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戦闘力ゼロから始めるやりたい放題のVRMMO  作者: kanaria
VRMMOを遊びつくせ

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21.新スキル

 快く相談に乗ってくれるというリルモにお礼を言い、今のステータスを開示する。他人にステータスを見せる場合、本来は非公開にしている項目を公開にしないといけないけれど、リルモはAIなのでそのまま見ることができるらしい。


「それで、シオンはスキルの何が知りたいのなの? 使い方とかになると教えられない可能性があるの」


「一応、使い方ではないかな。リルモに無理のない範囲でお願い。私が知りたいのは新しく取るスキルについてだよ。もしダメなことがあったら先に言って」


 ただでさえ私のせいで不利益を被っているのに、これ以上迷惑をかけたくない。本当はきわどいことを聞きたくないけれど、チュートリアルではリルモに教えてもらいながらスキルを取った。もしリルモに聞きながらスキルを選べたらそれ以上のことはない。


「あー、一枠空いているスキルをどうするか決めるのなの?」


「うん。戦闘系のスキルが欲しいんだ」


 今のままだと私は戦えない。ラテはテイムモンスだけど、戦わない前提でテイムしたモンスターだ。リルモがくれた卵は戦えるモンスターが孵るようだけれど、いつ孵化するか分からない。

 そろそろこの状況から脱却したかった。


「それなら魔法系がオススメなの! シオンはINTとMPが高いのなの。魔法攻撃がきっと強くなるの~」


「うーん、できれば物理攻撃が良いんだけど……」

 

 私は断固として魔法詠唱をしたくない。

 この歳になって呪文を唱えるとかどんな罰ゲームだ。恥ずかしすぎて戦闘に集中なんてできない。


 それに魔法攻撃はMPを消費する。いくらMPが多いとは言え戦いの途中で魔法が使えなくなったら怖い。MPを消費してアイテムを異空間に保管する【空間収納】との相性も悪そうだ。


「えっ、物理攻撃とか正気なの? シオンの種族はATKが最弱なの。殴っても殆どダメージにならないのなの」


 驚いた顔のリルモに窘められたので私も自分のステータスを確認する。カッコで示されているのはステータス増強を取っていない同レベルのヒューマンのステータスだ。



シオン Lv.9 ドッペルゲンガー

 所属:テイマーギルド

 非公開称号:『NPCとのフレンド1号』 


 HP: 32(214)

 MP:406+15(214) 

 STR: 214(214)


 ATK:1(14) 

 DEF: 7(14)

 MDEF:12(14)

 AGI: 9(14)

 INT:26+2(12)

 DEX:28+4(13)

 LUK:40+11(4)


 スキル:メイン【テイム Lv.5】 サブ【観察 Lv.15】 生産【調合 Lv.18】

 【解体 Lv.6】、【採取 Lv.11】、【栽培 Lv.1】、【釣り Lv.10】、【醸造 Lv.3】、【歌 Lv.8】、【空間収納 Lv.5】、【MP微強化 Lv.8】、【INT微強化 Lv.8】、【DEX強化 Lv.2】、【LUK超強化 Lv.1】、【 】



 改めて見ても物理攻撃には全く向いていない。

 リルモが反対するのも良く分かる。


「それでもできれば物理攻撃が良いんだ。別に遠距離の攻撃でも良いし。何か私にも使えるスキルはないかな?」


 無理難題を言っている自覚はある。防御力も弱いから盾を持ってタンクになることもできない。攻撃を食らったら一般的なプレイヤーより早くHPが全損するだろう。


「とても難しいの。シオンの強みは高いMPとINT、生産をやるためのDEXとLUKなの……。ドッペルゲンガーもあまり戦闘向きじゃない種族だし……」


 リルモが頭を抱えながらぴょんぴょん飛び跳ねる。何か良い案がないか検索をかけているのかもしれない。


 これだけリルモが悩んでも妙案が出ないってことは、やっぱり大人しく魔法攻撃を取るしかないかなぁ。

 魔法って強い技になればなるほど長い詠唱が必要だから厨二病みたいで嫌なんだけど……。


 ゲームといえば魔法!みたいな人が多いのは知っている。私自身も何もないところから火や水を生み出すのはカッコイイと思う。でも自分が呪文を唱えるとなると恥ずかしい。

 せめて魔法名を叫ぶくらいに抑えて欲しい。


 それでもリルモにも良いスキルが浮かばないのなら魔法に手を出すべきだ。何しろ私はINTとMPが高いのだから。


 諦めてリルモに声を掛けようとすると、リルモが顔を上げた。


「…………ひとつ、レアスキルにシオンが使いこなせそうなスキルがあるのなの。でも、これを目指すにはスキル枠が足りないの」


「どんなスキル?」


 もう魔法攻撃を取ろうかと思った矢先、リルモが眉間に皺を寄せる。


「【魔弓(まきゅう)】、【弓】のレアスキルなの。一般スキルからレベルアップして手に入れるなら【弓】と【魔力操作】が要るの。可能なら【魔法素養の心得】も欲しいの。【付与魔法】や【回復魔法】、【毒生成】なんかとの相性も良いスキルだけど……」


