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厠倶楽部  作者: 厠 達三
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いつか咲く君に SIDE B  10

 いちおうあいつの絵柄を意識して真似たイラストも投函し、急に緊張の糸が切れた。考えてみればあいつが読者コーナーを確認してるかは全く不明。でもサクラとはいえ自分の絵が掲載されてるんだ。プロならチェックとして目を通すくらいはしてるだろう。とはいえ、あいつがチェックするのは自分の絵が掲載されてる号だろうから、ふた月に一度なんだよな……


 そうなると次の号は息抜きの月になる。が、僕に息抜きしてる暇などない。少しでもあいつの作風に近付かなくてはならない。そうだ。あいつの画力を盗むのなら同じような絵をパクってるだけじゃダメだ。幅広くパクって盗んで、自分のものにしていかないと。


 そこで思いついたのがあいつが2年前に違う作風でやってた、ペルソナってペンネームだった頃のイラストをパクるってこと。こっちは魔界彗星よりまだ流行寄りで年齢低めの女のコを描いてる。これはさすがに凄いと思う。こんな描き分けできるのもプロの技術なんだろう。でも、これも盗まないとあいつの作風は盗めない。素人には高い壁だけど挑まない限り攻略できない。


 しかしちょっと挑んだだけで挫折を味わうことに。いきなり作風を変えるなんて素人には無理。なにしろ僕は今まで流行から外れた、等身と年齢高めの女性キャラばっかり描いてたんだから。都合よく流行に乗った絵なんて描けるわけない。とはいえ、来月号にはあいつは現れないはずだから幾分気はラク。肩の力が抜けたのもあったのか、久々に楽しんで描けた。ここしばらく邪な感情で絵を描いてたから心が荒んでたのかもしれない。

 完成したのはセーラー服着た女のコがあぐらをかいてるだけの平凡な絵。でも、僕にしてはいいデキだと思った。完成度はそれこそ素人レベルですけどね……いや、それは分かっちゃいるんですけどね。

 あいつの画力を身に付けるのなんて何年かかるのやら。ま、その頃にはあいつも読者コーナーから消えてるかもしれないけどね。


 そしてあいつが登場するであろう号の発売日となった。いつもならワクドキで緊張するもんだけど、今の僕にはなんの感慨もない。僕のイラストが掲載されるか、ボツられるか、そんなことにも興味はない。関心があるのはあいつ、魔界彗星の動向のみ。


 しかし期待していた絵のかぶりはなかった。僕があいつをパクった絵は珍しく大きめに掲載され、やはりあいつは最後のページに小さく掲載されていた。僕が当たりをつけた構図とも全く違っていた。意識してない時はかぶることって結構あるんだけど、狙うとなると意外と難しいのかもしれない。

 今回は空振りだった。まあいい。再来月にもチャンスはある。


 が、そんな甘い見通しはすぐにぶち壊された。翌月号にも魔界彗星は突如現れ、その絵は僕のちっぽけな野心を打ち砕くのに充分だった。さらにその号の巻末には雑誌の休刊を伝える告知がなされていた……



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