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厠倶楽部  作者: 厠 達三
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自殺者の死に戻り ~後日談~ 7/4


 狂ったようなセミの鳴き声の下、これまた狂ったみたいにヤケクソな猛暑の中、地図アプリ片手にテクテク住宅地を歩いている。なんでこんなことやってるのか僕自身もよく分からない。


 あのイタズラ手帳はこう締め括られている。

『私が死んでいたら、私の予感は正しかったということになる。死の運命を回避できなかったということだ。


 もし、この手記を読んでいる人がいたなら、願わくば私の妻子にこの事実を伝えてほしい。私が人生をやり直していたことを。

 私が死ぬのは運命であり、自業自得であり、妻子には何の咎もないことを。


 そんな私に幸せなやり直し人生を与えてくれた妻と子に感謝している、と』


 おーし、だったら伝えてやろうじゃん。んでもってこれがタチの悪い不謹慎なイタズラだっていうことを証明してやろうじゃん、という使命感と正義感に駆られて猛暑の中、いまこうして見知らぬ住宅地を歩いてる。


 ネットで調べたものの手記のボロはほぼ発見できなかった。人物の名前や自宅の住所は一致してたし、経営してたという農産物販売会社も現存していた。

 つまりあの手記のツッコミ所は人生やり直しという稚拙な設定のみで後はほとんど穴がない。

 そこまで調べあげたんならもうちょっと「らしい」設定をしそうなもんだけど、それがないということはやっぱりこの手記は本物なんじゃないかとさえ思い始めた。


 最後の糸はあの家族写真。こいつでウソを暴くしかないと、こうしてその人物の自宅近くまで来たってわけ。家族の顔さえ確認すればもうゲームオーバーだ。

 いや、もしかするとそんな自宅さえ存在せず、家族なんていないのかもしれない。そうなればこのバカげた調査も無事終了だ。


 が、その住所に到着すると確かにやり手実業家の家っぽい、高級感のある建物があった。まあ住宅地なんだから家があるのは当然だけど。

 表札には間違いなく死んだ人物の名字。これもイタズラする側にとってはリサーチ済みだろう。

 と、なるともうあの写真の真偽を確認するしかない。とはいえどうやって確認すればいいのか。

 まさか遺族にオカルトな理由を説明するわけにもいかないよなあ……


 そんな逡巡を猛暑の中ですること数刻、不意に玄関が開き、あの写真とそっくりな女性が現れた。



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