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厠倶楽部  作者: 厠 達三
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自殺者の死に戻り 6


 やがて無職生活にも飽きがきて地元の小さな物流会社にバイトとして勤めた。まずは資金稼ぎと、物流のノウハウを取得するため。後はちょっとの暇潰しと健康のため。

 しかしさすがは田舎の小さな会社だけあって職員全員頭が悪い。真面目に仕事しようって気は皆無だし、同僚の陰口で盛り上がり、毎日くだらないテレビの話題でさえずってる。低賃金の作業を一生続けると思うとみんなそうなるか。スケールが違うだけでテレビ業界の内幕と大差ない。人間どこに行っても大差ないってことか。


 もちろん中にはまともで尊敬できる人もいる。でもそういう人からいなくなってゆく。正社員なら栄転、非正規なら退職がお定まり。いい人からクソみたいな職場から去ってゆく。まあ俺も2、3年勤めて辞めるつもりではあるけど。

 そんな時、職場で1人の女子職員と仲良くなった。同僚の職場内いじめ、正社員のパワハラに悩んでいるらしく、真面目で大人しい彼女は格好のターゲットなのが傍目にも分かった。テレビ業界でも嫌でも目にした光景だ。

 そんな彼女をそれとなくフォローしたり愚痴や悩みを聞いてるうち距離が縮まった。俺としても不本意ではない。バカとは付き合わない方がいいが常識人とは積極的に関わりを持った方がいい。これ社会の常識。


 いちおう俺にはテレビ業界でシノギを削ってきた経験があるので小さな職場の人間関係なんか取るに足らない。猿山の猿が縄張り争いしてるのと大差ない。正社員から多少嫌がらせを受けることはあるが2、3年で辞めると決めてれば張り合う気も起きない。てゆうかこんな田舎に燻ってる連中なんて、いずれしょうもないのは分かりきってる。


 俺には目的がある。そう遠くない未来、通信技術が爆発的に進化する。いまはまだガラケーなんてもんに頼っているけど。

 その時代に合わせた物流会社を立ち上げるつもりだ。10年先を知ってるってのはチートみたいなもんだ。うまくいくかは分からないけどね。でも構わない。どうせ向こうの人生では10年後に自殺してるんだ。それを思えば多少の失敗は怖くない。

 それに俺は別にセレブを目指してるわけでもない。ただ、できる限りラクして生活したいと思ったらハズレのない起業が一番ラクだと思っただけで、こんな田舎で成功者になりたいわけでもない。起業に失敗すればまた非正規バイトで食い繋げばいいだけだ。


 そんな日々を送っているうち、女子職員との仲はますます進展。俺は決して下心などないつもりなんだけど、彼女の方から積極的にアプローチしてくる。俺もまんざらでもないけどね。

 たまに彼女がテレビの話題を振ってくる。しかし俺はそんなもん興味ないので彼女がいまハマってるバラエティ番組の内幕、タレントの裏事情を教えてやると彼女は素直に驚いた。なんでそんなこと知ってるんですかと聞かれれば週刊誌に普通に書いてるよ、と適当にごまかす。


 こんなつまんないやつ、いずれ呆れられてソッポを向かれるかな、と思ったが意外や、彼女はますます俺に好意を抱いたようだった。



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