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三十話 パレード

前回のあらすじ

日本のランカー達が集まり会議

  ダンジョンから出てきたのは、前回の横浜ダンジョンを上回る数のモンスター。

  それらは、前回のように統率をとるものではなく各種族が入り乱れている。

 

 

  先陣を切ったのは雷帝とイージス。


  東が大群の中に突っ込むと、瞬く間にモンスターの数を減らしていく。

  だが、ダンジョンから出てくるモンスターの量はとどまるところを知らない。


  「行きます!!」


  立浪がスキルを発動する。


  大群の前方に巨大な透明の壁、いや膜といった方が正確だろう。

  それらが最前列のモンスターを総じて止める。


  そこに次々と探索者が突っ込んでいく。


  立浪の持つスキルは、ただのタンクとは異なる。

  自身と反対側からは通さないという特殊な壁を用いて戦うのだ。

  そのために、こちらからの攻撃は通るが相手は無効化するという力を持つ。

  それがタンクが日本のランキング上位に入る所以である。



  立浪により、相手の進路を塞いだものの、ダンジョンから出てくるモンスターは止まらない。どんどん密度の濃くなる戦場。




  「行くぞ!!爆撃機!」


  「頭には気を付けてくださいね!!」


  それを他の探索者達よりも圧倒的に消しているのが、命と三橋。


  攻撃にのみ特化した二人の攻撃は、東と同等かそれ以上にモンスターの数を減らしていく。


  命による攻撃は力そのもの。

  筋力増加系のスキルはもとより、彼女自身の身体能力も相まって近接戦闘の鬼と化す。


  元来命と立浪は二人でひとつ。

  イージスが止めた大量のモンスターを破壊するこの構図は、いつもの二人でやっているものと同じだ。


 

  一方三橋は上空から火、氷、土など、ダンジョンに入っていれば誰もが手に入れることが出来るスキルを落としまくる。

  本来正面から受けても、防御しながらであれば致命傷にはならないこの攻撃。

  だが現在、モンスターの前には目を引き付けられてしまうほどの探索者達がいる。

  そのために死角から頭部に向けられた攻撃は、彼らに致命傷を与える。



  「2時の方向イージスのスキルが破れるまで十五秒!!第一部隊!!」


  「はい!!」


 

  戦場の後方から指示を飛ばす林。

  彼の命令によりNewsで編成された第一部隊がそこに向かう。

  するとちょうど揃った頃に、その部分の透明の壁が破られる。


  そこが破れた事でモンスターが大量に押し寄せるが、そこを迎撃しはじめるNews。


 

  次々とモンスターが出るであろう場所を予期し、先に手を打っていく。

  彼本人の戦闘力は申し分なく、爆撃機までなら戦闘力で劣らないほどにはある。

  だが、それでも彼が前線にでないで指示をするのは、それ以上に彼が指示する方が守れる範囲が広がるからだ。


 


  彼らと各クランの戦いのお陰で、モンスターの出る量が減ってきている。


  「そろそろか?」


  「なんだか大したことなかったじゃねぇか!」


  「そうだな。俺たち全員がいなくても大丈夫だったかもな。」

 


  前線で戦うもの達にも余裕が生まれてきた。

  数はもう50を切っている。

  立浪のスキルも発動をやめる。


  「最後は私が刈り取るぜ!!」


  命がさらに一段階ギアをあげたことにより、周りが近づけなくなり、彼女のショーのような形になる。


  皆がそれを観覧するだけの状況になるも、彼女のスピードとパワーは果てしなく、ものすごいスピードで倒していく。


  そこから、モンスターの攻撃は数分も持たなかった。







  「おわったぁぁぁぁああああ!!!」


  命が戦場で大声を上げる。

  それは今回の沖縄ダンジョンパレードを止めきったということを示した。


  上空に飛ぶテレビ局のヘリは、その戦場と戦い抜いた探索者を写し称賛する。

 

  日本には彼らがいる。

  絶対の安心がある。と。


 

 


 

  「雷帝さん。」


  林が東の所までよっていった。

  パレードがおわり周囲は歓喜に溢れているが、彼ら二人は違った。


  「あぁ、なにかがおかしい。前回のドラゴンのような統率をとるものがいないからといって、今回のようになるとは思えない。」


  「はい。確かに。彼らには知性があると考えています。知性といっても、戦闘に関してのみの。であるならばあの状況。なにかがおかしいんです。俺が知らないなにかが、予知を妨げている。」


  「シリウスも知らないなにか、か。それじゃあ日本にはそれを知るものなんて今はいないな。」


  「呆気なすぎる。」


  「……。」


  二人は考える。

  しかし、その思考を止めたのは、林のスキルによる予知でなく、東の経験による思案でもなく。


  新しい戦力たる二人であった。





 


 


 

  「ついた!!」


  「もう終わってますね。」


  俺たちは全力でここまで戻ってくる間も、ラジオで戦況を確認していた。

  今はテレビ局やラジオでも、すべての戦闘内容が放送されている。

 

  到着したが、テントは倒れ、地面は抉れの大惨事ではあった。

  だが、周りを見回しても死傷者は見当たらない。

  さすがに日本トップを集めたからにはある。


  全員が喜びの声をあげ、酒を飲んでいる人さえいた。



  「とりあえず師匠のところに。」


  「はい。」


  急いで向かうと、そこには俺でも知っている有名な彼。


  ランキング一位、シリウス。



  「す、すみません!!遅れました!!」


  俺は緊張して声が上ずる。

  彼は俺よりも年下のはずだが、緊張には勝てなかった。

  なんだかオーラが見えた気がした。


  「遅れました。人はいませんでした。」


  それとは対照的に、しっかりと師匠に報告している倉木さん。

  なんか俺恥ずかしい。


  「っと、そんなことはではなくて!!パレード!どんなでした!?」


  何よりも気になっていたことだ。

  結局ラジオだと、誰々が活躍した。とかそんなことしかやらない。

  パレードが終わったことが分かっても、詳細は分からないのだ。


  「あ、あぁ。そんなに興奮するな。終わったぞ。」


  「だけど、それについて今話していたんです。」


  「何について?」


  「呆気なすぎた。」


  林が神妙な目付きで言う。

  それは良いことではないか、とさえ思うことを、真剣に言うのには訳があるのだろう。


  「師匠もそう思いましたか?」


  「あぁ、統率がとれていなかったんだ。前回のようなドラゴンいないのもあると思うが。」


  「あの!」


  愛唯が突然大きな声を出す。

  基本そんな声は出さない彼女だ。

  俺含め、皆が少し飛ぶ位だった。


  「それって、モンスターは私たちを襲うというより、ただ、押し寄せてきた、という感じですか?」


  「倉木さん…。それって。」


  「あぁ!そうだ!確かに!!奴らは俺たちを襲おうとはしなかった!!なんで気づかなかった!?いつもと同じだとなぜそう思っていた!?」


  彼は自分の頭を抱え叫ぶ。

  彼にもきっと思考という観点から、自分にプライド、自信があったんだろう。

  だが、それが分からなかったのか。


  「でも!なぜいなかった君が分かる!?教えてくれ!!」


  「鹿取さん。良いですよね。」


  「あぁ、一刻も早くしないと、この空気はヤバいかもな。」


  そう言って辺りを見回す。





  喜びで気の抜けた戦場と探索者。



  この状況に奴が。



  災厄が来るかもしれない。




 

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