表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
厠倶楽部  作者: 厠 達三
5/120

ドライブレコーダー 4

 警察の受付で事の次第を説明すると、なんと刑事課に行けと言われた。事件として捜査を始めたのは想像に難くない。やっぱり早めに行動起こして正解だった。映像が上書きされた後だったらどうなってたか。

 恐る恐る刑事課のドアを叩く。公務員というよりそのスジと言った方がしっくりくるような強面の私服刑事に案内され、応接室のような部屋へと招かれ、俺の持ってきたメモリーを一緒に確認させられることになった。この状況からして警察が失踪事件の手掛かり探しに熱心な事実が窺い知れた。


 数人の刑事が見守る中、俺はパソコンを操作する刑事に少年が映っていた場所を指示。刑事がカーソルを合わせる。映像が例の緩いカーブに差し掛かる。が、俺は我が目を疑った。

 確かにあのカーブなのに青い上下の少年がいない。そんなはずはない。刑事たちも顔を見合わせる。俺は極力平静を装い、違う箇所の可能性を示唆する。が、いくらカーソルを移動させても少年が映っている場所は他にありそうもない。そりゃそうだ。あの集落に向かう山道の映像は一箇所しかないのだから。


 結局、最初から最後まで、多少の端折りはあったものの、映像を確認したがあの少年は姿を消していた。俺は狐にでも抓まれた気分だった。一方、刑事たちは苦笑していたのが救いではあったが。

 こういう記憶違いはよくあるんですよ、などと労いの言葉を掛けられ、俺は持ってきたメモリー抱えて刑事課を退出する。また何かありましたらご一報を、という社交辞令を餞別に頂きつつ。


 帰りの車中、俺はまだ納得がいかない。支店長と映像確認した時は確かに少年が映っていたんだ。それは支店長も確認している。その時は確かにあの少年は映ってた。しかし俺がいま持ってるメモリーには少年が映ってない。

 どこかでメモリーがすり替わった? 馬鹿な。ドラレコの映像は確かに俺が運転していた車輌のものだ。俺が支店長と確認した青い上下の少年だけが映像から忽然と消えていた。まるで神隠しにでも遭ったように。そう思うと背筋が急に寒くなった。


 そうだ。この映像はバックアップを取っていたはずだ。いや、正確には俺が持ってるのがコピーで、会社にあるのがオリジナルだ。それを確認しよう。きっとコピー作業の段階で何かの不具合が生じたに違いない。俺は車を再び会社に向ける。

 会社に舞い戻ってすぐ俺は支店長に事の顛末を報告。俺は支店長にあの少年が映ってましたよねと確認した。支店長も頷いている。

 二人してオリジナルの映像を再び確認。が、いくら確認してもあの少年はいなかった。オリジナルの映像からもあの少年が忽然と姿を消していた。俺は何度も支店長に確認した。が、支店長もはっきり憶えていないなどと煮え切らない。しまいには記憶なんていい加減なもんだから、などとまるで最初から少年など映っていないようなことまで言い出す始末。その気持ちも分からなくもないが。


 とにもかくにも、少年が映っていないのなら俺は失踪事件の容疑者にされる心配はないのかもしれない。警察に勘違いの情報提供しに来たただの間抜けで終わりそうだ。それはそれでありがたいが、俺はなにか引っかかるものを感じていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