四話 精神への影響
前回のあらすじ
初めてダンジョンに入り、ステータスと言うものを確認する。すると、地球の言っていることはあらかた間違ってなかったことを知る。
「私、真木 双葉といいます。お名前を聞いても?」
恐る恐るといった様子で聞いてくる。失礼のないようにすぐに返す。これから隠してずっとやっていくわけではないため、ここで戸惑う必要はなかった。
「自分は鹿取 隆太です。自分実は今日ダンジョンに入りまして、右も左もわからないので今日はよろしくお願いします。」
ただ名前を返すだけというのは、いささか感じの悪い返答だと思い、話題を提起する。
「そうなんですね~。私は以前一度だけ友人と入ったことがあるのですが、そこでいきなり探索というので怖じ気づいてしまって。私は格闘技やらを習ってからにしようということで、今日は一人なんです。友人は既に進んでいるみたいです。」
驚いた。そこまで用意周到にやろうとしている人もいるのか。まぁ、自分の場合はいきなりすぎるが。だけど、友人とということは学生か?
「失礼ですが、学生ですか?大学生とか。」
すると彼女は、まだ言ってなかった、という様子で答える。
「そうです。大学二年なんですけど、一浪してるので21です。社会人の方ですよね?私よりも雰囲気が大人びているので。」
「はい。26です。一応仕事もしていますが、副業?みたいな感じでやろうと思ってたんですけど。なかなか大変そうですね。」
とっさに副業何て言ったが、正直考えていなかった。これから仕事もあるのにダンジョンの攻略なんて出きるのだろうか。俺がやらなくてもいいならやらないが、そうとも言える状況ではない。
「そうなんですね。確かに副業でダンジョン攻略は聞いたことありませんね。ダンジョンある程度潜れれば稼げる仕事ですし。まだまだ冒険者は人口も少ないのでダンジョン資源の価格も高いですからね。」
そう。十分稼げてしまうというのがまた悩みどころだよな。稼げないならしょうがないと言いながら、副業にできるけど。
正直今の仕事をもう少し頑張りたいという気持ちもないわけではないのだ。
それに、これからダンジョンを消そう?というかダンジョンの存在を否定しようとしている俺が、ダンジョンで生計を立てるというのも気が進まない。
それからというもの、いろんなことを教わった。三階層に出向いてモンスターを一人一体狩った。狩ると言っても小さなネズミのようなモンスターで、ほとんど害のないモンスターだという。
俺は正直気が進まなかった。害のないモンスターであるからこそ、倒す必要があるのか?なんてことが頭の中に浮かんだ。
そもそもモンスターは生きているのかいないのか。
倒すと魔石と呼ばれる、今や地球経済のエネルギー源とも言うべきものを落とし、肉などは消えてなくなる。それだけでなく、魔法を覚えることが出きるスクロールと呼ばれる巻物や、ポーションと呼ばれる薬など。
どうして奴らの体からそれが生まれるのかと疑問にさえ思った。まぁ、それらは当たり前だ、と言ったように教官?先生?は話していたし、ずっと一緒にいた双葉さんもそのようだった。
害のないモンスター、今回で言うネズミは、リトルラットと呼ばれるものらしく、魔石は本当に小さなものしか落とさない。だが、しっかりと俺には生きているように感じたし、罪悪感も感じた。
その時、二葉さんを含めた周りの人達全員。誰一人として躊躇をしなかった。なんならステータスが上がったことに喜び歓喜し、目の前で死んでいったモンスターには一切目もくれなかった。
この時俺は気づいた。これが精神の侵食。ダンジョンによる精神操作。それが関わっているんだろうって。
でもだとすれば、ダンジョンは人類にダンジョンを攻略、または、強くなって欲しいとさえ思っているように感じた。
であるならば、ダンジョンの目的はなんだろう。そして俺のやるべき事はなんだろう。精神侵食されてないにしても、ただ強くなったとしても、それは他の人と変わらないだろう。
だけど、いくら考えたところで、なんの正解にもたどり着くことはできなかった。
「今日はありがとうございました。」
レクチャーが終わり、双葉さんが俺に話しかけてきた。後ろを見ると、彼女の友人らしき女性が二人立っていた。きっと待っていたんだろう。そしてこれから彼女たちはダンジョン攻略に向かうんだろう。
「こちらこそ。後ろの二人は友達ですかね?応援してます。頑張ってください。」
俺にはこれしか言えない。ダンジョン攻略をやめてとも言えない。ただ安全を、無事を祈るのみ。
「はい!鹿取さんも頑張ってくださいね。またお会いしたら、ご飯でも。」
そう言って、三人は自分から離れていった。
今の俺のステータスはこれだ。
鹿取 隆太 (26)レベル1
攻撃力 31
防御力 15
瞬発力 24
魔攻力 37
魔防力 26
(スキル)未所持
(称号) なし
(固有力)精神侵食に対する抵抗
星の守護力
まぁ、ほとんど変わっていないわけだが、それでもあのネズミ一体倒しただけでステータスが上がったのだ。
これは精神の侵食を受けていない俺でも、強くなろうとやる気が出るように感じた。まぁ、ダンジョンの思うつぼなのだろうが。
それから俺はダンジョン近くのホテルに帰った。明日もダンジョンにいくためだ。
ホテルの自室でテレビをつけると、ちょうどダンジョンに関する番組がやっていた。
その名も迷宮インフォメーション。なんともそのままの名前だが、まぁわかりやすくて俺は好きだ。
そこにはありがちな女性アナウンサーと男の中年芸人が司会をして、ダンジョン攻略者やらマニアやらを呼んで、対談をするというものだ。
今日のゲストはなんでも有名な人らしく、冒険者ランキングなるものがネットにはあるようで、それのランキング一位のようだ。何でランキングを決めているのか知らんけど。
まぁ、そんなんだから見てみると、すごいイケメンが自分語りをしているだけだった。こんなモンスターを倒しただの、こんな仲間とこんなすごいことをしただの。
俺はつまんなかったが、世間様にはうけたようだ。これも侵食のせいだろうか。俺が冷めているだけか。
ランキング一位のステータスはわかんないが、レベルは12らしい。なんでもゲームのようにバンバンレベルが上がるわけではないようだ。
世界的に見てもランキング上位は14が最高らしく、別に日本がレベルが低いわけではない。
まぁそんなこんなで、テレビの内容を半分くらい聞いてボーッとしながら、今日の事も思い出して、今後について考えた。
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