06・見知らぬ城と紋章
猫獣人になってしまった紅蓮と凪斗…。
「…何で猫なんだろう…」
草の上に座り込んだ、黒猫の獣人姿の紅蓮が呟いた。
「…人間で良くないかな?」
同じく座っている、虎猫の獣人姿の凪斗が呟いた。
「あっ! もしかして…」
紅蓮が何かを思いついた。
「どうした紅蓮?」
「いやあの…昼休みに時に、琉季が猫を見つけたじゃん…黒猫と虎猫…まさか…あれ?」
「いや流石にそれは無いかと…」
まさかあの時の琉季の、『猫二匹が、紅蓮と凪斗に似ている』発言が、今の自分達の姿かと考えたが、たったそれだけでとは、凪斗は考えられなかった。
「まあ、なってしまったのは仕方がないよね…本当なら死んでいた筈なのに、こうして生きているんだから…」
「そうだな…ところで紅蓮…此処は何処だ?」
凪斗の発言で、紅蓮は辺りを見回した。
「…城?」
自分達の姿に集中して気付かなかったが、自分達が今居る場所は、何処かの城の中庭の様だった。
「何処かの城みたいだけど…あの虹色の球は、僕達を本来送る国の隣国に、僕らを転送するって言ってたけど、その隣国の城なのか…」
「だとしたら凪斗。僕らは侵入者になるんじゃない…」
不安そうな声で、紅蓮が言った。
「…とりあえず、城の中に入ろう。それで誰かと会ったら、気付いたら此処に居たって、正直に話そう。相手が信じてくれるか分からないけど…」
と、凪斗が冷静な判断を下した。凪斗が頭の回転が速いのは知っていたが、紅蓮はこんな状況でも冷静に考えられる凪斗に感心した。
とりあえず城の人と会う為に、近くにあった扉から中に入る事に決めた。その際に自分達の近くに、自分達のカバン等が置かれているのに気づいた。紅蓮と凪斗は何かに使えるかと考えて、一応持っていく事にした。
二人は扉の前まで来る。
「開けるよ」
「う、うん」
凪斗は紅蓮に確認して、扉を開ける。扉の向こうは長い廊下であり、人の気配は感じられなかった。
「……」
凪斗は警戒しながら城へと入る。すると…
「すいませ~ん!!!」
と、大声で紅蓮が呼びかけた。凪斗は慌てて紅蓮の口を右手で塞いだ。
「ちょっと紅蓮! 何をやっているんだ」
紅蓮は凪斗の手を外しながら答える。
「だって凪斗…とりあえず誰かと会うなら、呼んだ方が良いかと…」
「そうだけど…んっ?」
凪斗がある事に気付いた。凪斗の目線は自身の右手の甲に向いていた。
「どうしたの?」
「いや…此れ…」
そう言って見せたのは、今見ていた右手の甲で、其処には風の様な模様があった。
「此れって…あの虹色の球がくれた、『真風の紋章』…だっけ…?」
「ああ…紅蓮、君には…?」
凪斗に言われて紅蓮も右手を見るが、其処には何も無かった。次に左手を見ると…
「あった」
其処には虹色の球が、『深雷の紋章』と読んでいた模様があった。
「僕は左手みたいだ…どうやら利き手に現れるらしいね」
「そうみたいだけど…とりあえず今は、人を探そう」
凪斗に言われて、紅蓮は一旦紋章の事を忘れて、城内の人を探す事にした。
紅蓮は左利き、凪斗は右利きなんですわ。
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