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七話 雷帝の危機

ダンジョンから出て、解析のスクロールを購入するためにショップへ向かう。無事購入が終わるも、突如起きた大地震が横浜を襲った。だが、それは地震ではなく、世界初のモンスターパレード。反乱であった。

  雷帝こと、日本ランキング二位の東 玲央は、体に稲妻を纏い大軍を切り裂いて不規則に動き回る。


  彼の通ったあとは塵芥と化したモンスターの残骸が、ホコリのように舞う。


  どのモンスターよりも速く、そして力強く。


  彼の働きは何百ものモンスターの大軍を塞き止めた。いや、彼の力だけではない。先の女性の力もある。


  だが、雷帝がほとんどを担っていると言ってもいいほどの成果をあげていた。


  電気を発する腕で切り裂き、蹴りで吹き飛ばす。彼の通る後には稲妻が走り、見るものさえ魅了する。



  俺はただどこからも見つからない路地で彼らの勇姿を見届けていた。


  逃げていた人たちは立ち止まり、比較的安全なところから彼らを見守り、声援を送る。




  「ガンバレェぇ!!雷帝!!」


  「頼むぞ!!!」


  「いけぇぇぇえええ!!」



  雷帝の一挙手一投足は、多くの人を魅了し応援する心を掻き立てる。


  「あれが、英雄。」


 

  俺は小さな頃に見た童話を思い出した。


  誰もが期待し、応援する。これが人類の希望だと誰もが感じる存在。



  今この場にいるもの全てが、彼らに期待し、憧れ、希望を持っていた。



 




  ドォォォォォォォオオオオオオオオ!!!!!




 


  だが、





  その希望は、一瞬で砕かれる。










  視界全部が白く染まり、失明したかのような感覚に襲われた。


  だがそれは杞憂だったようで、すぐに視界が回復。周りを見渡すことができた。



  だが、そこで目に入れたものは、最も信じたくなかった光景だった。






  ゴァァァァァォォォォォオオオオ!!!




  ドラゴンが遠吠えをするように上空に熱線?光線?を放っているところだった。


  そしてやつの足元は抉れ、マグマのように道が溶け出していた。


  そこには本来、奴の手下と思われるモンスターが闊歩していた場所だ。だが、奴はそれを自分の咆哮で消し去ったのだ。



  いや、何かをわすれ…!?



  「雷帝は!?」



  俺はすぐに辺りを見回した。


  彼は今自分がいる路地の反対側の建物の屋上に避難していた。


  先ほどの女性をお姫様だっこをした状態で。


  そして彼はその場に彼女を下ろし、ドラゴンを睨み付ける。




  先の咆哮に、百メートルほど離れて戦いを見守っていた人たちも、そこすら安全ではないのではと逃げるのをまた始めた。


  辺りの空気が一変した。


  先ほどまでこちら側、人間側が圧倒的有利と思われていた状況から、ドラゴンの咆哮により一瞬で形勢が逆転した。



 

  正直戦いの現場のほとんど真横、二十メートルほどしか離れていない場所にいる俺も危険だ。


  だが、安易に動けば彼らの戦いの邪魔にすらなりうるし、下手に動けば奴に殺される。


 

  熱線により熱くなった空気を静かに吸い込み、深呼吸する。



  「彼は、勝てるんだろうか?」



  俺はふと思ってしまった。


  この最悪の事態の、最悪の結末を。



  彼で勝てなければ、すぐにこの日本は壊滅するだろう。


  自衛隊や軍が動いたところで、奴はおそらく厳しいだろう。


  今は魔法が使える時代。世界がそれにより一変し、それまであった軍事力は、ほとんどあってないようなものとなった。



  ある程度の抑止力にはなるのだが、かつて世界の均衡を保っていた核ミサイルの所持などは、他国を牽制する力を持たなくなった。


  ミサイルすら止めることができる魔法を、人類が手に入れてしまったからだ。



  そしてこの状況。日本が誇るランキング二位の雷帝が勝てないとなると、ランキング一位しかいないが、おそらく厳しいだろう。


  であるからして、今目の前で起こっている戦いは、最初にして最後の日本の防衛戦争だ。




 





  雷帝はドラゴンを三秒ほど睨み付けた後、稲妻を残して消えた。


  「!?!?」


  いや、俺の視界から消えたのだ。



  気づくと彼はドラゴンにの懐に入り、電気を纏う腕で腹を殴る。


  ズゴオォォォォォオオオオオ!!!



  ものすごい衝撃が辺りを包む。


  しかし、ドラゴンは三メートルほど後退しただけで、傷と見えるものはなかった。



  やつの腹にはいっぱいに鎧のような鱗が張り巡らされていて、それがやつへの直接的な攻撃を止めているのだ。




  「くっ!!!!まけるかぁぁぁぁああああああ!」



  雷帝は先ほどまでの雰囲気とはうってかわり、金色のオーラを全身に纏いドラゴンの周りを動き回る。


  ただ動き回っているのではない。じわじわと背後から攻撃を加えたりしている。


  だが攻撃が効いた様子は一切ない。



  「こんなの、どうしろってんだっ。」


 

  俺は言わざるを得なかった。


  こんなの人には重すぎる試練だ。神様がいるならこれは試練の作成ミスだろう!!



  今もなお戦い続けている雷帝はをぼんやりと見つめながら俺は自分の無力と、そしてこの状況をうらんだ。



  俺にはどうすることもできない。



  ここでただ隠れて見ていることしか。



  雷帝は体力がどんどん失われて、今にもドラゴンの鍵爪に切り裂かれそうだ。



  守ってもらったのに。



  何一つ。




  そうだ。もとはと言えばあの日から。



  あの訳のわからない声のせいでこんなところに来させられて。



  お前が地球だって言うならっ!



  俺が地球の守護者だというのなら!!!



 





  俺は自分の胸を右手の拳で叩く。




  「俺に力を寄越せ!!!守る力を!!」




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