「どれも私が持ってないスキルだね。レアスキルは普通のスキルが進化したスキルだっけ?」


「そうなの。でも【魔弓】は取得が非常に困難なスキルなの。【弓】と【魔力操作】を持っていてもほとんどの人は取れないの」


「うーん、使いにくい【弓】ってだけじゃなくて取得も困難なんだ……。どうやったら取れるの?」


 流石に今の情報だけで取る気にはなれない。【弓】は命中率が低く、矢にお金がかかることで有名だ。いくら【解体】のおかげで普通より高くドロップ品を売れると言ってもキツイだろう。

 せめて【魔弓】の取得条件を知りたい。


「ごめんなの~。派生スキルの取得条件は言えないのなの。【弓】を持ってたら何もしなくても選択肢に出るのが【弓の達人】ということだけしか教えられないの」


「え、さっきどのスキルを掛け合わせたら取れると教えてくれなかった!? 大丈夫?」


 もしプレイヤーに言ってはならないことならヤバイ。リルモの考えるギリギリは不良AIとして処分されないラインという意味な気がする。

 またリルモが意に沿わない目に遭うのなら、それは避けたい。


「レアスキルまでは組み合わせを教えても問題ないの。ただ、組み合わせたスキルをどう使うと派生するかは教えられないの。自分で頑張って探して欲しいの」


 申し訳なさそうにリルモが俯く。リルモは教えられるのなら教えたいのかもしれない。


「必要スキルの組み合わせを教えてくれるだけでも嬉しいよ。スキル名で方向性も何となく分かるし。ただ、必要スキルだけじゃなくて進化可能になる行動か何かがあるんだね」


「そうなの。レアスキルは基本スキルをどう使ったかで選べる選択肢が変わるの。同じスキルを持っていても同じレアスキルが取れるとは限らないの」


 自由度が高いとは思ってたけど、そこまで高かったとは……。

 ぶっちゃけVRMMOを舐めていた。フルダイブ型のゲームとは言え、もっと限られた選択肢の中から選んでいくものだと思っていた。


「【魔弓】……。【魔弓】ね」


 情報まとめサイトを見ても情報がない。名前からして魔法と弓をかけあわせたスキルだろうか。

 もし、攻撃力がATKではなくINT主体になるのなら私でも威力が出せそうだ。その場合、物理攻撃ではなく魔法攻撃扱いになるのかもしれないけど。


「リルモ、【魔弓】って本当に物理攻撃なんだよね? 魔法攻撃じゃない?」


 流石に気になってリルモに聞くと、リルモがハッとした顔をした。


「あああ!! 魔法判定になるの! シオンが言っていた物理攻撃じゃないの!」


「魔法詠唱とかはしなくて良いんだよね?」


 闇より生まれし漆黒の鼓動……とか長々と詠唱をするのは嫌だ。

 でも魔法攻撃扱いでも【弓】の派生なら詠唱を必要としないかもしれない。


 期待に胸を膨らませてリルモを見ると、リルモが頷いた。


「魔法みたいな長い詠唱はないの。技名を単体で言うことはあっても使い方は【弓】と同じなの」


「それなら【魔弓】を目指すよ!」


 私がやりたくないのは魔法詠唱だ。それがないのなら高いINTを活かせる良いスキルだろう。


「でも、スキル枠が足りないの。空きが最低でも2つ要るの」


 リルもが申し訳なさそうに眉を下げる。

 私が物理攻撃を取りたいと言ったせいで自信をなくしているのかもしれない。


「これを使えばスキルを取れるかな?」


 チュートリアルで貰ったスキルリセットをリルモに見せる。


 せっかく街落としで【調合】のスキルレベルが上がったのに全てのスキルレベルが1に戻るのは悲しい。けれど【魔弓】を取って戦えるようになるのなら仕方のない犠牲だ。


 そう思い込もうとしてもスキルリセットを示す指は震えてしまった。


「あ、スキルリセットがあるのなら2枠空きを作ることができるの」


「うん、2枠どころかいっぱい空きができるよね……」


 何しろスキルがレベルごと真っ白になるのだ。一応、高いVR機の特典についていた激レアスキル確定チケットやレアスキル確定チケットは効果が持続するみたいだけれど、それも一度目に使ったスキルを再取得しない場合は意味がなくなる。


