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厠倶楽部  作者: 厠 達三
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いつか咲く君に SIDE B  (全14話)

参考書籍


若冲  澤田瞳子 氏著

絵金、闇を塗る  木下昌輝 氏著

フェルメールの仮面  小林英樹 氏著

どうしても許せない人  加藤 諦三 氏著



 これが公開される頃は拙作「いつか咲く君に」が完結しているものと思われます。本作はその別視点での作品であり、作者としても初めての試みであります。例によって完結後に解説しますよ〜


 どうして僕はこんなにも絵が下手なんだろう。いや、分かってはいるんですけどね。センスがない。努力が足りない。勉強してない。なによりそんなに好きじゃない。思い当たる理由はいくらもある。それらを克服しようともせず、無条件で絵が上手くなれるんなら絵を描くという行為自体が成立しない。みんながみんなそんなことできないから多くの人が絵に心惹かれるのであって。

 素人の僕にだって絵の良し悪し、上手い下手くらいは人並みに分かる。誰だって分かる。僕の描く絵は下手で魅力もない。そりゃそうだ。ろくすっぽ絵の描き方も知らない素人なんだから。


 それは別に技術に限った話じゃない。素人の描いた、全然上手じゃない絵でも魅力のある場合もある。でも、やっぱり技術はないよりあった方がいいに決まってる。確かな技術で描かれた絵は魅力的な絵じゃなくても充分魅力がある。絵の上手い人ってのはそれだけで大きなアドバンテージだ。いや、それを努力もしてない奴が羨んだって詮ないことってのは分かってるんですけどね。ええ、分かってはいるんですよ。


 ただの素人に過ぎない僕がまるで本物の絵描きか、蒐集家のようにこんな大仰な理屈をこねるのも、言い訳きかない自分のダメさを見せつけられるからに他ならない。


 僕は数少ない趣味のひとつとして雑誌の読者コーナーにイラスト投稿している。その雑誌ってのも人に言うのも憚られる、いかがわしい雑誌ではあるんだけどね……でもいいだろ。他になんも楽しみないんだから。


 小学生の頃、交通安全だかの標語で賞を貰ってなんかの機関紙に掲載された。その時の興奮は今でも少し覚えてる。社会人になって、なんの刺激もない毎日送って、そのまま一生を終えると思うと急に不安に駆られ、刺激を求めて雑誌に慣れない投稿をしてみた。でも慣れないことやったところで早々掲載されるわけがない。


 消極的な僕にしては珍しくファイトが湧いて、初掲載された時の感動はなかなかだった。が、その後は連敗続き。掲載という感動の虜になった僕はとにかくマイナーな雑誌を手当たり次第に漁って、どうにか常連に収まれる今の雑誌に巡り会えた。ただし、慣れないイラストの投稿者として。


 試行錯誤して文字ネタに下手な落書きを添えたのがきっかけだったけど、それが掲載されるんだから世の中は分からない。しかも適当なペンネームでいろんな雑誌に送りまくったため僕のペンネームは「うっちゃり八兵衛」なんて、うっかり取り返しのつかないものになってしまった……

 いや、ペンネームくらいは変えられるんですけどね。でも、常連にもなりきれてない、絵も下手なド素人がいきなりペンネーム変えたりしたら編集さんに負担がかかる。折角掲載に引っかかったのに、また連敗街道に転落するかもしれない。そんな漠然とした不安があってこの恥ずかしいペンネームのまま活動している。でもいいんだ。僕の投稿作品を掲載してくれる太っ腹な雑誌があるってだけで。


 でも、どうにも困るのは僕は常連の中でもトップクラスに絵が下手ってこと。いやね、そりゃ分かってるんですけどね。


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