが腕を横になぎ払う。大ぶりな攻撃だから避けやすいけれど、それでも当たらない場所まで逃げるのは大変だ。

 イエローベアの懐に潜り込んでいたルリが避けきれず、爪が軽くルリの体に当たる。たったそれだけでルリのHPがごっそりと削れた。


「……っ!」


 のんきに状況確認をしている場合じゃなかった。

 私は急いでパチンコを構えて風の玉を放つ。


 とりあえず2連撃してから場所を移動する。こっちに突進してくるイエローベアから逃げるためには2撃が限界だった。


「シオン!」


 ルリが叫びながらイエローベアに殴りかかる。それでもやはりイエローベアは私を狙っていた。


「またこうなるのかー!!」


 攻撃が強すぎるなら弓に持ち替えれば良いとか自信満々に言ってたの誰だよ!

 普通にタゲが来ちゃったじゃん!


 地獄の鬼ごっこ第二弾が開催されている原因は間違いなく私にあるのだが、今度のイエローベアは大きい分さっきより怖い。

 ひーひー言いながら逃げていると、ルリの攻撃が一定のヘイトを稼いだらしい。

 イエローベアはルリに向かって体の向きを変えた。


「ルリ、ナイス!」


 大きな声だとイエローベアが私に注目してしまうので聞こえる程度に叫ぶと、ルリが片手を上げた。


 大きな隙に深呼吸をしてイエローベアを見る。もう1撃で倒せそうなHPだ。ルリもタゲが私に移っている間にポーションを飲んだのかHPが回復している。


 これなら問題ないね。

 むしろ雪にトドメを刺される前に仕留めたい。

 ラスアタ特典はなくても気分の問題だ。


 私はもう一度パチンコを構え、風の玉を発射する。


「ショット」


 本来は【弓】の技だけれど、そう唱えると風の玉の威力が上がった気がした。

 【弓】を持っていれば使える武器のようだし、技も【弓】に依存しているのだろう。


 回転の増した風の玉はイエローベアに当たり、クリティカルを叩き出した。


「「勝ったー!!」」

「くぉおお!」


 ようやく倒しきったイエローベアを前に私たちは両手を突き上げる。

 なかなか大変な戦いだった。


「はっ、急いで解体用ナイフを刺さないと!」


 勝利の余韻に浸っていたせいでドロップ品になってしまったら勿体無い。慌てて【空間収納】から解体用ナイフを取り出して大きなイエローベアにも突き刺す。

 一度突き刺してしまえば抜いてもドロップ品に変わらないので安心だ。


 【空間収納】に入れてやっと息をつく。


「はぁ~、大変なバトルだった」


「イエローベアが強すぎる」


 2体同時だったせいもあるけれど、たぶん相性も良くない。

 皮が厚い分DEF(物理防御)が高いのだろう。弓ではそれほど攻撃が通らなかった。


「これだとゴブリンはキツそう?」


 ゴブリンは素早い。イエローベアでこれならゴブリンはまだ早いかもしれない。

 そう思ってルリを見ると、ルリは少し考えたあと、首を振った。


「意外とゴブリンはいけるかも。ゴブリンってDEFが高くないんだよね。MDEF(魔法防御)はある程度あるみたいだけど」


「あー、だから街落としの時のアッパーで倒れたのか」


 私の記憶が正しければ「止めはわたしだー!!」と叫びながらアシュラが殴りつけていた気がする。


「あれはゴブリンキングだからちょっと違うけどね。でも弱点は同じはずだよ」


「物理か……」


 恐らくパチンコと【魔法素養の心得】の組み合わせは魔法攻撃だ。だからイエローベアを相手にクリティカルがでたのだろう。ゴブリンが物理攻撃に弱いのなら弓を使うしかない。


「物理攻撃、苦手なんだよなぁ」


 やっぱりATK1というのは尖りすぎだ。いくら命中率が良くても刺さらなければ意味がない。

 私は肩をすくめた。


 それでも一度試してみようということになったので、私はパチンコから弓に持ち替えた。矢筒に入った矢もしっかりと装備済みだ。


「一応、先端に銅がついてる矢にしてみたけど、どこまで貫通力がでるか分からないからね」


 そもそも銅の矢尻は高いのだ。可能なら矢も回収しながら戦いたい。

 貧乏すぎる思いを胸に、一応ルリへ忠告しておく。


 私もルリもテイマーだからテイムモンスを死なせてしまうのも避けたい。懐き度が下がってしまうので極力無理な戦いはしたくなかった。


「ありがとう。分配の時に多くモンスターを渡すよ。【空間収納】に入れてくれてるのも【解体】を持ってるのもシオンだし」


「それは助かる!」


 例え銅の矢尻をなくしても問題ないくらい稼げれば大丈夫だ。ゴブリンは解体しても高値で売れない気がするけど、イエローベアを貰えれば多分黒字になる。

 イエローベアは皮や牙、爪だけでなくお肉もそこそこの値段で買い取ってもらえるのだ。


 私は鼻歌を歌いながら頭上のラテを撫でた。


「……そのうち守銭奴とかって二つ名がつきそう」


 ぼそっとルリが何かを言っていたけれど、幸いにして私の耳には届いていない。

 むしろ、きらりと鈍く光る刃を見て、弓を構えた。


「ルリ、多分ゴブリン!」


 今回はラテが癒されモードだったからか鳴いてくれなかった。


 ラテに頼りすぎるのも危ないな。

 頭上で毛を逆立てながら踏ん張り始めたラテをそのままに弓を放つ。


「グギャー!!」


 緑色の肌を確認してからの通常攻撃だったけれど、しっかりとクリティカルが出た。

 そのままパタリと倒れるゴブリンに何とも言えない空気が流れる。


「えっ、終わり?」


 イエローベアと違って余りに呆気ない。


 解体用ナイフを刺してから矢も回収する。

 ゴブリンが前側にパタリと倒れたせいで矢は折れてしまっていた。それでも矢尻は回収できたのでまあ良いだろう。


「通常攻撃だったのに結構深く刺さってたよ」


 引き抜けないかと思うくらいだったので核を貫通していたはずだ。これなら先端を尖らせただけの木の矢でも倒せるかもしれない。

 私は節約を兼ねて木の矢に持ち替えた。

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