 確定チケットは一度使うスキルを決めてしまうと、そのスキルを取得する際にしか使えなくなってしまうらしい。私の場合【LUK超強化】、【DEX強化】、【テイム】に使われている為、スキルリセットを使って【魔弓】を取ることは不可能だ。代わりにスキルをリセットしても【LUK超強化】、【DEX強化】、【テイム】は最初から選択できる。


 切ない気持ちになりながらスキルリセットを使おうとすると、リルモに止められる。


「……何?」


 余裕がないせいで声が尖ってしまう。それでもリルモは首を横に振った。


「多分、シオンは勘違いをしているの。全部のスキルをリセットする必要はないの」


「…………どういうこと?」


 スキルリセットは一度だけスキルをリセットすることができるチケットのはずだ。チュートリアルでリルモもそう言っていた。


「スキルリセットは一度だけスキルをリセットすることができるの。対象を全てのスキルにしないで、ひとつのスキルに固定すれば良いの」


「ひとつのスキルに固定する?」


 そうか!!

 一度だけスキルをリセットすることができるっていうのは一度だけ全てのスキルをリセットすることができるっていうわけじゃないのか!


 今までの経験を無駄にしないですむ可能性が出てきてテンションが上がる。

 リルモも私が理解したことが分かったらしい。うんうんとその場で頷いている。


「スキルリセットは一度だけ全てのスキルをリセットするか、1つのスキルをリセットすることができるの。シオンの場合はスキルを一つリセットするだけでいいの」


「やった!! それなら【歌】を消して【弓】を取るよ。空いているスキル枠は【魔力操作】だよね」


「……普通はそうなの。でもずっと考えてたんだけど、シオンはドッペルゲンガーなの。それなら【魔法素養の心得】で上手くいくかもしれないの」


 リルモが自信なさそうに自分の頭をぐりぐりする。自分の持っている情報に検索をかけているのかもしれない。


「ドッペルゲンガーだと【魔力操作】がスキルなしでできるの?」


 そんな話は聞いたことがない。同じドッペルゲンガーに会ったことはないけれど、他の種族でも種族の固有スキルがあるとは聞かない。

 それに、私は卵に魔力を送ろうとして失敗したことがある。スキルなしで【魔力操作】ができるのならあの時も卵に魔力を送れたはずだ。


 悩むリルモの前で私も色々な疑問が浮かぶ。


「うーん、【魔力操作】とはまた違うの。それに、仮に使えたとしても応用になるから難しいスキル操作が必要になるはずなの」


 よく分からないけれど、【魔弓】はドッペルゲンガーと相性の良いスキルなのかもしれない。

 リルモの様子を見ていると、今はまだ解禁されていないだけで今後種族スキルが解禁される可能性もある。


 ただ、そんな可能性にかけるかどうかが悩みどころだ。


「【弓】と【魔法素養の心得】で【魔弓】が取れる可能性があるってことかな?」


「そうなの。シオンの場合はその2つのスキルで【魔弓】が取れる可能性があるの」


「それをした場合のデメリットは取得難易度が上がること? じゃあメリットはなんだろう」


 リルモに聞くのはいけない気がしてぶつくさ言いながら自分で考える。


 そもそも【魔力操作】と【魔法素養の心得】の違いはなんだっけ。

 【魔力操作】は魔力そのものを操る力でしょ?

 【魔法素養の心得】は?


 自問自答しても【魔法素養の心得】がなんだか分からない。魔法の一般スキルは【~魔法の心得】のはずだ。


「メリットは攻撃の幅が広がることなの」


「!!?」


 答えても大丈夫なのかとリルモを見ると、リルモが頷いた。


「これくらいなら答えられるの。別に取得条件に関わる訳じゃないし」


「そうだったんだ。それなら【歌】を消して【弓】と【魔法素養の心得】を取るよ! ありがとうリルモ」


 リルモが居なかったら【魔弓】なんてスキルに思い至らなかったはずだ。

 このスキルが本当に取れるのかは分からないけれど、取れなさそうなら【魔力操作】を取れるように頑張ろう。


 これ以上リルモに質問をするのも申し訳ないのでさくっとスキルを取得する。

 もし【魔法素養の心得】だけでは【魔弓】が取れなさそうなら新しいスキル枠を狙えばいい。イベントの上位に食い込むのは大変そうだけれど、それでも【魔弓】というスキルには心が躍った。

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