第2話 勇者アスティに初めての感想を送る
次の日。
学校から帰ってきた僕は、さっそくパソコンの電源をつけて、「ノベり。」にログイン。もちろん、アスティの様子を見るためだ。
彼女は昨日、僕のお気に入り登録と応援ポイントで、12の応援スキルポイントを手に入れたはずだ。さて、どんなふうに活用しているのだろうか……。
更新通知を見てみると、アスティの作品はちゃんと更新されていた。
僕はさっそく、最新話のアスティの様子を読んでみる。
アスティは、初めてのお気に入り登録と応援ポイントをもらって、それはもうメチャクチャ喜んでいた。読んでいるこちらが恥ずかしくなる勢いで喜んでいた。
そして、その喜びの勢いのまま。
応援スキルポイント10点を使って「釣り超人」のスキルを習得したようだ。
……いや、なんでよりによって釣りなの?
もっとさ、こう、他になかったの?
一応解説しておくと、「釣り超人」のスキルは、ノーマルスキルである「釣り名人」や「釣り達人」をも凌駕する、究極の釣りスキルらしい。そのまんまじゃん。解説する意味あった?
一応、もう少し読み進めていくと、アスティがこの「釣り超人」のスキルを選んだ理由が分かった。
なぜなら、彼女は魚料理が好きだから。
これで美味しいお魚をたくさん釣って、美味しいお魚料理をたくさん食べるつもりらしい。知らんがな。
第一話から読み進めていって薄々と感じてはいたが、どうやらアスティは、いわゆる「アホの子」のようだ。
元気いっぱいで猪突猛進。
考えるより先に動く。
というか、考えるという選択肢が無い。
困っている人がいれば、すぐに助ける。
たとえ魔物であろうと、困っていたら助ける。
そして、どんなに強大な魔物が立ちはだかろうと、恐れず立ち向かう。
弱きを助け、悪しきを挫く。
絵に描いたような、優しい勇者様。
絵に描いてるんじゃなくて、文字として書かれてるんだけど。
うん。不安だ。
彼女の冒険の道行きが、これ以上ないくらい不安だ。
アホの子属性+正義の味方属性とか、いつどこでお陀仏してもおかしくない。
せめて、どんなスキルを優先して習得するべきか。
それくらいは助言してあげたい。
そう思ったのだが、応援ポイントでどんなスキルが習得できるのか、一覧表らしきものが作品内には見当たらなかった。こういう重要な設定データは、作者は最優先で書いているようなイメージがあったのだけれど……。
仕方ない。直接聞いてみるしかないか。
僕は感想記入欄の「気になってしょうがない点」に、応援スキルの一覧表が見てみたいという旨のメッセージを書いた。それだけだとちょっと味気ないので、「グッドな点」に「いつも楽しく読ませてもらってます」といった感じの挨拶を書いておいた。
そしていざ、感想送信。
寝る前には返信が来るかな?
……と思いきや、五分後に来やがった。
向こうも現在進行形で「ノベり。」にログインしていたのかな。
アスティからの返信には、こう書かれてあった。
『わー! 初めてのご感想だー! ありがとー! 少しオールドくんのユーザーページを覗かせてもらったんだけど、私に初めてのポイントとお気に入りをくれたの、オールドくんだったんだね! 本当にありがとうー! おかげさまで、今日は美味しいお魚が釣れました!』
さっそくフィッシングしていらっしゃるぞこの勇者。
ちなみにオールドっていうのは、僕の「ノベり。」のユーザー名ね。
アスティからの返信には、まだ続きがある。
『応援スキルの一覧表だね! たしかに、読者のみんなにも見てもらったほうが、いろいろとアドバイスが聞けるかも! 私の、かつどーめも?に載せておくから、読んでみてね! どのスキルをゲットしたら良いか、アイデアがあるなら聞かせてくれると嬉しいなー!』
……以上である。
そういえばこの作品、アスティ自身が「ノベり。」のユーザーとして登録しながら書いているって設定だったから、感想の返信もアスティ本人から届くのか。これはちょっと新体験だな。普通、作品のキャラが読者に感想返信することってないもんな。
まぁ……どうせ、なりきりごっこなんだろうけれど。
アスティの中の人も、きっといかにも二次元大好きそうなおっさんデブオタクに違いない。そう考えると、さっきの返信も「うわぁ……」となってくる。
その後、彼女の活動メモを覗きに行くが、一覧表はまだ更新されていなかった。
小説とは勝手が違うだろうし、作成に手こずっているのかもしれない。
これは、もう少し待つ必要がありそうだ。