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二十七話 沖縄上陸と誘われし遺跡

前回のあらすじ

訓練の成果を感じる。

沖縄ダンジョンで異変が発生。

  沖縄ダンジョン。


  日本に三つ存在するダンジョンの一つで、規模はそこまで大きくはない。

  立地は沖縄本島の外れにあり、周囲は畑や草原に囲まれている。当然電車が通っているわけはなく、車がいったり来たり出きるように舗装されているわけはない。

  ただ周りに迷宮省の支部があるだけなのだ。

  そのため今のところ探索があまり進んでいないという現状にある。


  そのお陰で今回は避難も終わっていて、一般市民の安全が守られている。





 

  「本当になにもありませんね。」


  周りを警戒しながら車で走ること二時間。

  なにも無さすぎてついに口に出した。


  「そうだな。だが、今もうすでにダンジョンの周りではランカーが十人程集まって調査の作戦を立てているらしい。俺たちが最後だ。」


  「私たちはダンジョンのなかにいて遅れましたからね。他の方々はすぐに向かったようです。」


  「遅刻か…。」


  「いや、まだなにも起こっていないからな。それに、今のところは俺たちを頭数にいれないようにといってある。要は助っ人的な立場で行くぞ。」


  助っ人か。なんだかヒーローみたいだな。でも間に合わなかったらただの遅刻か。

  責められないといいけど。


 

  「それにしても、ホントに……。って、あれなんですかね。」


  車の窓からサトウキビ畑の先に何か動いたように見えた。

  だが何か視認出来たわけではなくて、影?


 

  言うと師匠はすぐに車を止める。


  「それは本当か?」

 

  「はい。でも、しっかり見えたわけではないんですけど。」


  でも確かに見えた。


  「おかしいですね。それは。」


  「どうして?」


  この辺に何か動物がいたくらいならあり得そうな話だが。

  車を止める必要はあったのだうか。


  「ここは強制避難区域です。ここから車で十分でもう沖縄ダンジョンがありますから。なのにここに人がいるのはおかしいんですよ。」

 

  「そういうことだ。すまないが二人は少し見てきてくれないか?」


  師匠が俺と倉木さんに探しに行くように言う。

  確かに今俺が急いでダンジョンに向かって助っ人になったところでどこまで力になれるかわからないからな。

  それなら逃げ遅れた可能性があるならそこに行った方がいいか。


  「分かりました。でも倉木さんはいいんじゃないですか?俺だけで大丈夫かと。」


  「いや、単独行動は避けた方がいい。特に今何が起こるかわからない現状だからな。俺は今運転してくれている迷宮省の人と先に行く。」


  「はい。私もそうするべきだと思います。」


  そう言うと自分の荷物を車から出す。

  といっても戦闘に使うような道具だけで、着替えなどのスーツケースは置いたままだ。

 

  俺もそれに続いた。

 

  「鹿取さん、どんな風に見えたんですか?」

 

  「えっと、サトウキビ畑の向こうに何かが動いた気がしたんだ。動物かと思ってさ。」


  「なるほど。確かに動物ならいいですけど、畑仕事をしているかもしれませんしね。一応行きましょう。それに、いざとなったら車より速く走れるんですから。」


 


  それからすぐに車は進行方向に去っていった。

  なんだか置いてけぼりにされた感覚だ。周りが草しかないからなおさら寂しいな。


  「行きましょうか。」


  そう言うと、草のなかをずんずんと進んでいく。

  それにしても高い。サトウキビが頭近くまであるから先が見えない。


  「というか畑のなかに入って大丈夫かな。」


  「緊急ですから仕方ありませんよ。」


  「訴えられなきゃいいけど。」


  「これくらいで訴えられますかね。」


  そんな他愛もない話をしながらただひたすらに進む。

  俺が見えたのは畑の奥。畑を抜けないと仕方がない。





  十分たったか。正直時計なんて見る余裕はなかったからわからない。


  「抜けました。」


  倉木さんが言うと同時に目の前の視界が開けた。

  サトウキビの間から正面の光が入ってきた。


 

  ドンッッ


 

  倉木さんが畑を出たとたん止まったために俺は背中にぶつかってしまった。

  そのため未だ畑のなかにいる俺は何が起こっているのかわからない。


  「どうしたの?倉木さん。」


  彼女に問うが返答はない。


  不自然だ。いつもの彼女とは違う気がする。


  「ねぇ、」


  声をかけながらサトウキビをかき分け畑から這い出す。

  そして彼女の横にでる。




  「なんですか、これは。」


  「わ、わからない。」


  俺たちの前に現れたのは大きな穴。いや洞窟か?

  縦に伸びているのではなく、なだらかに下へ下がって行く形になっている。


  そして見ればすぐにわかる。


  これは天然のものではなく、人工物であると。


 

  「もしかしたら沖縄戦の防空壕とかじゃないかな?きっとそうだよ。」


  「た、確かに。私こういうところ苦手なんですけど、行きます、よね?」


  「まぁ人がいるとしたらここかな?周りには人がいそうな場所はないし。正直俺も得意ではないけど。」



  なんだろう。こういう何があるかわからないところって怖いな。

  ダンジョンの方がまだましだ。


  二人してその場に固まってしまった。お互い一歩が踏み出せない。


  「と、とりあえず覗くだけ覗いてみようよ。なんなら俺だけでも行くし。」


  「え、それなら私も行きますよっ。それにここに残されてもなんだか怖いじゃないですか。」



  確かに。この周りは人がいないこともそうだが、草や畑しかないのに、この中からはなんかいそうな気配がある。

  お化け屋敷みたいな感覚か。



  俺たちは恐る恐る入り口の穴まで近づく。

 

  「何にもないですね。やっぱりもう使われていない防空壕ですよ。きっと。動物が棲みかにしてるんじゃないですかね?」


  「確かに。っ!?いや今なんか動いたよ!見えた!?」


  「み、見えてませんよ!でも人じゃないんでしょ!?なら戻りましょう!ほらっ!」


  そういって俺の手を引っ張り畑の方へ戻ろうとする。

  だけど俺は動かない。

 

  なんだか呼ばれている気がするんだ。

  なんというか、あの初めて地球の意思と繋がった時に落ちた穴のような。

  何かがいる気配がする。

  だけどそれは動物ではなく、人でもなく、何かの思いというかそういうものが。


 

  「ごめん。俺は行った方がいいと思うんだ。」


  「っ!?……それはふざけてとかではないんですね?」


  「あぁ。なにもないならそれでいいんだけどね。」


  「分かりました。なら私もついていきます。ただ、ゆっくりですよ!ゆっくり!」


  意を決してはいるが恐怖はおさまらないらしく、ちぐはぐな様子で答える。

 

  「はは、わかった。じゃあ行こう。」



  俺たちはこの穴に足を踏み入れた。

 

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