03・二人の実力
昼休み、紅蓮と凪斗と琉季は、体育館裏で昼食を食べていた。いち早く食べ終わった琉季が立ち上がる。
「ねえ紅蓮、凪斗。久しぶりに、アレをやってくれない? 見てみたくて」
そう二人に向かって言う琉季。
「ええ…此処で?」
紅蓮が嫌そうな表情で尋ねる。
「そうよ! だって二人共、道場には来ないから、見る機会が無いじゃない!」
琉季にそう言われて、咄嗟に紅蓮は凪斗を見つめる。凪斗は『仕方ないよ』と言った感じの笑みを見せてきたので、紅蓮は溜息を吐いた。
「しょうがないな…凪斗、やろう」
紅蓮が昼食を置いて少し歩き出すと、凪斗もそれに従う。そして琉季から少し離れた所で、お互い少し離れたまま向き合う。
「紅蓮、久しぶりに戦うな!」
「そうだね。でも僕は負ける気はしないよ! 琉季、合図お願い!」
紅蓮が琉季に目配せすると、凪斗も同じ様に目配せした。
「うん! じゃあ試合開始ぃぃぃ!!!」
琉季が高らかに宣言する。それと同時に、紅蓮と凪斗、二人の拳がぶつかり合った。
ドガッ! ドガッ! ドガッ!
激しく拳がぶつかり合うが、紅蓮と凪斗の二人の顔には、笑みが浮かんでいた。
「やるね凪斗! 隠れて鍛錬を積んでいたでしょ?」
「まあね! 紅蓮だってそうだろ?」
「あはは! やっぱり僕達似ているね!」
激しくぶつかり合いながら、二人は楽し気に会話する。
幼馴染の親友同士になった紅蓮と凪斗は、お互い似ている所があり、考えている事はおろか、好み迄一緒であった。しかし二人はそんなお互いの事が面白おかしく、今現在迄親友う同士でいたのであった。
暫く戦っていたが、スマホを見た琉季が叫んだ。
「二人共! もうそろそろ昼休みが終わるよ!」
「!」
「!」
琉季の言葉を聞いた二人は、同時に同じ事を考えた。
『次の一撃で終わらせる!』
そして二人の拳が、お互いに飛んでいく。
ドガァ…ドサッ…
打撃音の後に倒れ込んだ音が響いた…倒れているのは…凪斗であった。
「僕の勝ちだね、凪斗」
座り込んでいる凪斗を見下ろしながらグレンが言った。
「やれやれ…今回は僕の負けか…」
溜息交じりに凪斗が言う。紅蓮は凪斗に手を差し出し、凪斗はそれを掴んで立ち上がった。
「まあでも、凪斗も腕を上げたよ」
「紅蓮だってそうさ」
二人が健闘を称え合っていると、琉季がやって来る。
「やっぱり凄いね二人共! 流石はウチの道場のエース!」
「…元でしょ?」
琉季の言葉に、紅蓮がそう返した。
「…ねえ紅蓮、凪斗…やっぱり戻ってこない?」
琉季がそう尋ねると、紅蓮と凪斗は申し訳なさそうな笑みを浮かべる。
「その話なら前にしただろ? もう僕達は道場には戻らないよ」
そう凪斗が琉季に告げた。
「でもあの事は、二人は悪くないよ! お父さんも戻ってきて良いって、何時も言っているよ!」
「それでも…もう僕達は戻れないよ…」
と、今度は紅蓮が寂しげに言った。琉季は頬を膨らませる。
「ほら琉季。休み時間終わるから、もう行こう」
凪斗に促されて、紅蓮は歩き出し、琉季も不貞腐れた様に歩きだした。
「あっ!」
「!?」
「!?」
突然琉季が大きな声を出し、紅蓮と凪斗は驚いて足を止める。
「今度は何?」
「あれ見て!」
琉季が示した先にあるモノ…それは…
「…猫?」
琉季が示した塀の上に、黒猫と赤猫が丸くなって、紅蓮達を見ていた。
「猫がどうかしたの?」
凪斗が尋ねる。
「何かあの二匹の猫…紅蓮と凪斗に似てない?」
「?」
琉季に言われて、紅蓮と凪斗は再び猫を見る。猫達は欠伸をしながら、紅蓮達を見ている。
「何処が似ているんだよ? 琉季?」
紅蓮が尋ねる。
「いや…何となくかな…」
笑いながら琉季が言う。紅蓮と凪斗は呆れながらも、琉季を連れて教室へと戻っていった。
何時も君と一緒…きっとこれからも…どんな苦境や困難が来ても…君と一緒だから…怖くない…。
道場って何やろ…? 三人の過去に何が…?
感想・ブックマーク登録・レビュー・ポイント評価・質問等ありましたら、是非どうぞ♪