二十話 変わる覚悟 +???side
前回のあらすじ
次の日倉木さんの病室にいくと、幼なじみの翔と姉の由比さんが。彼らから出る言葉は、鋭く冷たいものだった。
「あの、鹿取さんは本当に?」
あれから一週間がたった。
倉木さんと俺は無事退院することができ、俺はまたダンジョンへ。
倉木さんは名古屋の方で家族と休みをとっていたらしい。
あの日から何にも音沙汰がなかったので、もう聞かれることもないのか?なんならばれてない?とか希望を持ったりしていたが、昨日連絡が来て会って話すことになった。
話すことになった、というよりは強制的にと言う形で。
ちなみに今いるのは名古屋にある喫茶店。
倉木さんの実家の近くらしく、そこまでお呼ばれしたわけだ。
「えっと、まぁ。」
そう聞かれて、今さら違うよ!何て言っても信じてくれるはずはない。
それだったら言えるとこは話して口止めをした方がいい。
「そうなんですね。未だにちょっと信じられないですけど。」
「それは俺もなんだ。」
「どう言うことですか?」
「あの力は俺のものではないんだ。いや、今は俺のものだけど、借り物というか。」
「スキルではない、ということですか?超能力みたいな?」
どうだろうか。超能力といわれればそうかもしれない。
そもそもダンジョンも守護者の力も、五年前まではなにもなかったってことを考えれば、全部超能力だ。
「まぁ、そんなところ。今言えるのは、正体をばらしたくないという一点。そして、俺自身できればこの力を使わずに強くなりたいということくらいだな。」
「正体をばらしたくないのはなぜですか?」
「それは力が大きすぎるからだよ。ランキング二位の雷帝さんでさえ負けたドラゴン相手に瞬殺してしまうほどの力だ。あの時俺は戦いの素人だったのにも関わらず。大きな力には責任が伴うんだ。」
彼女はそれについて分かっているようで深くうなずく。
彼女の強さも一般人であれば動かずとも殺すことが出きるほどの力を持っている。
言うなれば常に刃物を持っていることと同じだ。
きっと雷帝さんに教え込まれているんだろう。
「でも、この力は俺には責任が持てない。だからできれば使いたくないし、世界の誰にも渡したくない。戦争や破壊に使われたくないから。この力はそんなもののためにあるものじゃないんだ。」
「なんのため?」
「守るため。誰かを、守るための。だけど、この間の戦い。すぐに使うことができなかった。そのせいで君を傷つけてしまった。ごめん。」
俺はテーブルにつくくらい頭を下げる。
「それはもういいですよ。治りましたし。それにそれ以上に鹿取さんが傷ついてしまいましたし。」
彼女は、頭を上げてください、と向かいに座る俺に手を伸ばす。
周りからも少し注目を集めてしまっているみたいだったのですぐに頭を上げた。
「あの、自分の力かそうでないかって関係ありますか?」
彼女は俺の目を、目の中の心を見る。
「私はお姉ちゃんの病気を治すためなら、なんだってします。仮にずるいといわれることだってすると思います。私の力の目的はそれだから。それでしかないから。鹿取さんの目的は何ですか?」
俺の目的……。
たまたま守護者の力を押し付けられて、気味悪かったダンジョンに入って。
命あるモンスターを狩って狩って狩って。
俺のしたいことって。
「その力は守るためにあるんでしょ?なにかは分かりません。でも、私だったら手段を選ばないと思います。」
黙って話を聞くことしかできない。
俺の使命は、星の守護者としての使命は。
この星をダンジョンから、謎の存在から守ること。
人を、生き物を、自然を。
そのために命あるモンスターを狩るんだ。強くなって、元の地球に戻すんだ。
「うん。ありがとう。覚悟は……まだだけど、気持ちは定まったと思う。やりたいことも。それで、お願いがあるんだけど、いいかな?」
????side
「畜生が脱走したらしいな。回収は?」
「できませんでした。すみません。」
狭い部屋で二人が向かい合って座る。
片方は怒りに燃え、片方は今にも消えそうな灯火だ。
「食料はまだ予備がある。だが、大失態だぞ!?あれがなければ我々とてここにいることすらできないぞ!」
怒りに我を任せて、部下を萎縮させる。
「はいっ!ですが、またあいつが、ここの守護者が邪魔に入ったんです!!」
「だからどうした!?そんなことは関係ないだろう!罰を受けるのはこの俺だぞ!!」
そう言い、部下を吹き飛ばす。
それでも彼は懇願しながら口を開いた。
「ですがっ!あいつはまだ、本来の力を出しきれていないのか、食料循環生物に手こずっていました!!早めに叩けば押しきれるはずです!!」
その報告に少しだけ機嫌を良くする。
そう言って、本部への連絡をする準備を始めながら、部下を外に出した。
「はい。はい。すみません。ですが、それを早めれば、はい。了解しました。200日、はい。それまでに準備は終わらせます。では失礼します。」
話し終わると彼は人ならざるものの笑みを携え、部屋を後にするのだった。
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