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厠倶楽部  作者: 厠 達三
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自殺者の死に戻り 4


 会社はその後も順調に業績を伸ばしていたが、その成長ぶりに一抹の不安を感じた俺は会社を手放すことにした。

 その成長に呑まれ、成長しか見えなくなって失脚した人間は前の人生で多く目にしたし、それは今の人生でも時たまニュースで見る。それにこの手の業界は食うか食われるか。どれだけ目新しい事業でスタートダッシュかましてもすぐに追随されて結局は資本力ある大手に取り込まれるのがお定まり。

 とはいえもう充分すぎるほどのカネを稼いだんだからこれ以上成長目指すつもりもさらさらない。要は身の丈以上の事業や稼ぎを手にして、その後どうしますかって話。俺としては妻と子供の生活が第一。それを犠牲にして十分儲かってるのにもっと儲けようなんてのはカネ稼ぎに溺れた人間の末路だ。


 それとマスメディア等で芸能人の自殺やそれに伴う誹謗中傷が問題視され始めた。俺の会社でも扱ってた短文投稿サービスも無縁ではないのでそんな事業にはすっぱり見切りをつけた方がいい。どんなヘイトを買うか分からないし、自殺の原因と言われればやはりいい気はしない。

 俺も前の人生で誹謗中傷は結構された。タレントなんだから仕方ないけど、正直それが自殺の引き金になったとは思えない。そもそもああいう業界は人を蹴落としてナンボ、人の恨みと引き換えに知名度を得るようなところがある。それはああいう業界に身を置く人間の共通認識だし、受けた中傷を勲章みたいに自慢する図太い奴さえいた。そいつはこっちの人生でもテレビの向こうで大活躍している。逆に誹謗中傷もされない奴は注目すらされてないってのはアタリマエの話で。

 とにかく芸能人の自殺の原因が誹謗中傷というのは俺から言わせてもらえばナンセンス。業界がイメージ落とすような闇を明かしたくない、ってのが実情だろう。


 それでも芸能人じゃない、一般庶民でさえネットリンチは普通に起きているのでそんなサービスからは手を引いた方がいいって判断した。

 とはいえ会社を手放す一大決心となると俺が勝手にやるわけにもいかず妻に相談。当然猛反対されるかとも思ったが意外とすんなり賛成してくれた。


 実は妻も会社の急成長ぶりに恐怖を抱いてたとのこと。これから子供も大きくなるし、そちらに専念したかったらしい。それに俺と結婚したのも財産目当てじゃなく、平凡な家庭を築ければそれでいいと思ってたので、今の成功は神様のギフト程度に思っていたらしい。それは俺も否定しない。きっとこの人生での成功は、前の人生で自殺にまで追い込まれた俺へのギフトなのだろう。


 こうして会社は大手に売却。贅沢さえしなければ一生無難に生きていけるだけのカネも手に入った。俺はこのやり直し人生を、無難に乗り切れると思った。



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