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イチオシ短編

私があなたより優れているという根拠

作者: 七宝

 落ち着いて聞いてほしい。実は私は、自由自在に鳥肌を立たせることが出来る。変な団体に捕まって人体実験をされたら嫌なのであまり(おおやけ)にはしてこなかったが、実は出来るのだ。


 ブラウザバックしようとしたそこのあなた! ちょっと待ってくれ!


 恐らくあなたは「珍しいかもしれんけど、別に優れてないやん」と思ったことだろう。ただ肌がトゲトゲになって、毛が逆立つことの何がすごいのかさっぱり分からない、といったところだろう。


 気持ちは分かるが、とりあえず私の話を聞いてくれないか。私が凄いか凄くないのかというのは、話を全て聞いてから判断していただきたい。


 そもそも鳥肌とは、ただ肌がトゲトゲになって毛が逆立つだけの現象ではないのだ、ということをお伝えしたい。


 まずは鳥肌が立つまでのメカニズムを簡単に説明していこうと思う。


 私以外の人間はほとんどの場合、寒さを感じると交感神経が優位になり、ノルアドレナリンやアドレナリンが放出される。


 これらのはたらきによって鼓動が早くなり、当然血圧も高くなる。これによって体温が逃げにくくなるのだが、鳥肌が立つのはなにも寒さを感じた時だけではない。緊張した時や、感動した時にも立つはずだ。


 緊張するとなぜ鳥肌が立つのか。これは武者震いという言葉があるように、体が闘争モードになっているからだ。


 ノルアドレナリンで緊張感を強めて、周りにいるであろう敵を察知する。また、皮膚の血管を収縮させて、怪我をした時に出血しないようにする。


 などと書き連ねたが、実のところ私はよく分かっていない。私は医者ではないので、昔どこかで覚えたそれっぽい知識をそれっぽくまとめて書いているだけである。


 私が何を伝えたかったかというと、鳥肌とはただ肌と毛が立つだけではなく、体の中でいろいろ起きて、体温調節なんかもしてくれている素晴らしい体の機能なんだよということを伝えたかったのだ。


 これを自由自在に引き起こすことが出来るのだ。「凄い」以外のなにものでもないだろう。尊敬してくれてかまわないよ。伝授は出来ないけど。


 ただ、これには2つ欠点がある。私が鳥肌を立たせようと思って取り掛かってから実際に立たせるまでの約1.5秒の間、私はとても間抜けな顔になるのだ。それに加え、この1.5秒の間に鼻の穴が2、3回ヒクヒクするのだ! 間抜け顔の極みである!


 また、この1.5秒の間に敵が攻めてきても私は対処出来ない。鳥肌に集中しているため、完全に無防備だからだ。これが本当に悲しい。超悲しい。


 だが、私も1つの武器だけで戦うほど愚かではない。これだけだとまだ「別に凄くないやん」と思う人が4%くらいの割合でいることだろう。第2の矢、準備してますよ! (小声)


 第2の矢、それは⋯⋯


 私がその気になれば鼻くそだけで生きていける、ということだ。近い未来か遠い未来か、はたまた私が生きているうちに訪れない未来かもしれないが、必ず食糧難の時代が来る。

 その時、あなたたちは肉の代わりに虫を食べ、野草を取り合うことだろう。


 しかし私は違う。鼻くそがあれば生きていけるのだ。あなたは今「鼻くそだって何か食べないと生成されないだろ」と思っただろう。奇遇だな。私も今書きながらそう思った。なにか言い訳を考えなければならないな。


 そうだ、私は「鼻くそだけ」とは言ったが、「自分の鼻くそだけ」とは言っていない。みんなが私に鼻くそを恵んでくれさえすれば私は生き長らえることが出来るのだ。どうだ、すごいだろう。え? すごいけどそれはもう人としての尊厳を失っている? そこまで言う? 鼻くそ食べると人間じゃなくなるの? それ、誹謗中傷ですよ。誰が何食べたっていいじゃないですか。あなたに迷惑がかかるわけじゃないでしょ! お墓ーーーっ! 間違えた、おバカーーーーーーっ!!!!

 でもさ、自由自在にアドレナリンとか出せるって考えるとすごくない?

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