11・繋がった電話
『転生したドララー』、『TSの銀髪美少女』は人気があるのに、此れと『蒼の瞳の騎士』はなかなか人気が出ないですなぁ…でも頑張りますわ!
「…師匠に連れられて、キャンプに行っていて良かったね」
「…キャンプで学んだ知識等が、この状況で役立つとは思わなかった」
夕食を食べ終えた紅蓮と凪斗が話していた。
現在二人が居るのは、広間とは別の小部屋で、其処で部屋に置かれていたカップ麺を食べたのであった。お湯に関しては『やかん』も置かれており、それに水を注ぎこんで、キャンプで学んだ事を生かして沸かして作ったのであった。
「…ねえ凪斗、これからどうする?」
空になったカップ麺の容器を片付けながら、紅蓮が尋ねた。
「そうだな…とりあえず明日、この城の付近を探索してみよう…異世界とか聞いていて、実は日本のどっかでした…何て間抜けな話すぎるし…」
「…仮に日本だとしたら、今の僕達の姿を見られたら…大変な事になるね…」
警察やらマスコミの格好の的になる事を想像し、引き攣った笑みを浮かべる紅蓮。何か話題を変えようと、紅蓮はスマホを操作する。その時紅蓮は、ある事に気付いた。
「ねえ凪斗…今気づいたんだけど…このスマホ…アンテナ立っているよ」
「…えっ?」
紅蓮の指摘を受けて、凪斗は自分のスマホを取り出して確認すると、確かに紅蓮の言うとおり、アンテナが立っていた。即ち…。
「これ…連絡出来るんじゃない…?」
そう紅蓮が呟いた。
「連絡って…誰に?」
凪斗が尋ねる。
「…琉季?」
紅蓮に幼馴染の名前を出され、凪斗は少し考える様な様子を見せ、納得した表情を浮かべる。
「うん…何か琉季に黙ってたら…怖いね…」
普段の琉季の事を考え、自分達の無事を知らせないと、後が怖いという感覚に陥った二人。
「琉季って結構心配性だからね…でもどう連絡しようか…」
「とりあえず…LINEで…」
そう言って紅蓮は、自分のスマホで琉季宛てにLINEを開いた。
琉季、もしこのメッセージを見たら、他の皆が居ない所で、電話をしてほしい
その文章を入力し、LINEを送った。
「でも琉季達…他のクラスメイトが、本当にこっちの世界に来ているか…あっ」
紅蓮が凪斗に、クラスメイトの所在を言っていると、琉季宛てのLINEに、『既読』の印が付いた。すると…紅蓮のスマホに着信が来た。
「わっ!? もう来た!」
鳴り続けるスマホを見つめる紅蓮…電話に出ない…。
「出ないの?…そうだよね…」
凪斗は納得した様に呟いた。
「うん…怖い…」
突然居なくなった幼馴染(紅蓮と)達(凪斗)に、心配する幼馴染(琉季)…その行方不明の幼馴染(紅蓮と)達(凪斗)から連絡が来たら…幼馴染(琉季)は安堵し…そして怒る…。紅蓮と凪斗は容易に想像が出来た。
「でも出ないとさ…後が怖いよ?」
凪斗がそう呟く…。紅蓮も琉季が居るのは自分達が居る国の隣国だと知っていて、琉季の方は紅蓮達の居場所は知らないが…紅蓮も琉季の性格を考えたら、何となく二人の居場所を見つけそうな気がした。
「うん…出ようか…」
紅蓮は覚悟を決めて、スピーカーのアイコンをタップした後、通話のアイコンをタップした。
「…もしも」
『紅蓮!? 何処に居るの!? 無事なの!? 凪斗はどうしたの!?』
紅蓮の声を遮って、スマホから響く琉季の大声。その声に驚いて紅蓮は、スマホを床に落としてしまう。慌てて凪斗が拾った。
「大丈夫だよ琉季…僕も紅蓮も無事だ」
『凪斗…!? 良かった…二人共無事だったんだね…何処に居るの? すぐに迎えに行くよ』
紅蓮と凪斗は、琉季の本当に今すぐ探しに来そうな雰囲気が、スマホ越しからも感じられた。苦笑いしつつ紅蓮が説明する。
「此処が何処かは分からないけど、琉季達が居る国の隣国だって事は分かっているんだ」
『どうして紅蓮と凪斗だけ、その隣国に居るの?』
紅蓮は何て話そうか悩んだ。全てを話せば、今の自分達の姿の事まで話す事になりそうだからである。
悩んだ末に、紅蓮はこう告げた。
「あの虹色の球があっただろ? あの球に触れたら、僕と凪斗だけ隣国に飛ばされたんだ」
此れは嘘は言っていない。肉体が滅んだ、猫獣人の肉体を与えられた事を言っていないだけで、事実しか述べていない。
『そっか…無事で良かった…あれ? じゃあ紅蓮と凪斗もこの世界に居るって事だよね? どうして電話が出来るの?』
「分からないんだ。スマホをよく見たら、アンテナが立っていたから、ダメ元で琉季にLINEを送ったら連絡出来たんだけど…」
『でもさっき、私のスマホを見たら、アンテナが立っていなかったよ。他の皆も立っていなかった』
「そういえば、クラスメート全員、琉季の居る国に居るの?」
凪斗が尋ねた。
『う、うん。紅蓮と凪斗以外はね。神山の奴は、『黒崎と赤崎は、何処かに逃げたって』って高らかにほざいていたけど、私は『そんな事ない!』って反論してやったよ!』
得意げに語る琉季に、紅蓮と凪斗は苦笑する。すると凪斗は少し考えて、琉季に伝えた。
「琉季。悪いけど、僕と紅蓮が隣国に居る、琉季のスマホと連絡が出来る事は、皆には伝えないでほしい」
「凪斗?」
紅蓮は凪斗の顔を見て戸惑うが、直ぐに察しがついた。自分達を嫌っている勇樹が、二人が隣国に居ると知ったら、無理矢理探しだそうとするのが、容易に想像出来たからだ。
『う、うん良いけど…二人はこっちには来ないの?』
「うん…今の所は…」
紅蓮が気まずそうに返した。元々この世界の事が、まだ分かっていない事の上に、今の自分達の姿を、琉季には見せたくないからである。
『…分かった…でもまた連絡してね! こっちから連絡したら、神山にバレるかも知れないから、なかなか出来ないと思うけど』
「うん…分かった…」
少なくともそれだけは約束した。
『紅蓮…凪斗…気を付けてね。何かあったら直ぐに私を呼んでよ! 隣国だろうと世界の裏だろうと、すぐに駆け付けるからね!』
琉季は本当にやりそうな気がした為、紅蓮と凪斗は笑ってしまう。
その後、少しだけ会話をして、紅蓮は琉季との通話を切った。
何故か繋がった電話でしたが、幼馴染に安否を伝える事が、出来ましたわぁ。
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