九話 変化
よろしくお願いします!!
あれから一ヶ月がたった。
俺は完全に仕事をやめ、ダンジョン探索に専念した。
今回の事でわかったことがいくつかある。
一つ。守護者状態は長い時間保つことができないこと。おそらくもって数分。
一つ。俺個人としてバンバン使っていい代物ではないということ。
一つ。ダンジョンから出るモンスター、もしくはダンジョンが俺の、地球の敵であること。
これらの事がわかった俺は、まずダンジョンを潰していくことが大切だと考えた。
ちなみに未だに横浜ダンジョンは存在している。
おそらく何か消滅させるために必要なことがあるのだろう。
ただ、そこまで行くのに守護者状態で行くことはできない。目立つし時間制限あるし。
連続でどれだけ変われるかもわからない。
仮に最深層についたとき、守護者の力が使えなければなんの意味もない。
であれば俺は自力で、ステータスの力でダンジョンを攻略して行くしかないのだ。
「はぁ、まだまだ先は長いなぁ。」
俺はステータスを見て嘆く。
鹿取 隆太 (26)レベル5
攻撃力 156
防御力 123
瞬発力 176
魔攻力 192
魔防力 98
(スキル)解析(大)格闘術 棒術 槍術 剣術
(称号) なし
(固有力)精神侵食に対する抵抗
星の守護力
このステータスでソロでやっていくに当たって、到達階層は未だに32。
トップの人たちは既に54まで行っているらしいし、その彼らでさえあのドラゴンを倒せなかった。
すなわち俺の実力では最深層にはまだまだ行けないし、力も足りないということだ。
今現在いるのは横浜ダンジョンセーフティ階層、20階層。
ここには迷宮省管轄のホテルがあるし、他の道具なりなんなりも売っている。
多くの人がここを起点として深層に潜っていくのだ。
周りの人がどんどん深層に出ていくのを横目で見つつ、俺は自分の攻略のための道具を背負いそれに続いた。
21層。
ここはハードウルフと呼ばれるモンスターが生息する階層。
奴らは固い毛を鎧とし、攻撃を受けるのもお構いなしに突っ込んでくる。
こいつらは自身の毛に絶対の自信を持っているのか、バカみたいに直進しかしない。
なんだかその光景が哀れにみえるようになるくらいには強くなった。
最初の頃はただ突っ込んでくるのが怖くて怖くて。
21層の内装は少し狭くなっている。1層などとは異なり、大規模な戦闘はできない。
その代わり入り組んでいて、モンスターがいつどこに出てくるかわからないようになっている。
そのために俺は静かに移動する。何せ俺の持ち物はとてつもなく多い。
先のスキル構成を見てもらえばわかるだろうが、基本的に遠距離攻撃の手段は皆無。
魔法系統の攻撃はないのにも関わらず、ステータスだけは伸びている。なんとも皮肉だ。
ただ、この一ヶ月なにもしていなかったわけではない。
スキル欄にあるように、格闘系のスキルをいくつか獲得した。というのも、初め戦う術がなかったのだ。
そのためになんとかスライムやらゴブリンやらを狩ってスクロール集めを頑張ったのだが、結局これくらいしか集まらなかった。
魔法系のスキルはやはり出にくいらしく、全くでなかった。
ただ買えばいいのだが、俺は解析のスクロールを買うために魔石による資金はほとんど貯めている。
普通の人たちはパーティを組み、それぞれの役割で戦っていくため、剣術をとれば剣術をという形で成長していくが、俺は違う。
俺のステータスは人に明かすことはできないし、いざとなったときにその仲間を巻き込むことはできない。
そのため俺はソロで活動しなくてはならない。
そして、例えば自分がへまをしたとき助けてくれる人がいないという状況になれば、俺は死しか待っていない。
よって俺の戦いかたは他の人とは変わってしまった。
「前にハードウルフが三匹か。よしいけるな。」
俺の今の装備は全身軽装だ。だが内側には鎖かたびらを装備している。いざというとき逃げられるくらいの軽装でないとやっていけない。
左腕には直径五十センチほどの丸盾。持つ形ではなく、腕にくくりつけてあるタイプだ。
左腰に二本、右腰に一本剣を鞘にいれたまま装備し、ベルトの脇に中に投げナイフが五本入ったケースをつけている。
背中にはすぐに抜けるようになっている短槍が二本クロスするような形で背負い、その上からポーションや食べ物、飲み物や予備の武器が入ったリュックサックを背負っている。
ハードウルフはまだこちらの存在には気づいていない。
気づいてないうちに不意打ちで確実に一匹は殺りたい。
俺は背中から一本短槍を抜き、一番手前のハードウルフに照準を合わせた。
「ふぅ。」
少し呼吸をはいて緊張を和らげる。
「はっ!!」
俺が投げた短槍は見事にハードウルフの脇腹をとらえ、そのまま地面に突き刺さる。
これで一匹は時間の問題となる。
しかし、二匹のハードウルフがこちらの存在に気づく。
二匹は怒りを露にした顔をしてこちらに向かってくる。尖った歯と歯の間からヨダレを飛び散らかせながら。
「すまんな!!」
不意打ちをすることに少なからず罪悪感がある。
ただ、俺は強くならないといけない。
右ポケットから投げナイフを一本取り出し、右のハードウルフの目をめがけて投げる。
案の定避けずに突っ込んできているため、右目に刺さりその場で停止。
その間にも左のハードウルフが突っ込んでくる。
これは武器で対応しきれないため盾で応じるしかない。
「うぉぉぉぉおお!!」
ハードウルフの突進に、こちらも盾をもって立ち向かう。
衝突すると、どちらも反動で一メートルほど後退。
だが、ハードウルフはすぐに突進を再開する。
俺は後退の一瞬の隙に左腰から右手で剣を抜き正面に付き出した。
本来、頭の働くモンスターであればここで突っ込むことをやめるがこいつはそうでない。
わかっているからこその戦術だ。
剣はハードウルフの脳天を突き刺し、塵に変わった。
それと同時に最初の槍に刺されたハードウルフも塵に変わり、目をにナイフの刺さったハードウルフがまだ悶えている。
この時間がホントにきつい。
おそらく、こういうのをダンジョンによる感染で打ち消しているんだろう。
なんとも思わずに倒すことができる。
「本当胸くそ悪いよな。」
俺は右手に持つ剣でトドメをさした。
俺は戦いに使った槍や投げナイフを回収しながら、ドロップした魔石を集めていた。
「おっ!スクロールか!」
久しぶりにスクロールが出た。ただ、俺はとにかく不運が続いている。
普通ならもう皆魔法を使えているというのに、俺だけ全然でないし!!
「昔からガチャとか確率機とか全然運がないんだよな~」
そう、不運は今に始まったことじゃない。なんなら俺の力も不運なのかもしれないな。
「とにかく使ってみるか。」
俺は解析を持っているから調べればいいのだが、ここ最近は調べない方がいいの出る説を自分の中で提唱していて、ずっとそうしている。
まぁ、ガチャとか引くときに全く関係ないけどなんかルーティンしたり、無心のときにいいのが出たりするからそれを再現しているだけだ。
「よし。これでいいな。さてさて、今回はいいのででくれよ!!!」
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