08・二振りの剣
紅蓮と凪斗は、虹色の球の前に来ていた。
「これ、あの球だよね…どうして此処に…?」
「分からない…何かまだあるのか?」
凪斗が球に尋ねるが、先程と違って何も答えない。どうやら最初に教室で見た時と、同じ状態の様だ。
「…まあ、この球はひとまず置いておいて…」
紅蓮は球と反対側の方へと目を向けた。其処には宙に浮いた、二振りの剣があった。二振りの剣は鞘に収まった状態であり、一つは赤色に染まった剣で、もう一つは青色の染まった剣、対照的な色合いをしており、鍔の部分には何かの翼の様な装飾が施されていた。
「浮いてるけど…この球と関係があるのかな?」
紅蓮は剣があの球と同じ様に浮いている為、何か関係があるのかと考えた。凪斗はそれに答えず、剣に手を伸ばした。
「凪斗!」
紅蓮が突然叫び、凪斗は手を止めた。
「どうした紅蓮?」
「球に文章が…」
紅蓮に言われて、球に目を向けると、教室の時と同じ様に、文章が表示されてきた。
クロサキ グレン アカサキ ナギト
コの剣 ヲ あなタ達に 授けマス
コレが あなタ達のチカラに なります
と、平仮名・片仮名・漢字が入り混じった文章が表示されていた。
「…この剣を僕達に…?」
「僕達の力か…」
戸惑う紅蓮に対して、凪斗は考える様子を見せる。
「紅蓮…正直この世界で、僕達がどうなるかは分からない。でも力を貰えるなら、身を守る為に受け取ろうと僕は思う。君はどうする?」
凪斗に真剣な表情で尋ねられた。それはこの剣を受け取ろうという意味であると、紅蓮は理解出来た。紅蓮は言葉を告げる。
「そうだね…今は身を守る術は一つでも欲しい。僕も受け取るよ」
「分かった…紅蓮、君は赤い方の剣を取ってくれ。僕は青い方を取る」
「分かった」
凪斗に言われると、紅蓮は浮いている剣の、赤い方の剣に手を伸ばした。
「‐‐‐‐」
「!?」
剣を手に取った瞬間、紅蓮は何かに話しかけられた様な感覚に陥った。慌てて凪斗を見ると、凪斗は青い剣を手に取ったまま、驚愕的な表情で紅蓮を見ていた。
「紅蓮…何か言ったかい?」
凪斗が尋ねる。どうやら凪斗にも何か聞こえた様だ。
「ううん…凪斗こそ、何か言わなかった?」
「いいや…気のせいかな…?」
「……」
何となく紅蓮は、この剣が関係しているので無いかと考えたが、確たる根拠も無い為、凪斗には言わなかった。
「とりあえず、剣は受け取った」
そう言いながら凪斗は、剣をズボンのベルトの左側に差し、紅蓮もズボンのベルトの右側に差した。
「ゲームとかラノベだと、こういう謎の存在から貰った武器って、凄いアイテムって事は多いよね?」
「まあ、良くある話だよな…まあこれはゲームやラノベじゃなくて、現実だけど…」
紅蓮の言葉に同意しながらも、凪斗は現実である事も告げる。
この時二人は知らなかった…二人が受け取った二振りの剣…それが二人の想像を超える物だという事に…。
紅蓮は左利きなので、右側に差していて、凪斗は右利きなので、左側に差したんですわぁ。
感想・ブックマーク登録・レビュー・ポイント評価・質問等ありましたら、是非どうぞ♪