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【完結】『平民の血』と蔑まれた令嬢は、真実に守られる  作者: 群青こちか@愛しい婚約者が悪女だなんて~発売中


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──それから五年。


季節がいくつも巡り、アデルは十七歳になっていた。

いまも変わらず教会へ足を運び、奉仕活動を続けている。

同じ頃、リオンは二十歳を迎えようとしていた。

出会った頃はあまり身長が変わらなかった二人も、今ではリオンがすっかり追い抜いている。

子供の頃の面影を残しながらも、リオンは立派な青年に成長していた。


教会には、彼を目当てに奉仕活動へ参加する娘たちも増えはじめていた。

それでも二人の関係に変わりはなく、アデルとリオンは子供の頃と変わらず軽口をたたき合う。

ただ恋の話だけは、おたがい決して口にしなかった。


ある日、教会で作業をしていた二人のもとに子供達が駆け寄ってきた。

連れて行かれたのは、教会の祭壇の前。

壇上に立った小さな男の子がにやりと笑う。


「わしは司祭さまであーる! これからリオンとアデルの結婚式をとりおこなうぅーっ!」


張り上げられた声に、子どもたちは歓声をあげた。

二人は思わず目を見開く。


「結婚式ごっこだよ!」と、女の子が嬉しそうにアデルに囁いた。


恥ずかしがる二人に、まわりからいっせいに声が飛ぶ。


「ちゃんとやってーっ!」

「ほら、こっちー!」

「……しょうがない、付き合ってやるか」


リオンが照れくさそうに笑いながら呟くと、アデルも小さく頷いた。


一番幼い子から、小さな箱がリオンに手渡される。

その中には、シロツメクサで編まれた可愛い指輪が二つ並んでいた。


「病めるときもー……健やかなるとき……うーん、指輪交換っ!」


司祭役の子供の大きな声に、アデルとリオンは思わず吹き出してしまう。

それでも目を合わせ、少し照れながらお互いの手を取りあい、シロツメクサの指輪を交換した。

リオンの指先から伝わる熱をアデルは感じていた。


「では! ここで誓いのキスを!」


司祭役の子供がさらに声を上げると、周りの子供たちが一斉に拍手をした。


「こら、そこまでだ!」


リオンは真っ赤な顔で子供達に振り返る。


「そういうことは好きな人とするものだ、アデルお姉ちゃんに失礼だろ」

「えー! だってぇアデルお姉ちゃんが好きなのはリオンでしょ?」

「えっ」

「それにーリオンが好きなのはアデルお姉ちゃん!」

「!」


子供たちの無邪気な言葉に、二人とも答えることが出来ない。

アデルは顔を隠すように、ぱたぱたと手であおいだ。


「よーし! いまからおにごっこだー!」

「「「きゃーーー!」」」


リオンが子供たちを追いかけ始めると、全員が歓喜の声を上げながら散らばっていく。

その姿を目で追いながら、アデルは一人、指にはめられたシロツメクサの指輪をそっと撫でた。

駆けていくリオンも、指輪を愛おしそうに胸に押し当てていた。



お読みいただきありがとうございました

短編のつもりが少し長くなってしまったので連載を始めました。

今週中には完結する短期連載です(∗ˊᵕ`∗)

続きが気になる!と思ってくれた方は

ブックマークや応援いただけると嬉しいです☆


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