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厠倶楽部  作者: 厠 達三
70/120

サイレントアグレッサー

 3話ほどの掌編であります。いちおうSFの体裁を取ってはいますがヒューマン系に分類されると思います。

 実は昨年に校了していた作品なのですがその時ちょうど「ゼイリブ」という昔のSF映画が放送されまして、「あ、これほとんど内容一緒や」と気付き封印しておりました。

 でもあれから一年経ち、他にネタもないのでここに掲載することとします。映画とは比べるべくもない薄い内容ですがお手柔らかにお願いいたします。


 宇宙人による静かな地球侵略が行われていた。静かな、と表現するのは侵略される側も気付かない方法だったからだ。まずターゲットの地球人を宇宙人が拉致。宇宙船に連れ込み、ある施術を行う。早い話が被験体となった人間の脳から記憶、意識、人格を消去し、宇宙人の人格を上書きする。この方法によって宇宙人は地球人になりすまし、その存在を知られることもなく地球侵略は着々と進められていった。


 が、これに気付いた地球人も少なからず存在した。突然変異的に出現する、特殊能力を持つ者達だった。

 その一人(仮に異能者Qと呼称する)は、テレパス能力によって宇宙人の侵略には気付いたものの、どう対抗すればよいのか分からない。異能者Qの能力は限定的で、人の心が読めるわけではない。辛うじて宇宙人が人間になりすましているのが分かる程度だった。もちろんそれを証明する術はないし、自身の能力が実在するのかも疑わしい。異能者Qの誇大妄想という可能性も否定はできないのだ。が、異能者Qの実感としては、宇宙人になりすましている地球人は確実に増えつつあるということだった。


 異能者Qはこの事実を伝えるために僅かながらの努力もした。ネットに匿名で侵略の事実を噂として流す。オカルト誌に投稿をする。いち市民に過ぎない異能者Qにできることはその程度だった。世間にとってはありふれた都市伝説が一つ増えたに過ぎなかった。


 テレビで見る著名人や政治家、タレント、スポーツ選手、その中にも宇宙人はいた。やがて異能者Qの身近な人たちにまで宇宙人が成り代わり始めた。それでも世界は平穏だった。


 たった一人で侵略に抗ってきた異能者Qだったが、ついにその存在を侵略者に掴まれてしまった。ネットへの匿名の書き込みから所在が割れたらしい。それほど侵略者は社会を侵食していたのだ。が、その侵略者たちは異能者Qを捕らえて殺すような真似はしない。彼らはまず異能者Qとのコンタクトを取った。


『君だね。我々の存在に気付き、我々の侵略行為を社会に告発しているのは。君のような異能者はこの星に少なからず存在する。が、無駄なことだ。大人しく諦めてはくれないだろうか?』


 もちろんこんな都合のいい申し出を受け入れられるわけがない。


「ふざけるな! 勝手に人の星に上がり込み、そこに住む人々に成り代わるような、卑劣な侵略行為をしておきながらよくそんな物言いができるな! ここで私を殺すなら殺すがいい! だが、私の遺志を継ぐ者はきっと現れる。お前たちの侵略に人類が気付き、立ち向かう日が必ず来る。そのときこそ本当の戦いが始まるんだ!」


 異能者Qは死を覚悟していた。あるいは自分もまた宇宙人に体を乗っ取られるのか。どのみちもう助からないと覚悟を決めていた。異能者Qの周囲を10人前後の人間が取り囲む。が、見た目は人間でも、その中身は、心は侵略者なのだ。


 その中のリーダーらしき宇宙人は、異能者Qの態度を見て嘆息した。




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