2
──それから五年。
季節がいくつも巡り、アデルは十七歳になっていた。
いまも変わらず教会へ足を運び、奉仕活動を続けている。
同じ頃、リオンは二十歳を迎えようとしていた。
出会った頃はあまり身長が変わらなかった二人も、今ではリオンがすっかり追い抜いている。
子供の頃の面影を残しながらも、リオンは立派な青年に成長していた。
教会には、彼を目当てに奉仕活動へ参加する娘たちも増えはじめていた。
それでも二人の関係に変わりはなく、アデルとリオンは子供の頃と変わらず軽口をたたき合う。
ただ恋の話だけは、おたがい決して口にしなかった。
ある日、教会で作業をしていた二人のもとに子供達が駆け寄ってきた。
連れて行かれたのは、教会の祭壇の前。
壇上に立った小さな男の子がにやりと笑う。
「わしは司祭さまであーる! これからリオンとアデルの結婚式をとりおこなうぅーっ!」
張り上げられた声に、子どもたちは歓声をあげた。
二人は思わず目を見開く。
「結婚式ごっこだよ!」と、女の子が嬉しそうにアデルに囁いた。
恥ずかしがる二人に、まわりからいっせいに声が飛ぶ。
「ちゃんとやってーっ!」
「ほら、こっちー!」
「……しょうがない、付き合ってやるか」
リオンが照れくさそうに笑いながら呟くと、アデルも小さく頷いた。
一番幼い子から、小さな箱がリオンに手渡される。
その中には、シロツメクサで編まれた可愛い指輪が二つ並んでいた。
「病めるときもー……健やかなるとき……うーん、指輪交換っ!」
司祭役の子供の大きな声に、アデルとリオンは思わず吹き出してしまう。
それでも目を合わせ、少し照れながらお互いの手を取りあい、シロツメクサの指輪を交換した。
リオンの指先から伝わる熱をアデルは感じていた。
「では! ここで誓いのキスを!」
司祭役の子供がさらに声を上げると、周りの子供たちが一斉に拍手をした。
「こら、そこまでだ!」
リオンは真っ赤な顔で子供達に振り返る。
「そういうことは好きな人とするものだ、アデルお姉ちゃんに失礼だろ」
「えー! だってぇアデルお姉ちゃんが好きなのはリオンでしょ?」
「えっ」
「それにーリオンが好きなのはアデルお姉ちゃん!」
「!」
子供たちの無邪気な言葉に、二人とも答えることが出来ない。
アデルは顔を隠すように、ぱたぱたと手であおいだ。
「よーし! いまからおにごっこだー!」
「「「きゃーーー!」」」
リオンが子供たちを追いかけ始めると、全員が歓喜の声を上げながら散らばっていく。
その姿を目で追いながら、アデルは一人、指にはめられたシロツメクサの指輪をそっと撫でた。
駆けていくリオンも、指輪を愛おしそうに胸に押し当てていた。
お読みいただきありがとうございました
短編のつもりが少し長くなってしまったので連載を始めました。
今週中には完結する短期連載です(∗ˊᵕ`∗)
続きが気になる!と思ってくれた方は
ブックマークや応援いただけると嬉しいです☆




