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第1話 勇者アスティとの出会い

※あらすじの注意事項をお読みになってない方は、どうか一度だけでもお目通しをお願いいたします。大事なことが書いてありますゆえ。


 すでにお読みになっている方は、どうぞ本編をお楽しみください。

 僕の名前は古庄(ふるしょう) 和人(かずと)

 ネット小説を読むのが好きな高校二年生。

 ちなみにこの名前はもう二度と出てこないので、忘れてもらって構わない。


 ある日のこと。


 僕がいつものようにパソコンで「ノベり。」というネット小説投稿サイトを開き、面白そうな作品を探している時のことだった。


「更新されたっぽい連載小説」の一覧を見てみると、気になった題名の作品が一つ。


『皆からの応援で最強勇者!(♀) ~応援ポイントをスキルに変える能力で、最強魔王を倒します~』


 応援ポイントを、スキルに変える……?


 いちおう説明するが、応援ポイントとは、読者が作品を読んだときに、その作品がどれくらい良かったかを点数形式で作者に送信するシステムである。読者一人につき、最大10点まで送れる。


 僕が最初に抱いた率直な感想は、「ポイントクレクレもここまで来たか……!」というものだった。読者参加型の小説ならば多くの人間を呼び込めると思ったのだろうが、ネット小説の世界はそんなに甘くない。まぁ、僕は読み専なのだけれど。書き専の友達が言ってた。


 ちなみに、ネット小説投稿サイトの最大手である「小説家になろう」では、ポイントが入力されないことで不利益を(こうむ)る読者が出てくる可能性のある行為を禁止している。まぁつまり、評価ポイントによって小説の内容が左右される作品の投稿は禁止されているということだ。


 しかし、いま僕が閲覧しているサイト「ノベり。」では、幅広い種類の作品を投稿してもらうため、そういった制約は特にないらしい。


 だからこの「ノベり。」では、僕がいま読んでいる「ポイントで強くなる勇者のお話」も合法ということだ。しっかりしていらっしゃる。


 それで、この作品の主人公は、アスティという名前の女の子らしい。

 ちなみに御年は16歳。

 しっとり栗色のツインテールで、華奢な体型だとかなんとか。

 第一話で本人がやたらと熱く語っていた。


 作品の形式としては、あらすじから本文に至るまでアスティ自身の語りで進行していく。ただ、よくある一人称の実況型小説とはちょっと違い、その日の終わりにアスティが一日の出来事を日記のように、作品として書いていくという形式のようだ。少し変わっている。


 もう一つ変わっている点がある。それは、この作品の作者名が、この物語の主人公名と同じく「勇者アスティ」となっているところ。


 どうやらこの作品、アスティ自身が「ノベり。」のユーザーとして、応援ポイントを手に入れて世界を救うためにこの作品を書いているそうだ。まぁ、そういう設定なのだろう。随分と熱の入ったなりきりごっこ(ロールプレイング)である。


 勇者アスティの能力は題名にもある通り、この作品に入った応援ポイントをスキルに変えることができる能力。


 アスティには、大きく分けて二種類のスキルシステムが存在するようだ。


 一つは、この物語の中でアスティ自身がレベルアップしたり、アイテムを使ったりすることで得られる普通のスキルポイントを割り振って習得する、普通のスキルシステム。通称「ノーマルスキル」。


 そしてもう一つが、読者からの応援ポイントを特殊なスキルポイントに変換し、そのスキルポイントでしか習得できないスキルを習得するシステム。通称「応援ポイントスキル」。


 ちなみに、気になる作品を登録して、いつでも読めるようにできる『お気に入り登録』というシステムがあるのだが、このお気に入り登録をすると対象の作品に応援ポイント2点が入る。この2ポイントもスキルポイントに換算できるらしい。


 そして、どうやら応援ポイントスキルの方が、ノーマルスキルより強力なものが揃っているようだ。よって、読者がたくさん応援ポイントを入れてあげれば、アスティもどんどん強くなるということ。


 強くなって魔王を倒すのが、アスティの冒険の目標のようだ。


 とはいえ、現実は甘くないようで。


 小説情報のページを見てみると、この作品に入っている応援ポイントは清々しいまでの0ポイント。当然ながら、これでは何のスキルも購入できない。


 そのため、アスティは現在、ノーマルスキルだけを習得して頑張っていた。


 しかし、魔物たちはアスティが応援スキルを習得することをある程度想定して強さを設定されているらしく、アスティはいつもハードな戦いを強いられている。


 一体の魔物と戦うだけでも大苦戦の勇者アスティ。

 日々の稼ぎは、ほとんどが回復薬などの購入費として消えていく。


 アスティは、今日は宿に泊まる余裕も無いらしく、町の橋の下で野宿だそうだ。晩ご飯は近くの食堂の売れ残りを分けてもらっていた。そして、橋の下で涙目になりながら、パサパサのパンを食べている様子が文末に書かれていた。


 一つの世界の命運を任されている勇者にしては、あまりにもみすぼらし過ぎやしないだろうか。文句なしのド底辺である。


 なんだか可哀想になってきたので、僕はこの作品に、ひいてはアスティに10ポイントとお気に入り登録を一件入れてあげた。


 これでアスティの応援ポイントは12ポイントになった。

 これなら、多少はマシなスキルを揃えることができるだろう。


 その後、僕はこの作品を「更新確認している小説」に加えた。

 この厳しい「ノベり。」の世界で、彼女がどこまであがいていけるか見てみたくなったからだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 不憫なアスティちゃんに涙です。゜(゜´ω`゜)゜。 頑張れ〜!って応援したくなります!! 私からも受け取って(*≧▽≦ノノ゛☆.+゜えいっ♪
2021/10/23 19:47 退会済み
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